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不動産を売買する上で、その物件の情報を早い段階で調査しておく必要があります。
買主が物件を探している段階で、「この不動産にはどのような建物が建てられるのか?」と考えるからです。
そのような日々の業務の中で使用される専門用語など理解するのは重要です。なんとなくの独自の理解で納得していませんか?
不動産売買における「筆界特定制度」について理解しておくことは重要です。ここでは、その内容と考え方についてわかりやすく記事にしています。
不動産の売買においてその内容を説明する際には正しい根拠を正確に売主・買主に伝える必要があります。
建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。
それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。
1 筆界特定制度とは
筆界特定制度とは、お互いの境界の主張が寄りそわないケースにおいて、迅速に解決するために設けられた制度です。
従来、境界の紛争に対する解決手段は裁判(境界確定訴訟)しかありませんでした。
しかし、裁判を行うと費用だけでなく、結論が出るまでに長い時間がかかっていました。そこで、2006(平成18)年に不動産登記法が改正されて、筆界特定制度ができました。
「筆界特定制度」とは、法務局の筆界特定登記官が、外部の専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、現地における土地の筆界(≒境界)の位置を特定する制度です。
筆界特定制度は平均6ヵ月〜1年程度で、一応の結論が出るように努力するとなており、裁判よりも早く結論が出る制度です。
2 筆界とは
筆界の筆とは、登記簿において1つの土地を指す単位で、特に土地の登記簿謄本や公図を見るときに、筆で数えます。
1筆ごとに登記が行われ、地番がつけられています。
1筆の土地を分割して、複数の土地にすることを分筆といい、複数の土地を1筆の土地にすることを合筆といいます。
筆界とは、土地が登記された際に、登記上その土地の範囲を区分するものとして定められた線です。
ある土地が登記された際に、その土地の範囲を区画するものとして定められた線(筆界)を、現地において特定するのが筆界特定制度です。
新たに筆界を決めるものではなく、調査の上、登記された際に定められた筆界を筆界特定登記官が明らかにすることです。
そのため筆界特定制度は、土地の所有権がどこまであるのかを特定することを目的とするものではないため、筆界特定の結果に納得できないときは、裁判(境界確定訴訟)で争うことも可能です。
しかしながら、筆界特定は筆界調査委員の専門的な調査結果に基づくものであるので、その信頼性が高く、筆界特定で認定された筆界が、その後の境界確定訴訟で変更される可能性は少ないと考えます。
3 筆界と境界の違い
一般的にいう「境界」は、ほぼ筆界と同じ意味を指します。
しかし、境界は所有権の範囲を指し示す線という意味で用いられることが一般的で、その場合は筆界と異なります。
お互いにそれぞれ主張する境界が食い違うことがあっても、筆界は登記上定められた範囲なので、理論的には確定後は動くことはありません。
筆界は所有権の範囲(境界)と一致することが多いとはいえ、一致しないこともあるということです。
4 どのように筆界を特定するの?
土地家屋調査士や弁護士、司法書士など民間の専門家からなる筆界調査委員が、補助する法務局職員とともに、土地の現地調査や測量などさまざまな調査を行った上、筆界に関する意見を筆界特定登記官に提出し、筆界特定登記官がその意見を踏まえて筆界を特定します。
5 誰が申請するの?
土地の所有者として登記されている人やその相続人などが、対象となる土地の所在地を管轄する法務局または地方法務局の筆界特定登記官に対して、筆界特定の申請をします。申請書に必要な事項を記載し、添付書類とともに提出します。
共有名義の場合、共有者の一人から単独で申請することもできます。
5-1 手続きの代理ができる者
筆界特定の手続きは、現地の調査及び測量に関する専門性が要求されるとともに、一般の法律事件についての知識が要求されることから、次の資格を有する者が、業(仕事)として筆界特定の手続きの申請代理業務をすることができます。
司法書士の場合は、簡易訴訟代理等関係業務を行うことにつき認定を受けた司法書士で、対象土地の価格の合計額の2分の1に100分の5を乗じた額が140万円を超えない場合の案件に限られています。
5-2 手数料
申請手数料は、土地の価格によって決まります。この土地の価格というのは固定資産課税台帳に登録された価格のことを指しています。
詳しくはコチラを参考にしてください。↓↓
手数料以外にも、現地における筆界の調査で測量が必要となることがあり、そのときは測量費用を負担する必要が生じます。
また、手続きの代理として、土地家屋調査士・弁護士・司法書士に依頼した場合、その費用も必要となります。
6 相手が納得しない場合
筆界特定を申請した場合、相手方に法務局から「筆界特定の申請がされた旨」の通知が届きます。筆界特定の調査は、申請人等に立ち会う機会を与えなければならないものとされています(不動産登記法第136条第1項)。
対象土地の測量や現地調査が筆界特定のために最も重要な要素であるため、申請人等に対する手続保障を図ったもので、申請人等が立ち会った場合には、正確な測量を行う前提として、特定すべき筆界を構成する可能性のある点の位置(主張の位置)を確認します。
また、お互いに紛争に至った経緯や対象土地の過去から現在に至るまでの使用状況、主張する筆界の理由及びその他筆界特定をするに当たっての参考となるべき情報を聴取します。
仮に相手方が立ち会わなかったとしても、測量または現地調査は実施されます。
7 筆界特定されると登記記録に残る
筆界特定されると、対象土地の表題部に「平成○年○月○日筆界特定(手続番号平成○年○月○日第○号)」と記録されます。これは、対象の土地の登記記録を閲覧することにより、当該土地について筆界特定がされた事実を把握し、参照すべき筆界特定手続記録を知ることができるようにするためです。
■まとめ
いかがでしたか?
不動産売買における「筆界特定制度」の注意点についての説明でした。
筆界特定制度とは、土地の所有者として登記されている人などの申請に基づいて、筆界特定登記官が外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、現地における土地の筆界の位置を特定する制度です。
筆界特定とは、新たに筆界を決めることではなく、実地調査や測量を含む様々な調査を行った上、もともとあった筆界を筆界特定登記官が明らかにすることです。
筆界特定制度を活用することによって、公的な判断として筆界を明らかにできるため、隣人同士で裁判をしなくても、筆界(≒境界)をめぐる問題の解決を図ることができます。
主に分筆登記や地積更正申請を行うときに隣接している所有者と境界紛争が起きている場合や、そもそも隣接者の存在が不明(相続登記が未登記で現在の所有者が不明)などに利用されます。
物件の仲介を行うためには、用語の意味をきちんと理解し、売主・買主に適切に把握してもらう必要があります。
物件の売買を実施・仲介するにあたっては、宅地建物取引士として重要な要素となってきます。
調査した結果、売買の対象となるについては、十分に説明し理解のうえ、契約を行う必要があります。
少しでも疑問がある場合は、事前に十分に確認しチェックをしておきましょう。
不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。