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【重要事項説明】建築基準法第57条の5(高層住居誘導地区)|都心に高層マンションの建築を推進する地区!?都市計画法との関係、対象の地域とその理由!しっかり理解してがっちり土地利用。宅建・土地取引・投資のノウハウ!!

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こんかいは建築基準法第57条の5(高層住居誘導地区)についてです。

高層住居誘導地区(こうそうじゅうきょゆうどうちく)とは、都心に高層住宅(マンション)の建築を誘導し、都心回帰を促そうとする地区です。

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これらを詳細に理解するには、経験と知識が必要です。

しかしながら、どのような規定があるのか概要を理解しておけば、そのような物件に巡り合ったときに気づきが生まれます。

これが重要なのです。

内容を理解しておかないと、買主からの「このような用途や大きさの建築はできるの?」との質問に正確に答えることができません。

不動産取引や建築設計において都市計画や建築基準法の制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。

建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。

それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。

 

 

 

1 建築基準法における重要事項説明事項とは?

重要事項説明では、宅建業法施行令第3条第1項第2号に掲げる内容を説明する必要があります。

宅建業法施行令第3条第1項第2号(重要事項説明:建築基準法

二 建築基準法第39条第2項、第43条、第43条の2、第44条第1項、第45条第1項、第47条、第48条第1項から第14項まで(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第49条(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第49条の2(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第50条(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第52条第1項から第14項まで、第53条第1項から第8項まで、第53条の2第1項から第3項まで、第54条第55条第1項から第3項まで、第56条第56条の2第57条の2第3項、第57条の4第1項第57条の5、第58条、第59条第1項及び第2項、第59条の2第1項、第60条第1項及び第2項、第60条の2第1項、第2項、第3項(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)及び第6項、第60条の2の2第1項から第3項まで及び第4項(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第60条の3第1項、第2項及び第3項(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第61条、第67条第1項及び第3項から第7項まで、第68条第1項から第4項まで、第68条の2第1項及び第5項(これらの規定を同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第68条の9、第75条、第75条の2第5項、第76条の3第5項、第86条第1項から第4項まで、第86条の2第1項から第3項まで並びに第86条の8第1項及び第3項

「エッ」と思うぐらい多いですが、このうち都市計画や建築基準法に基づく指定や認可状況、条例などを調査し、該当する事項を説明することになります。

調査方法としては、都市計画課(法)や建築指導課(法)などを担当する窓口にて確認することとなります。

くれぐれも「どれが対象ですか?」などの尋ね方はやめましょう!

対象となる窓口にて確認して内容を理解し、説明が必要な事項を洗い出して整理するのが資格者の責務です。「役所がいったから。」では役割を果たしていません。

 

 

 

2 「高層住居誘導地区」とは

「高層住居誘導地区」は都市計画による「地域地区」のひとつで、都市計画法第9条第17項に規定されています。

都市計画法第9条第17項]

高層住居誘導地区は、住居と住居以外の用途とを適正に配分し、利便性の高い高層住宅の建設を誘導するため、第一種住居地域、第二種住居地域準住居地域、近隣商業地域又は準工業地域でこれらの地域に関する都市計画において建築基準法第52条第1項第二号に規定する建築物の容積率が10分の40又は10分の50と定められたものの内において、建築物の容積率の最高限度、建築物の建蔽率の最高限度及び建築物の敷地面積の最低限度を定める地区とする。

 

[都市計画運用指針 抜粋]

高層住居誘導地区は、大都市地域の都心地域等で、居住機能の低下、人口の空洞化が進展し、職住の遠隔化による通勤時間の増大、公共公益施設の遊休化などの問題が発生していることに鑑み、住宅と非住宅の混在を前提とした用途地域において高層住宅の建設を誘導することにより、住宅と非住宅の適正な用途配分を回復し、都心における居住機能の確保職住近接の都市構造の実現良好な都市環境の形成を目的として定めるものである。

また、地方都市においても適切な都市構造の実現の視点から中心市街地における住宅供給の促進を図るべきと考えられる場合には、本制度を積極的に活用し得るものである。

 

高層住居誘導地区(こうそうじゅうきょゆうどうちく)とは、都心に高層住宅(マンション)の建築を誘導し、都心回帰を促進しようとする地区です。

運用指針によると、

  • 大都市地域の都心における居住機能の確保、職住近接の都市構造の実現等を図ることが目的
  • 地方都市においては、中心市街地における住宅供給の促進

が目的であることがわかります。

かつては、環境が良い郊外に住居を構えて子供を育てることが主流だったため、その対応として制度化されたのが高層住居誘導地区です。

今はバブルが弾け、都心回帰が進んだ結果、都心部にはタワーマンションが立地しています。

さらに一極集中が問題視されている中で、この制度は現在の社会情勢と乖離があり、活用は難しいかもしれません。

とはいえ、試験対策も含め概要は確認しておきましょう。

 

 

 

3 「高層住居誘導地区」を指定することができる地域

指定することができる地域は次の条件に該当する地域のみです。

用途地域

第一種住居地域、第二種住居地域準住居地域、近隣商業地域、準工業地域

■指定容積率

400%または500%

 

