OSSAN358’s ブログ

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【OSSAN’s知恵袋】不動産業者や宅建士、投資家のみなさんにわかっておいて欲しい。法改正で重要事項説明が必要になった『浸水想定区域』をまとめてわかりやすく説明します!

OSSANNです。

 

不動産の重要事項説明書の「水防法に基づく水害ハザードマップにおける当該宅地建物の所在地」欄にチェックをつける項目があります。

 

2020年7月の記録的な豪雨で被害を受けた熊本県人吉市では、ハザードマップ上で浸水が予想されていた地域と実際の浸水区域がほぼ重なっていました。また、2018年の西日本豪雨でも浸水想定区域で多数の住宅が浸水し、逃げ遅れた住民が犠牲になったことから、法改正により水害リスクも重要事項説明書で説明することになりました。

 

ここでは、水防法に基づく水害ハザードマップにおける当該宅地建物の所在地の内容を説明できるようになるための知識として、『浸水想定区域』についてわかりやすく説明します。

 

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浸水想定区域(しんすいそうていくいき)とは、河川の氾濫(はんらん)などにより、住宅などが水につかる浸水が想定される区域のことです。

 

近年、ゲリラ豪雨などによる水災害が頻発しており、短時間で河川が増水し、堤防が決壊して甚大な被害が発生する事例も増えています。洪水時の被害を最小限にするためには、普段から水災害のリスクを認識したうえで、氾濫時の危険箇所や避難場所について正確な情報を知っておく必要があります。

 

ここでは浸水想定区域についてまとめました。

 

1 浸水想定区域とは

浸水想定区域は、水防法に次のとおり定められています。

 

(水防法第14条1項)

国土交通大臣は、第十条第二項または第十三条第一項の規定により指定した河川について、都道府県知事は、第十一条第一項または第十三条第二項の規定により指定した河川について、洪水時の円滑かつ迅速な避難を確保し、または浸水を防止することにより、水災による被害の軽減を図るため、国土交通省令で定めるところにより、想定最大規模降雨(想定し得る最大規模の降雨であって国土交通大臣が定める基準に該当するものをいう。以下同じ。)により当該河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域を洪水浸水想定区域として指定するものとする。

  

浸水想定区域とは、国土交通省及び都道府県が「洪水予報河川(こうずいよほうかせん)」「水位周知河川(すいいしゅうちかせん)」に指定した河川について、「想定し得る最大規模の降雨」に加えて「河川整備の目標とする降雨」によりその河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域として指定したものです。

指定する理由は、洪水時における円滑かつ迅速な避難を確保すること、また、浸水を防止することにより、水害による被害の軽減を図るためです。

指定された場合、その区域、浸水した場合に想定される水深、浸水継続時間を洪水浸水想定区域図(こうずいしんすいそうていくいきず)として公表しています。

また、洪水予報河川や水位周知河川に限らず、氾濫により浸水が想定される河川についても公表しています。

 

さらに、2015(平成27)年9月関東・東北豪雨において、堤防決壊に伴う氾濫流により家屋が倒壊・流出したことや多数の孤立者が発生したことを踏まえ、住民に対し、家屋の倒壊・流失をもたらすような堤防決壊に伴う激しい氾濫流(はんらんりゅう)や河岸侵食(かがんしんしょく)が発生することが想定される区域を家屋倒壊等氾濫想定区域(かおくとうかいとうはんらんそうていくいき)として公表されています。

 

洪水浸水想定区域図では、下記の8ランクに分けて浸水深(しんすいしん:洪水・津波などで浸水した際の、水面から地面までの深さ)を表示しています。

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浸水深が深かったり、家屋倒壊等氾濫想定区域となっている地区では、近頃よくきく命を守る行動をとることが必要となるため、洪水時に次のような心構えが必要となります。

浸水深等の情報

洪水時の心構え

家屋倒壊等氾濫想定区域

○家屋の流出・倒壊のおそれがあり、避難が遅れると命の危険が非常に高いため、住民の方は避難情報のみならず、出水時の水位情報にも注意し、事前に必ず避難所等の安全な場所に避難することが必要。

浸水深3.0m以上(2階床面が浸水)域 の区

○2階床面が浸水する2階建て住宅では、避難が遅れると危険な状況に陥るため、住民は避難情報のみならず、出水時の水位情報等にも注意し、必ず避難所等の安全な場所に避難することが必要。

