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【重要事項説明】津波防災地域づくりに関する法律(各区域・施設に関する制限・届出)|制度の概要と課題!?重要事項との関係、対象の地域とその理由!しっかり理解してがっちり土地利用。宅建・土地取引・投資のノウハウ!!

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津波防災地域づくりに関する法律は、東日本大震災津波による被災をきっかけに、津波災害の防止と将来にわたって安心して暮らすことのできる安全な地域の整備を目的に、2011(平成23)年に制定されました。津波防災地域づくり法」と略されます。


売買の対象となる不動産が、津波災害特別警戒区域内・津波防護施設区域内・指定避難施設に該当する場合には、重要事項説明が必要です。

なんとなくわかっているようで、詳しく説明しようとすると理解できていないものです。

これらを詳細に理解するには、経験と知識が必要です。

しかしながら、どのような規定があるのか概要を理解しておけば、そのような物件に巡り合ったときに気づきが生まれます。

これが重要なのです。

内容を理解しておかないと、買主からの「ここで家が建てれるの!用途や大きさの建築はできるの?」との質問に正確に答えることができません。

この記事では、不動産取引における重要事項説明のうち津波防災地域づくりに関する法律」について解説しています。

不動産取引や建築設計において都市計画や建築基準法などの制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。

建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。

それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。

 

 

 

1 その他法令に基づく重要事項説明事項とは?

法令としては、宅建業法第35条第1項第2号の部分となります。

宅建業法第35条(重要事項の説明等)第1項第二号(抜粋)]

宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。

 

二 都市計画法建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要

 

次に政令ですが、宅建業法施行令第3条となります。次の項では、この第3条について詳しく説明します。

都市計画法建築基準法制限一覧は、こちらの記事で解説しています。

ossan358.hatenablog.com

 

都市計画法建築基準法以外のその他の法令に基づく制限

施行令第3条ですが、第1項が「宅地又は建物の貸借の契約以外の契約(売買)」について、第2項が「宅地の貸借の契約」について、第3項が「建物の貸借の契約」について規定されています。

大半が対象外となりますが、この内容を覚えておくことで、少しは重要事項説明漏れを防ぐことができると考えられます。

それでは、この記事ではその他の法令に基づく制限のうち津波防災地域づくりに関する法律』について解説していきます。

 

 

 

2 津波防災地域づくりに関する法律とは

津波防災地域づくりに関する法律は、東日本大震災津波による被災をきっかけに、津波災害の防止と将来にわたって安心して暮らすことのできる安全な地域の整備を目的に、2011(平成23)年に制定されました。

津波防災地域づくり法」とも略されます。

東日本大震災により甚大な津波の被害を受けたことから、復興にあたっては、将来を見据えた津波災害に強い地域づくりを推進する必要があります。

津波防災地域の整備は、国土交通大臣による基本指針の策定、および都道府県知事による津波浸水想定をふまえて、市町村が地域づくりの推進計画を作成します。推進計画にもとづいて推進計画区域を指定し、区域内でさまざまな特別措置を行います。

まず、防災のための土地区画整理事業で、高台や盛土による安全な地区に、住宅や公益的施設を集約する区域(津波防災住宅等建設区)を定め、区域内に換地を申し出ることができる特例を定めます。

そして、津波に対して安全な構造で屋上を持つ建物津波避難建築物)については、災害用備蓄倉庫や自家発電設備室部分の容積率を参入しない特例津波からの避難建物の容積率の特例)を定めます。

集団移転促進事業は市町村が計画を策定しますが、市町村の枠を超えた広域的な見地から策定する必要がある場合は、都道府県が行います(集団移転促進事業の特例)。

また、津波の被害は住宅だけではなく、業務施設や学校・病院・官公庁などの公共共益施設にも及ぶので、これらの各施設を一体的に整備し、都市機能を維持する拠点となる一団地の津波防災拠点市街地形成施設を都市計画で決定できるようにします。

直接的に津波の被害を防ぐために津波防護施設の整備を行います。津波防護施設とは、内陸部への浸水を防止する護岸・胸壁(きょうへき:河川・海岸の堤防上などに設けて、波浪などを防ぐ壁体)、既存の道路等を活用した盛土構造物、道路・鉄道の盛土の開口部に設置する閘門のことです。

この津波防護施設の敷地や津波防護施設を保全するために必要な土地を津波防護施設区域に指定します。

 

 

 

3 津波防護施設区域:法第23条第1項

津波防災まちづくり法第23条第1項(津波防護施設区域における行為の制限)

