OSSANです。
これまでに引き続き、不動産のための土地利用の規制について説明していきます。
「立地適正化計画」において定められる「居住調整地域」とは?
今回は、都市再生特別措置法に基づいて定めることができる「居住調整地域」の解説です。
「居住調整地域」が指定されると、居住機能に限り、都市計画法に基づく開発許可制度が適用されることなる規定となっています。
土地利用における補完的なルールとなっていますが、「多極ネットワーク型コンパクトシティ」の形成を進める上では、立地適正化計画を位置付けた都市再生特別措置法の改正とともに創設された、”規制型”として効果が期待される都市計画の一つとなっています。
個人的には、ももっと積極的に活用されてももいいんじゃないかと考えています。
活用の効果として、私個人には、次のように考えています。
- 非線引き都市(市街化区域と市街化調整区域との区域区分を定めていない都市)において、郊外の開発圧力を抑制するために効果を発揮する。
- 線引き都市であれば、将来の逆線引き(市街化区域を市街化調整区域に変更)を行う前の段階的な緩衝手法として活用する。
区域区分の意味が分からない方はこちらの記事をご覧ください。
それでは、解説していきます。
1 都市計画法」および「都市再生特別措置法」における位置付け
まずはじめに法律における位置付けです。
「居住調整地域」とは、都市計画法第8条に規定される”地域地区”の一つです。
地域地区とは、用途地域や高度利用地区など土地利用のルールです。
その中で「居住調整地域」は、都市計画法第8条第四の二号に規定されており、その規定の中で都市再生特別措置法第89条の規定に居住調整地域と規定されています。
なお、「居住調整地域」の都市計画決定者は、”市町村”となっています。
指定可能な区域
立地適正化計画を定めており、そのうち、市街化調整区域並びに居住誘導区域を除く区域です。
立地適正化計画自体が都市計画区域を計画対象とするものですので、指定される区域は次のように考えらています。
- 線引き都市では、市街化区域のうち、居住誘導区域外
- 非線引き都市では、居住誘導区域外
それから、この「居住調整地域」のポイントとして、”住宅地化を抑制すべき区域”とされていることに留意する必要があります。
あくまでも、「居住」を規制対象としており、事務所や店舗、飲食店などは規制の対象外であるということです。また、農林漁業従事者用の住宅などは立地基準の対象外となるのでご注意ください。
2 居住調整地域内における建築の制限
居住調整地域が適用された地域は、簡単にいうと、開発許可制度が適用され、3戸以上の住宅の建築目的の開発行為、住宅の建築目的の開発行為であってその規模が 1000 m²以上のもの、寄宿舎 や有料老人ホームなど人の居住の用に供する建築物のうち地域の実情に応じて条例で定めたものの建築目的の開発行為等が規制されることとなります。
ポイントは、住宅(共同住宅、長屋、一戸建ての住宅)が対象となることです。
開発行為については、立地基準と技術基準があるんですが、居住調整地域を指定する事で、居住調整地域を市街化区域調整区域とみなして、立地基準も審査されることになるという規定です。
ただし、立地基準については、住宅用途が対象となるだけです。
3 「都市計画運用指針」における居住調整地域設定の考え方
「都市計画運用指針」において、居住調整地域設定例の考え方が示されています。
- 過去に住宅地化を進めたものの居住の集積が実現せず、空地等が散在している区域について、今後居住が集積するのを防止し、将来的にインフラ投資を抑制することを目的として定める場合
→市街化区域や用途地域の縁辺部ではあり得ます。
- 工業系用途地域が定められているものの工場の移転により空地化が進展している区域について、住宅地化されるのを抑制することを目的として定める場合
→工業専用地域を除く工業系用途では、住宅開発が行われてしまう可能性があるので、その場合には「居住調整地域」を設定して、住宅地化を抑制することができます。
- 非線引き都市計画区域内で、都市の縁辺部の区域について、住宅開発を抑制し居住誘導区域内など都市の中心部の区域において住宅地化を進めることを目的として定める場合
→目的として、非線引き都市の場合、郊外の開発規制が弱いため、居住調整地域を設定する事で、居住誘導区域内の人口密度を維持しようとするものです。
- 区域区分が定められている都市計画区域から流出する形で非線引き都市計画区域において住宅地化が進んでいる場合において、区域区分が定められている都市計画区域に近接・隣接する非線引き都市計画区域における住宅地化を抑制することを目的とし定める場合
→線引き都市の都市圏内にある非線引き都市において、都市圏内の市町村で開発抑制するところと誘導しようとするところを調整しようということですね。
この部分って結構重要だと思っています。
人口減少の中で、”自分の都市さえ良ければいい”という考えではダメだと思います。
しかし、その一方で、公共施設の配置や都道府県による広域調整を除いて都市計画は市町村が基本的に考えることになっており、都市圏内での都市づくりに一貫性がない。
さらに、そうなると、公共投資も分散してしまい、隣接・近傍市町村に同じような公共施設が複数ある。
自治体間で共倒れしてしまう可能があります。
ですから、都市圏で経済を考えた際に、この「居住調整地域」は効果を発揮するんじゃないかと思います。
まあ、このような時こそ広域調整の役割を担う県の力を発揮すべきなのでしょうが・・・
4 今後は、「居住調整地域」の指定は増えるのか
現在、約270都市が立地適正化計画を公表しているなかで、数都市なので、単純に考えられば、増えることはないのかもしれません。
通常、区域区分を指定する線引き都市であれば、市街化調整区域が開発抑制をかける都市計画手法として効果を発揮します。
居住調整地域は、市街化区域の中でも、居住誘導区域外となるわけですので、本来なら、市街化を促進していく地域だけど、住宅開発は抑制しようとする一部矛盾を含むを手法となってしまっているのです。
また、住宅開発を抑制して、工場や事業所の誘致を促進するための地域地区である工業専用地域では住宅の立地が不可能ですし、工業地域でも地区計画を併用して住居系の立地を抑制することができるため、あえて、「居住調整地域」を選択するメリットはあまり少ないように感じます。
それでは、今回は以上となります。
最後までご覧いただきありがとうございます。