指定容積率で400%又は500%の用途地域は基本的には商業地域ですから、該当する地域というのは、少ないと思います。

「都市計画運用指針」にもあるとおり、大都市の都心若しくは地方都市の中心市街地とされていることに留意する必要があります。

なお、運用指針では、指定が考えられる地区の例示をしています。

 

[都市計画運用指針 抜粋]

a 緑地等のオープンスペースによって囲まれていること等により独立性が高く、当該地区における高層住宅の供給が周辺に与える影響が少ないと考えられる地区

b 相当の公共施設の整備が行われている地区であるが、工場移転等により遊休化し た土地が多く、近年、都心と近接しているなどの利便性から事務所、住宅等の土地利用に転換しつつある地区

c 公共施設が整っている都心に近い市街地であるが、敷地規模の状況等の要因から、適切な土地の高度利用が図られていない地区において、敷地の統合を促進しつつ、 地域にふさわしい高層住宅の建設を誘導していく必要がある地区

 

 

 

4 都市計画の内容と決定権者

4-1 制限の内容

制限されるのは、容積率の最高限度、建蔽率の最高限度、敷地面積の最低限度の3つです。

これにより高層住居誘導地区に指定された地区内では、一定の条件のもと建物の容積率を緩和されるほか、道路幅員、道路斜線制限および隣地斜線制限の緩和、日影規制の一部適用除外などが可能となります。

詳細は、後に 6 建築基準法との関係で説明します。

 

4-2 「都市計画」を定めることができる者

都市計画法第15条第1項の規定により「市町村」になります。

 

 

5 全国の指定状況

高層住居誘導地区に指定されているのは、芝浦アイランド(東京都港区芝浦四丁目地区)と東雲キャナルコート(東京都江東区東雲一丁目地区)の2例だけです(2016年3月末現在)。

四方を運河に囲まれた芝浦アイランドが、「東京都港区芝浦四丁目地区」という高層住居誘導地区に指定されており、全国で初めての実例です。

 

 

 

6 建築基準法との関係

高層住居誘導地区が都市計画に定められた場合、建築基準法で運用を進めていきます。

(高層住居誘導地区)

第五十七条の五 高層住居誘導地区内においては、建築物の建蔽率は、高層住居誘導地区に関する都市計画において建築物の建蔽率の最高限度が定められたときは、当該最高限度以下でなければならない。

2 前項の場合において、建築物の敷地が高層住居誘導地区の内外にわたるときは、当該高層住居誘導地区に関する都市計画において定められた建築物の建蔽率の最高限度を、当該建築物の当該高層住居誘導地区内にある部分に係る第五十三条第一項の規定による建築物の建蔽率の限度とみなして、同条第二項の規定を適用する。

3 高層住居誘導地区に関する都市計画において建築物の敷地面積の最低限度が定められた場合については、第五十三条の二(第二項を除く。)の規定を準用する。この場合において、同条第一項中「用途地域」とあるのは、「高層住居誘導地区」と読み替えるものとする。

4 高層住居誘導地区内の建築物については、第五十六条の二第一項に規定する対象区域外にある建築物とみなして、同条の規定を適用する。この場合における同条第四項の規定の適用については、同項中「対象区域内の土地」とあるのは、「対象区域(高層住居誘導地区を除く。)内の土地」とする。

 

①建築物の敷地が高層住居誘導地区の内外にわたるときは、都市計画で定められた建築物の建蔽率の最高限度を、当該建築物の当該高層住居誘導地区内にある部分に係る第53条第1項の規定による建築物の建蔽率の限度とみなして、同条第2項(建蔽率算定における加重平均の考え方)の規定を適用する。

建築基準法第56条の2第1項(日影規制)は適用されません。

 

要は、高層住居誘導地区に指定された地区内では、住宅部分の床面積が全体面積の3分の2以上の建物の容積率を緩和(すべて住宅の場合最高600%)されるほか、道路幅員による容積率制限の緩和、道路斜線制限および隣地斜線制限の緩和、日影規制の一部適用除外などが可能となるというものです。

 

 

 

7 まとめ

いかがでしたか?

「高層住居誘導地区」は、試験以外ではほとんど係ることはないかと思います。

全国では2箇所ですが、指定が市町村の裁量である点を考えると、いつの間にか都市計画の決定がされていたということもあるかもしれません。

思い込みはやめてきちんと窓口などで内容を確認することも必要です。

土地の仲介業者は購入希望者に対して、その土地がどの「用途地域」に属するかとあわせて、建築物への制限についても必ず伝える義務があります。

少しでも疑問がある場合は、事前に建築確認の部署(機関)に確認し法チェックをしておきましょう。

不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。

推測ではありますが、高層住居誘導地区は、今後しばらくは指定されない可能性が高いでしょう。

なぜなら、高層住居誘導地区は、都心へ人口を呼び戻すための施策でしたが、今では都心回帰が進み、さらに一極集中をもたらしているため、この制度は現在の実情とあっていなくなっているからです。そのため、高層住居誘導地区は、この2例で終わってしまうのかもしれません。