第23条 津波防護施設区域内の土地において、次に掲げる行為をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、津波防護施設管理者の許可を受けなければならない。ただし、津波防護施設の保全に支障を及ぼすおそれがないものとして政令(※1)で定める行為については、この限りでない。

一 津波防護施設以外の施設又は工作物(以下この章において「他の施設等」という。)の新築又は改築

二 土地の掘削、盛土又は切土

三 前二号に掲げるもののほか、津波防護施設の保全に支障を及ぼすおそれがあるものとして政令(※2)で定める行為

 

(※1)政令第5条

一 津波防護施設区域内の土地における耕うん

二 津波防護施設区域内の土地における地表から高さ3m以内の盛土(津波防護施設に沿って行う盛土で津波防護施設に沿う部分の長さが20m以上のものを除く。)

三 津波防護施設区域内の土地における地表から深さ1m以内の土地の掘削又は切土

四 津波防護施設区域内の土地における施設又は工作物(鉄骨造、コンクリート造、石造、れんが造その他これらに類する構造のもの及び貯水池、水槽、井戸、水路その他これらに類する用途のものを除く。)の新築又は改築

五 前各号に掲げるもののほか、津波防護施設の敷地である土地の区域における施設又は工作物の新築又は改築以外の行為であって、津波防護施設管理者が津波防護施設の保全上影響が少ないと認めて指定したもの

 

(※2)政令第6条

津波防護施設を損壊するおそれがあると認めて津波防護施設管理者が指定する行為

法第23条第1項は、津波防護施設区域内おける行為制限(一定の行為:津波防護施設以外の施設等の新築や改築、土地の掘削・盛土・切土など)です。

津波防護施設区域内の土地で、津波防護施設以外の施設または工作物の新築・改築、土地の掘削や盛土・切土を行うときは、津波防護施設管理者(津波防護施設を管理する都道府県知事または市町村長)の許可を受けなければなりません。

 

津波防護施設とは、盛土構造物、閘こう門、護岸、胸壁施設(海岸保全施設、港湾施設、漁港施設及び河川管理施設並びに保安施設事業に係る施設であるものを除く。)のことをいい、都道府県知事が公表する「津波浸水想定」を踏まえて津波による人的災害を防止し、又は軽減するために都道府県知事又は市町村長が管理するものをいいます。

また、津波防護施設区域とは、津波防護施設管理者が区域指定するものです。

重要事項説明となった場合には、津波防護施設区域」の範囲を調査した上で、対象となる津波防護施設の概要や、どう言った場合に許可等が必要となるのか、管理者(海岸管理者や河川管理者などが津波対策部署と想定されます)に確認し、その内容を説明するようになります。

 

 

 

4 指定津波防護施設:法第52条第1項

津波防災地域づくり法(行為の届出等)

第52条 指定津波防護施設について、次に掲げる行為をしようとする者は、当該行為に着手する日の30日前までに、国土交通省令で定めるところにより、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令(※)で定めるもの及び非常災害のため必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。

一 当該指定津波防護施設の敷地である土地の区域における土地の掘削、盛土又は切土その他土地の形状を変更する行為

二 当該指定津波防護施設の改築又は除却

 

(※)政令第17条

指定津波防護施設の維持管理、仮設の建築物の建築その他これに類する土地の一時的な利用のためにするもの(当該利用に供された後に当該指定津波防護施設の機能が当該行為前の状態に戻されることが確実な場合に限る。)

 

法第52条第1項は、「指定津波防護施設」の敷地内において土地の掘削などを行う場合には、行為着手する30日前までに都道府県知事に届出を行う必要があるとする規定です。

指定津波防護施設とは、都道府県知事が、浸水想定区域(市町村による推進計画策定)における津波による人的災害を防止し、又は軽減するために有用であると認めるときに、津波防護施設を指定津波防護施設として指定することができるとする規定です。

 

 

 

5 指定避難施設の廃止等に係る届出制度:法第58条

津波防災地域づくり法第58条(指定避難施設に関する届出)

第58条 指定避難施設の管理者は、当該指定避難施設を廃止し、又は改築その他の事由により当該指定避難施設の現状に政令(※)で定める重要な変更を加えようとするときは、内閣府令・国土交通省令で定めるところにより市町村長に届け出なければならない。

 

(※)政令第18条

一 改築又は増築による指定避難施設の構造耐力上主要な部分の変更

二 指定避難施設の避難上有効な屋上その他の場所として市町村長が指定するものの総面積の10分の1以上の面積の増減を伴う変更

三 前号に規定する場所までの避難上有効な階段その他の経路として市町村長が指定するものの廃止

 

