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【重要事項説明】文化財保護法(重要文化財・史跡名勝天然記念物、伝統的建造物群保存地区内、周知の埋蔵文化財包蔵地域内)|制度の概要と課題!?重要事項との関係、対象の地域とその理由!しっかり理解してがっちり土地利用。宅建・土地取引・投資のノウハウ!!

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文化財保護法は、重要文化財をはじめ遺跡の保存や維持管理を目的としており、遺跡の発見や保存を妨げる行為を制限している法律です。
売買の対象となる不動産が、重要文化財・史跡名勝天然記念物など文化財保護法の対象となる場合、伝統的建造物群保存地区内、周知の埋蔵文化財包蔵地域内に該当する場合には、重要事項説明が必要です。


なんとなくわかっているようで、詳しく説明しようとすると理解できていないものです。
これらを詳細に理解するには、経験と知識が必要です。
しかしながら、どのような規定があるのか概要を理解しておけば、そのような物件に巡り合ったときに気づきが生まれます。
これが重要なのです。
内容を理解しておかないと、買主からの「ここで家が建てれるの!用途や大きさの建築はできるの?」との質問に正確に答えることができません。
この記事では、不動産取引における重要事項説明のうち「文化財保護法」について解説しています。
不動産取引や建築設計において都市計画や建築基準法などの制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。
建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。
それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。

 

 


1 その他法令に基づく重要事項説明事項とは?


法令としては、宅建業法第35条第1項第2号の部分となります。

宅建業法第35条(重要事項の説明等)第1項第二号(抜粋)]
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。

二 都市計画法建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要

 

次に政令ですが、宅建業法施行令第3条となります。次の項では、この第3条について詳しく説明します。

都市計画法建築基準法制限一覧は、こちらの記事で解説しています。

ossan358.hatenablog.com

 

■ 都市計画法建築基準法以外のその他の法令に基づく制限

施行令第3条ですが、第1項が「宅地又は建物の貸借の契約以外の契約(売買)」について、第2項が「宅地の貸借の契約」について、第3項が「建物の貸借の契約」について規定されています。
大半が対象外となりますが、この内容を覚えておくことで、少しは重要事項説明漏れを防ぐことができると考えられます。
それでは、この記事ではその他の法令に基づく制限のうち文化財保護法について解説していきます。

 

 

 

2 文化財保護法とは

文化財保護法は、1949年1月26日に法隆寺金堂壁画が焼失したことを契機に制定されました。重要文化財をはじめ遺跡の保存や維持管理を目的としており、遺跡の発見や保存を妨げる行為を制限している法律です。

文化財保護法による規制は、大きく次の3つにわかれます。

    重要文化財・史跡・名勝・天然記念物の指定による規制
    伝統的建造物群保存地区の指定による規制
    周知の埋蔵文化財包蔵地の指定による規制

特に、不動産の調査では「周知の埋蔵文化財包蔵地」の調査が非常に重要です。

 

 


3 周知の埋蔵文化財包蔵地とは?

『周知の埋蔵文化財包蔵地』は、宅地建物取引業法第35条に規定されていません。
しかし、仮に建築に伴い基礎工事の際に埋蔵文化財が出土した場合には、工事を止めて教育委員会の判断を仰ぐ必要性がでて、竣工時期が遅れ、買主側が不利益を被る可能性があるため、一般的に説明を行っています。
『周知の埋蔵文化財包蔵地』は重要事項説明の対象として、伝えることとなっています。

文化財保護法第93条(土木工事等のための発掘に関する届出及び指示)】
土木工事その他埋蔵文化財の調査以外の目的で、貝づか、古墳その他埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地(以下「周知の埋蔵文化財包蔵地」という。)を発掘しようとする場合には、前条第一項の規定を準用する。この場合において、同項中「30日前」とあるのは、「60日前」と読み替えるものとする。

 

※法第92条第1項
土地に埋蔵されている文化財(以下「埋蔵文化財」という。)について、その調査のため土地を発掘しようとする者は、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもつて、発掘に着手しようとする日の30日前(読み替えて60日前)までに文化庁長官に届け出なければならない。

 

文化財保護法第93条に規定されており、『貝づか、古墳その他埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地』となっています。実務上は、明らかに遺跡である土地や自治体が窓口で閲覧に供している『埋蔵文化財分布図』により確認した上で、該当する場合には、指示に従うこととなります。

 

 

 

4 文化財保護法における制限行為の概要

■法第43条第1項
重要文化財に関しその現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならないとする規定。

 

