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不動産を売買する上で、その物件の情報を早い段階で調査しておく必要があります。
そのような日々の業務の中で使用される専門用語など理解するのは重要です。なんとなくの独自の理解で納得していませんか?
不動産の税金で「おしどり贈与」ついて理解しておくことは重要です。ここでは、その内容と考え方についてわかりやすく記事にしています。
不動産の税金において土地利用の内容を説明する際には正しい根拠を正確に売主・買主に伝える必要があります。
建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。
それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。
専業主婦の奥様が、ご主人からの給料をなんとかやりくりし、貯金したお金を奥様名義の銀行に預けた場合、税法上、夫の預金として扱われてしまいます。
ここではその理由と、頑張った奥様への「おしどり贈与」についてわかりやすく解説していきます。
1 なぜ専業主婦が貯めたお金がご主人のお金に?
奥様名義の預金でもあっても資金の源泉はご主人です。税法上では、実質的所有者としてご主人の預金と扱われます。
専業主婦である「奥様の預金」と明確に言えるのは次のようなものになります。
- 相続によって親の遺産分けでもらった財産
- 結婚前に仕事していた時の預金
- 結婚式でもらったご祝儀
このようなことから、専業主婦の奥様が貯めた預金をマイホームの購入資金に出したとしても、夫婦共有名義の不動産にはなりません。
しかし、コツコツ頑張っている奥様にメリットがあります。
それが「おしどり贈与」です。
◇離婚時における財産分与は家の名義人とは関係ない
名義が夫であっても、離婚時の財産分与においては不動産も対象になります。財産分与とは、夫婦が離婚するときに、婚姻時(結婚していた期間)に形成した資産を分け合うことです。預貯金や株部式、生命保険や不動産などの財産が対象になるので、家も財産分与対象に含まれます。
2 おしどり贈与って何?
個人からお金や不動産などの財産を受け取った場合は、夫婦や親子であっても贈与税がかかります。
おしどり贈与(贈与税の配偶者控除の特例)とは、長年連れ添った妻の内助の功(家庭において、夫の外部での働きを支える妻の功績)を評価して設けられた税法上の特例です。
具体的には、マイホーム(居住用不動産)、またはマイホームの購入資金のうち2,000万円(基礎控除と合わせれば2,110万円)までは贈与税がかからないというものです。
◇おしどり贈与の計算方法
(贈与財産価額 − 2,000万円 − 110万円)× 税率 − 控除額
税率に関しては「特例贈与財産」と「一般贈与財産」に区別され、特定贈与財産については特例贈与財産については税率が低く設定されています。
ただし、おしどり贈与を利用するためには次のような適用条件があります。
1. 婚姻期間20年以上
入籍してから20年以上経ってる必要があります。婚姻期間は、婚姻の届出があった日から贈与までの期間です。内縁の妻には適用がありません。
2. 居住用不動産かその取得のための金銭
マイホームか、あるいはマイホームの購入資金のどちらかです。
マイホームの場合、贈与税の計算方法と同じく、基本的に相続税評価額で計算します。
3. 翌年3月15日までに住み、その後も住み続けること
贈与を受けた翌年の3月15日までに居住用不動産に住み、その後も住み続けなければなりません。
4. 一生に一度の適用
おしどり贈与は同じ配偶者との間において、一生に一度しか利用できません。再婚して別の配偶者との間であれば適用が可能です。
5. 税務署への申告が必要
おしどり贈与の適用を受けるには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、住んでいる地域を管轄する税務署に贈与税の申告書を提出する必要があります。
次の書類を添付して申告します。
- 贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本または抄本
- 贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
- 居住用不動産を取得したことを証する書類
- その居住用不動産に住んだ日以後に作成された住民票の写し(戸籍の附票の写しに記載されている住所が居住用不動産の所在場所である場合には、必要ありません)
詳しくは国税庁HP「夫婦間の居住用不動産の贈与」をご参照ください。
3 おしどり贈与を利用するメリット
おしどり贈与にはもう一つ利点があります。
通常「相続開始前で3年以内の贈与は相続税に加算される」というルールがあるのですが、相続税開始前3年以内におしどり贈与があっても、相続税に加算されません。
マイホームを夫婦で分割して所有できるので、相続財産を減らすことができるということになり、相続税の節税につながります。
おしどり贈与の控除額を超えた贈与については相続税の対象となるので注意が必要です。
◇「特別受益」と「持ち戻し」
おしどり贈与は、妻への内助の功に対しての特例だけでなく、妻の老後の生活保障という意味もあります。日本人の平均寿命は男性が81歳、女性が87歳のため、同い年の夫婦であっても、妻には約6年間の余生がありますし、夫が年上なら妻の余生はさらに長くなります。
しかし、現在の民法では相続人の間の公平のため、こうした生前贈与を「特別受益」として扱い、その分だけ法定相続分を減らすという規定があります。この計算を「持ち戻し」といい、おしどり贈与の分が持ち戻しされると、妻の老後の生活保障という意味合いが薄れてしまいます。
ただ、民法改正(2019年7月12日までに施行)により、相続時において、婚姻20年以上の夫婦間で贈与した居住用不動産は「特別受益」にあたらない(推定)とし、金額に関わらず自宅を生前贈与を受けても原則として相続分から差し引かれないことになりました。
ただし、マイホーム取得資金については、この規定の対象外です。
ちなみに、夫が遺言や生前の言動などで「持ち戻し免除」の意思表示をしていれば特別受益に含まれず、妻の相続分は減りません。
配偶者におしどり贈与をしておけば所有権が移るため、もし、どちらか亡くなっても、家を処分したいときに売却して現金化することができますが、おしどり贈与をせずに相続が発生した場合で、配偶者が住み続ける居住権(配偶者居住権)を選択すると勝手に自分で売却することができなくなります。
また、おしどり贈与により、マイホームを夫婦の共有財産にしておくと、売却する際に「3,000万円特別控除」を夫婦2人とも適用できるため、2人あわせて最高で譲渡益6,000万円までまで譲渡所得税がかかりません。
ただし、「3,000万円特別控除」を利用するには、家屋とともに土地を売却する必要があるため、土地と家屋部分ともに贈与しておく必要があります。
4 おしどり贈与を利用するデメリット
登記にかかる登録免許税は、相続に比べて税率が高く、不動産取得税もかかります。
■まとめ
いかがでしたか?
不動産の税金の基礎となる「おしどり贈与」についての説明でした。
物件の仲介を行うためには、用語の意味をきちんと理解し、売主・買主に適切に把握してもらう必要があります。
物件の売買を実施・仲介するにあたっては、宅地建物取引士として重要な要素となってきます。
調査した結果、売買の対象となるについては、十分に説明し理解のうえ、契約を行う必要があります。
少しでも疑問がある場合は、事前に十分に確認しチェックをしておきましょう。
不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。