○高い建物の住民でも、浸水深が深く、水が退くのに時間を要することも想定されるため、事前に避難所等の安全な場所に避難することが必要。

浸水深0.5m~3.0m(1階の床面が浸水)の区域

○平屋住宅または集合住宅1階の住民は、1階床上浸水になり、避難が遅れると危険な状況に陥るため、避難情報のみならず、出水時の水位情報等にも注意し、必ず避難所等の安全な場所に避難することが必要。

●2階以上に居室を有する住民は、浸水が始まってからの避難は、浸水深0.5mでも非常に危険なため、避難が遅れた場合は、無理をせず自宅2階等に待避することが必要。ただし、浸水が長時間継続した場合やそれに伴い孤立した場合の問題点について日頃から考えておくことが必要。

浸水深0.5m未満の区域

●避難が遅れた場合は自宅上層階で待避することが必要。

ただし、浸水が長時間継続した場合やそれに伴い孤立した場合の問題点について日頃から考えておくことが必要。

 

2 浸水想定区域についてのQ&A

ここでは、浸水想定区域についてよくある質問についてまとめました。

 

洪水ハザードマップとは、市町村において住民が円滑かつ迅速に避難するために、洪水浸水想定区域図に浸水情報の伝達方法や避難場所に関する情報を記載したものです。市町村から配布または市町村HP等で公表されています。

 

  • 洪水予報河川(こうずいよほうかせん)とは?

流域面積が大きい河川で、洪水により重大または相当な損害を生ずるおそれがある河川として、国または都道府県が指定した河川で、洪水のおそれのあるときは水位または流量を示した洪水予報を発表されています。

 

  • 水位周知河川(すいいしゅうちかせん)とは?

洪水予報河川以外の河川のうち、洪水により重大または相当な損害を生ずるおそれがあるものとして、国または県が指定した河川で、洪水特別警戒水位を定め、この水位に達したときは、その旨を水位または流量を示して通知・周知されます。

 

  • 想定し得る最大規模の降雨とは?

「想定し得る最大規模の降雨」とは、その河川における降雨だけでなく、近隣の河川における降雨が、その河川でも同じように発生するという考えに基づき、日本を降雨の特性が似ている15の地域に分け、それぞれの地域において過去に観測された最大の降雨量により設定しているものです。

 

  • 河川整備の目標とする降雨とは?

「河川整備の目標とする降雨」とは、「想定し得る最大規模の降雨」が、発生頻度が極めて低い降雨のため、比較的発生頻度の高い降雨により設定しているものです。

 

  • 浸水継続時間とは?

浸水継続時間とは、ある地点において氾濫水が到達した後、屋外への避難が困難となり孤立する可能性のある浸水深0.5mに達してから、その水深を下回るまでにかかる時間を示したものです。

浸水継続時間が長い地域では、ライフラインが絶たれることにより避難生活が困難となるおそれがあることから、立ち退き避難の要否の判断に有用な情報となります。

 

  • 家屋倒壊等氾濫想定区域とは?

家屋倒壊等氾濫想定区域(かおくとうかいとうはんらんそうていくいき)は、「想定し得る最大規模の降雨」により、近くの堤防が決壊した場合などに、一般的な建築物(家屋)が倒壊・流出する危険性が高い区域を示すものです。この区域では、屋内での退避ではなく、避難所への立ち退き避難の必要性を判断することが求められます。

家屋倒壊等氾濫想定区域は、洪水氾濫流(こうずいはんらんりゅう:堤防決壊による強い水の流れ)によるものと河岸侵食(かがんしんしょく:水の力により、特に堤防沿いの地盤が削られてしまうこと)によるものがあります。

 

3 都市洪水想定区域・都市浸水想定区域との違い

(洪水)浸水想定区域・都市洪水想定区域・都市浸水想定区域とも全て、浸水に対して円滑な避難行動や平常時からの防災意識の向上に活用されるという意味では同じです。

浸水想定区域は、主に河川の堤防の決壊や河川から溢れた水により発生した浸水を対象としています。これは、都市洪水想定区域と同じで、都市洪水想定区域は、大雨などにより、川の水が増して勢いよくあふれ出ることにより、洪水が想定される区域に指定され、いわゆる「外水被害」というものにあたります。