指定避難施設とは、市町村長が指定できる施設です。警戒区域(イエローゾーン)において、津波の発生時における円滑かつ迅速な避難の確保を図るために必要な施設を指定することができるようになっています。

重要事項説明においては、建築物等が指定避難施設であるかどうかの確認(津波災害警戒区域:イエローゾーン内において指定される施設)が必要となります。指定避難施設である場合には、法第58条第1項の規定を説明する必要があります。

 

 

 

6 避難等施設に関する管理協定:法第68条

津波防災地域づくり法第68条(管理協定の効力)

第68条 第65条(前条において準用する場合を含む。)の規定による公告のあった管理協定は、その公告のあった後において当該管理協定に係る協定避難施設の施設所有者等又は予定施設所有者等となった者に対しても、その効力があるものとする。

 

法第65条(管理協定)とは、市町村が津波避難等に有効な民間施設(避難機能を有する施設)のうち、自ら管理する必要があると判断したものについて、当該施設所有者と管理協定を締結することできるとする規定で、管理協定を締結した場合に公告する義務などが規定されています。

重要事項説明においては、管理協定を締結している施設(公告や管理協定施設の場合には看板等の表示義務あり)の所有者が変更となっても協定は継承される旨を説明する必要があります。

 

 

 

7 津波災害警戒区域(特別警戒区域)における建築の制限:法第73条、法82条

津波防災地域づくりに関する法律第73条)

特別警戒区域内において、政令で定める土地の形質の変更を伴う開発行為で当該開発行為をする土地の区域内において建築が予定されている建築物の用途が制限用途であるものをしようとする者は、あらかじめ、都道府県知事、指定都市または中核市の区域内にあっては、それぞれの長(以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。

 

津波防災地域づくりに関する法律第82条)

特別警戒区域内において、用途の建築物の建築をしようとする者は、あらかじめ、都道府県知事等の許可を受けなければならない。

 

都道府県知事は、津波浸水想定をふまえて、津波の警戒避難体制を整備すべき土地を津波災害警戒区域に指定し、津波災害警戒区域のうち、津波が発生した場合に建築物が損壊・浸水して著しい危害が生ずるおそれがある土地を、津波災害特別警戒区域として指定します。

津波災害特別警戒区域内では、次の用途の建築を目的とする開発行為、建物の建築、用途変更するときは都道府県知事の許可が必要です。

 

津波災害特別警戒区域内の制限

  • 高齢者、障害者、乳幼児が利用する社会福祉施設、学校、医療施設
  • 津波のときに円滑かつ迅速な避難ができない住宅・旅館等の建築物

 

 

 

8 津波災害警戒区域:法第53条

津波防災地域づくりに関する法律第53条1項)【津波災害警戒区域内の宅地建物】

都道府県知事は、基本指針に基づき、かつ、津波浸⽔想定を踏まえ、津波が発⽣した場合には住⺠その他の者の⽣命または⾝体に危害が⽣ずるおそれがあると認められる⼟地の区域で、当該区域における津波による⼈的災害を防⽌するために警戒避難体制を特に整備すべき⼟地の区域を、津波災害警戒区域(以下「警戒区域」という。)として指定することができる。

 

売買の対象となる不動産が、津波災害特別警戒区域内・津波防護施設区域内・指定避難施設に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「津波防災地域づくりに関する法律」の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。

加えて、宅地建物が津波災害警戒区域内にあるときは、その旨を重要事項として説明しなければなりません。これは、宅地・建物の売買、交換、賃借のいずれの場合でも義務づけられています。

 

 

 

■まとめ

いかがでしたか?

重要事項説明の一つである『津波防災地域づくりに関する法律』についての説明でした。

 

調査した結果、売買の対象となる不動産が、『津波防災地域づくりに関する法律』に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「津波防災地域づくりに関する法律」の項目にチェックをつけて、制限の内容を説明する必要があります。

津波災害警戒区域に指定されない限り、津波災害特別警戒区域に指定されることはありません。そのため、津波災害特別警戒区域内に宅地建物があるとき、実際の説明にあたっては「この物件が所在する場所は津波災害警戒区域内にあり、かつ、津波災害特別警戒区域として指定されており、そのため⼀定の開発⾏為・建築⾏為に対する⾏為制限がかかっている」旨を重要事項として説明することが望ましいとされています。

 

このような物件に関しては、物件の仲介業者は購入希望者に対して、その物件がどの「用途地域」に属するかとあわせて、制限についても必ず伝える義務があります。

少しでも疑問がある場合は、事前に担当の部署に確認し法チェックをしておきましょう。

不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。