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水防は、洪水、雨水出水(内水)、津波、高潮に際して、水災を警戒し、防御し、これによる被害を軽減する活動のことです。そのための仕組みを定めた法律が「水防法」で、1949(昭和24)年に制定されました。
売買の対象となる不動産が、浸水被害軽減地区内に該当する場合には、重要事項説明が必要です。なんとなくわかっているようで、詳しく説明しようとすると理解できていないものです。
これらを詳細に理解するには、経験と知識が必要です。
しかしながら、どのような規定があるのか概要を理解しておけば、そのような物件に巡り合ったときに気づきが生まれます。
これが重要なのです。
内容を理解しておかないと、買主からの「ここで家が建てれるの!用途や大きさの建築はできるの?」との質問に正確に答えることができません。
この記事では、不動産取引における重要事項説明のうち「水防法」について解説しています
不動産取引や建築設計において都市計画や建築基準法などの制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。
建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。
それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。
1 その他法令に基づく重要事項説明事項とは?
法令としては、宅建業法第35条第1項第2号の部分となります。
[宅建業法第35条(重要事項の説明等)第1項第二号(抜粋)]
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
二 都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要
次に政令ですが、宅建業法施行令第3条となります。次の項では、この第3条について詳しく説明します。
都市計画法・建築基準法制限一覧は、こちらの記事で解説しています。
■都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限
施行令第3条ですが、第1項が「宅地又は建物の貸借の契約以外の契約(売買)」について、第2項が「宅地の貸借の契約」について、第3項が「建物の貸借の契約」について規定されています。
大半が対象外となりますが、この内容を覚えておくことで、少しは重要事項説明漏れを防ぐことができると考えられます。
それでは、この記事ではその他の法令に基づく制限のうち『水防法』について解説していきます。
2 重要事項説明:水防法第15条の8
※出典:国土交通省
【水防法第1条(目的)】
この法律は、洪水、雨水出水、津波又は高潮に際し、水災を警戒し、防御し、及びこれによる被害を軽減し、もって公共の安全を保持することを目的とする。
水防法は、法律の目的にも書いていますが、水害被害の軽減などを目的に定められた法律です。
取引する物件が洪水浸水想定区域に指定されているかどうかなどを説明する省令の改正が令和元年の8月に義務付けられましたが、今回説明する内容と関係する法律がこの水防法です。
重要事項の説明の内容については、宅建業法第35条から規定される施行令第3条第1項第18の5号に規定されています。
3 浸水被害軽減地区とは
【水防法第15条の6】
洪水浸水想定区域(当該区域に隣接し、又は近接する区域を含み、河川区域(河川法第6条第1項に規定する河川区域をいう。)を除く。)内で輪中堤防その他の帯状の盛土構造物が存する土地(その状況がこれに類するものとして国土交通省令※で定める土地を含む。)の区域であって浸水の拡大を抑制する効用があると認められるもの。
※省令第19条の2(抜粋):河川の氾濫により流路沿いに繰り返し土砂が堆積し、周囲の土地より高くなった帯状の土地(自然堤防)
『浸水被害軽減地区』については水防法第15条の6に規定されています。
なお、今後は流域治水の名のもとや水害対策として整備されたり新たに指定される可能性は十分にありえるものです。ちなみに、平成29年の水防法改正により新たに規定されているものです。
4 重要事項において説明する内容
【水防法第15条の8(行為の届出等)】
浸水被害軽減地区内の土地において土地の掘削、盛土又は切土その他土地の形状を変更する行為をしようとする者は、当該行為に着手する日の30日前までに、国土交通省令で定めるところにより、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を水防管理者に届け出なければならない。ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの及び非常災害のため必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。
浸水被害軽減地区内の土地において土地の掘削、盛土又は切土その他土地の形状を変更する行為(形状変更行為)をしようとする者は、当該行為に着手する日の30日前までに水防管理者に届け出なければならない旨を買主に説明します。ただし、通常の管理行為、軽易な行為等※を除く。
※政令第1条
・浸水被害軽減地区内の土地の維持管理のために行う行為
・仮設の建築物の建築その他の浸水被害軽減地区内の土地を一時的な利用に供する目的で行う行為(当該利用に供された後に当該浸水被害軽減地区が有する浸水の拡大を抑制する効用が当該行為前の状態に回復されることが確実な場合に限る。)
指定されている土地の取引を行う場合には、その土地の掘削や盛土、切土などを行う場合には、行為に着手する30日前までに水防管理者に設置しなければならない旨を説明します。なお、水防法施行令第1条に規定されている維持管理に関する内容については届出不要です。
水防管理者とは、水防管理団体である市町村の長、又は水防事務組合の管理者若しくは長若しくは水害予防組合の管理者のことです。
この法律に記載されているように、重要事項説明の対象となるかどうかは、取引する土地が、『浸水被害軽減地区』に該当するかどうかが大切なポイントとなってきます。
■まとめ
いかがでしたか?
重要事項説明の一つである洪水浸水想定区域内に指定される『浸水被害軽減地区』についての説明でした。
災害が頻発・激甚化してきた現在、その対策の一環として指定されたり整備される可能性は十分にありますので、河川に近いところで土地取引が行われる場合は留意が必要です。
調査した結果、売買の対象となる不動産が、洪水浸水想定区域内に指定される『浸水被害軽減地区』に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「水防法」の項目にチェックをつけて、制限の内容を説明する必要があります。
このような物件に関しては、物件の仲介業者は購入希望者に対して、その物件がどの「用途地域」に属するかとあわせて、制限についても必ず伝える義務があります。
少しでも疑問がある場合は、事前に担当の部署に確認し法チェックをしておきましょう。
不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。