■法第45条第1項
文化庁長官は、重要文化財の保存のため必要があると認めるときは、地域を定めて一定の行為を制限し、若しくは禁止し、又は必要な施設をすることを命ずることができるとする規定

 

■法第46条第1項
重要文化財を有償で譲り渡そうとする者は、譲渡の相手方、予定対価の額(予定対価が金銭以外のものであるときは、これを時価を基準として金銭に見積った額。)その他文部科学省令で定める事項を記載した書面をもつて、まず文化庁長官に国に対する売渡しの申出をしなければならないとする規定。

 

■法第46条第5項
法第46条第1項の期間(その期間内に文化庁長官が当該重要文化財を買い取らない旨の通知をしたときは、その時までの期間)内は、当該重要文化財を譲り渡してはならないとする規定。

 

■法第125条第1項
跡名勝天然記念物に関しその現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならないとする規定。

 

■法第128条第1項
文化庁長官は、史跡名勝天然記念物の保存のため必要があると認めるときは、地域を定めて一定の行為を制限し、若しくは禁止し、又は必要な施設をすることを命ずることができるとする規定。

 

■法第143条第1項
市町村は、都市計画法第5条又は第5条の2の規定により指定された都市計画区域又は準都市計画区域内においては、都市計画に伝統的建造物群保存地区を定めることができるとするもの。

 

■法第182条第2項
地方公共団体は、条例の定めるところにより、重要文化財重要無形文化財、重要有形民俗文化財重要無形民俗文化財及び史跡名勝天然記念物以外の文化財で当該地方公共団体の区域内に存するもののうち重要なものを指定して、その保存及び活用のため必要な措置を講ずることができるとするもの。

 

 

 

5 物件調査のポイント

埋蔵文化財包蔵地というのは、普通の市街地内であることが一般的なため、調査しなければ見落としてしまうことが多く、自治体の窓口にて必ず調査が必要です。
また、土地の売買に関わらず、将来的な再建築を踏まえて、全ての種別の不動産(中古戸建や中古マンションなど)の売買においても調査を必ず行い重要事項説明書に記載する必要があります。

埋蔵文化財包蔵地内なら「建築時の届出の有無と指導内容(基礎工事時の立会い・事前に試掘を行う等)」を確認します。埋蔵文化財包蔵地内において土木工事等の建築工事を行う場合工事に着手する60日前までに文化庁長官への届出が必要になります。
埋蔵文化財包蔵地内に該当している場合、もし遺跡が出てきた場合、試掘・発掘調査・学術調査の費用がかかるかどうか役所に確認します。加えて、他の建築制限がないかも確認しておきます。
問題は、調査に時間がかかることだけでなく費用面です。埋蔵文化財が見つかり、学術調査を行う場合「自己居住用の建物なら費用負担無し」や「建物用途に関係なく建築事業主負担」など各自治体によって対応が違うため、個別に確認が必要になります。
また、自己負担の場合には、行政(国・都道府県・市町村)からの補助金制度の有無も確認した方が良いでしょう。
実際のところ、試掘までは自治体負担、発掘は購入者負担とする自治体が大半です。この発掘費用に数千万円を要することも珍しくありませんが、自己居住用の建物の場合には自治体や国庫の補助が受けられるケースもあります。また発掘された遺跡などが重要なものだった場合、保存するために土地利用が制限され、発掘調査が長期におよぶこともあります。

 

 


■まとめ

いかがでしたか?
重要事項説明の一つである『文化財保護法』についての説明でした。
文化財保護法(周知の埋蔵文化財包蔵地)に関する重要事項説明の義務の可否について説明しました。宅地建物取引業法第35条には規定されておりませんが、基本的に重要事項説明において説明することとなっています。

買主さんにとって、仮に埋蔵文化財の発掘調査となれば工事の着手は遅れますし、土地を使って得ようとした効用を計画どおりとならないことから、大きなリスクとなります。そのリスクを事前に回避するためにも、市町村の埋蔵文化財分布図などを参考に埋蔵文化財の可能性があるかどうか、契約前に説明するようにしたいところです。
調査した結果、売買の対象となる不動産が、重要文化財・史跡名勝天然記念物など文化財保護法の対象となる場合、伝統的建造物群保存地区内、周知の埋蔵文化財包蔵地域内に該当する場合には、不動産の重要事項説明書の「文化財保護法」の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。

このような物件に関しては、物件の仲介業者は購入希望者に対して、その物件がどの「用途地域」に属するかとあわせて、制限についても必ず伝える義務があります。
少しでも疑問がある場合は、事前に担当の部署に確認し法チェックをしておきましょう。
不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。