これらは、河川の指定によって異なり、河川の規模や重要度などによって、水防や整備のために河川を指定して、その目的に応じた浸水想定図を作成しています。

 

  • 洪水予報河川:水防法に基いて指定し、河川管理者と気象台が洪水の状況や予想を発表する。
  • 水位周知河川:水防法に基いて指定し、避難勧告等の目安となる水位に達したことを発表する。
  • 特定都市河川:特定都市河川浸水被害対策法に基いて指定し、浸水被害の防止のための対策の推進を図る

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特定都市河川とは、市街化率がおおむね5割以上の都市部を流れる河川で、流域において著しい浸水被害が発生し、またはそのおそれがある(過去の実績または想定される年平均水害被害額が10億円以上)にもかかわらず、河道または洪水調整ダムの整備による浸水被害の防止が市街化の進展により困難であるものとして指定された川です。

 

その特定都市河川が洪水予報指定河川の場合は浸水想定区域、特定都市河川が洪水予報浸水河川でない場合は、都市洪水想定区域となります。

一方、都市浸水想定区域とは、大雨などにより、地表の水の増加に排水が追いつかず、用水路や下水溝などがあふれて氾濫したり、河川の増水や高潮(海水面の高まり)によって排水が阻まれることによって、住宅などが水につかる浸水が想定される区域に指定され、いわゆる「内水被害(ないすいひがい)」というものにあたります。

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4 浸水想定区域内にある不動産取引について

水害リスク情報の重要事項説明への追加

宅建業者は、宅地・建物の売買・交換・貸借の相手方等に対して、その者が取得し、または借りようとしている宅地・建物に関し、その売買・交換・貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、書面を交付して所定の重要事項の説明をさせなければなりません。ここで、所定の重要事項については、宅建業法で明記されるほか、宅建業法施行規則にも、定められています(宅建業法35条1項14号イ)。

平成30年7月豪雨、令和元年台風19号、令和2年7月豪雨など、最近、甚大な被害をもたらす大規模水災害が頻発しています。このような状況において、不動産取引を行う際には、水害リスクに係る情報が、契約締結の意思決定を行ううえで重要な要素となります。そのために、宅建業法施行規則が改正され、説明すべき重要事項として、ハザードマップにおける宅地・建物の所在地が追加されました[ 2 0 2 0(令和2)年8月28日施行]。

売買・交換だけではなく、賃貸借においても、説明すべき重要事項になります。

また、重要事項説明書の「その他重要な事項」欄に、ハザードマップによる調査等により、床上、床下を問わず、浸水の事実について、周辺地域が浸水の多い地域であれば、その事実を記載する方法もあります。

 

5 浸水想定区域内にある不動産は安くなるのか

結論からいうと、浸水想定区域に指定されると不動産価値は下がる可能性があります。

指定されているということは、住宅が浸水(床上浸水・床下浸水)するおそれのある土地だからです。

そのような水災の可能性のある土地とない土地、どちらの方が価値が高いでしょうか。

また、国は「コンパクトシティ」の概念を打ち出し、立地の良い場所に「集まって住む」ことを政策としておしすすめています。

そこで各自治体は、集まって住むべき場所として「居住誘導区域」を設定していますが、浸水想定区域で、居住を誘導することが適当ではないと判断される場合は、原則として、居住誘導区域に含まれないこととすべき区域に定められているのです。

今後は、何らかの対策がされておらず、居住誘導区域外となった浸水想定区域内、特に家屋倒壊等氾濫想定区域内の不動産は要注意です。

市町村の取り組みによっては、居住誘導区域内の不動産価格は維持されますが、居住誘導区域外の不動産価値は下落する可能性があります。

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6 浸水想定区域や洪水ハザードマップの調べ方

一番便利なのは、国土交通省ハザードマップポータルサイトです。こちらでハザードマップを取得することもできます。

disaportal.gsi.go.jp

また、浸水想定区域や洪水ハザードマップは、市区町村インターネットにより情報公開されている自治体がほとんどです。GoogleYahoo!で「◯◯(市区町村) 浸水想定区域(洪水ハザードマップ)」と調べてみてください。

 

浸水想定区域の公表・指定状況についても、国土交通省のHPより確認できます。