このブログは、まちづくりや都市計画、不動産の取引や投資に関して役立つ情報をつぶやくOSSAN(オッサン)のブログです。良かったらブックマークを活用いただき、業務や調べごとの時に活用してくれると励みになります。
こんかいは建築基準法第60条の2の2(居住環境向上誘導地区)についてです。
居住環境向上誘導地区とは、居住誘導区域の中で定めるもので、ある特定用途の誘導を目的して容積率の緩和などが行うことができる地区のことです。この制度は令和2年9月7日に施行された改正都市計画法及び都市再生法の中から、地域地区の仲間となったものです。
これらを詳細に理解するには、経験と知識が必要です。
しかしながら、どのような規定があるのか概要を理解しておけば、そのような物件に巡り合ったときに気づきが生まれます。
これが重要なのです。
内容を理解しておかないと、買主からの「このような用途や大きさの建築はできるの?」との質問に正確に答えることができません。
不動産取引や建築設計において都市計画や建築基準法の制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。
建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。
それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。
1 建築基準法における重要事項説明事項とは?
重要事項説明では、宅建業法施行令第3条第1項第2号に掲げる内容を説明する必要があります。
宅建業法施行令第3条第1項第2号(重要事項説明:建築基準法)
二 建築基準法第39条第2項、第43条、第43条の2、第44条第1項、第45条第1項、第47条、第48条第1項から第14項まで(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第49条(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第49条の2(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第50条(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第52条第1項から第14項まで、第53条第1項から第8項まで、第53条の2第1項から第3項まで、第54条、第55条第1項から第3項まで、第56条、第56条の2、第57条の2第3項、第57条の4第1項、第57条の5、第58条、第59条第1項及び第2項、第59条の2第1項、第60条第1項及び第2項、第60条の2第1項、第2項、第3項(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)及び第6項、第60条の2の2第1項から第3項まで及び第4項(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第60条の3第1項、第2項及び第3項(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第61条、第67条第1項及び第3項から第7項まで、第68条第1項から第4項まで、第68条の2第1項及び第5項(これらの規定を同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第68条の9、第75条、第75条の2第5項、第76条の3第5項、第86条第1項から第4項まで、第86条の2第1項から第3項まで並びに第86条の8第1項及び第3項
「エッ」と思うぐらい多いですが、このうち都市計画や建築基準法に基づく指定や認可状況、条例などを調査し、該当する事項を説明することになります。
調査方法としては、都市計画課(法)や建築指導課(法)などを担当する窓口にて確認することとなります。
くれぐれも「どれが対象ですか?」などの尋ね方はやめましょう!
対象となる窓口にて確認して内容を理解し、説明が必要な事項を洗い出して整理するのが資格者の責務です。「役所がいったから。」では役割を果たしていません。
2 居住環境向上用途誘導地区とは
【都市計画法第8条第1項第四の2】
都市再生特別措置法第36条第1項の規定による都市再生特別地区、同法第89条の規定による居住調整地域、同法第94条の2第1項の規定による居住環境向上用途誘導地区又は同法第109条第1項の規定による特定用途誘導地区
[都市再生特別措置法第94条の2第1項]
立地適正化計画に記載された居住誘導区域のうち 、当該居住誘導区域に係る居住環境向上施設を有する建築物の建築を誘導する必要があると認められる区域(都市計画法第8条第1項第一号に規定する用途地域(同号に掲げる工業専用地域を除く。第109条第1項において同じ。)が定められている区域に限る。)については、都市計画に、居住環境向上用途誘導地区を定めることができる。
【都市計画運用指針:抜粋】
居住環境向上用途誘導地区は、居住誘導区域内において、居住環境向上施設に限定して用途規制や容積率の緩和を行う一方、それ以外の建築物に ついては従前通りの規制を適用することにより、居住環境向上施設を有する建築物の建築を誘導することを目的とする地域地区である。
居住環境向上用途誘導地区は、居住環境向上施設を有する建築物の建築を誘導する必要があると認められる区域となっています。
この『居住環境向上用途誘導地区』の都市計画決定権者は、市町村です。
この地区は、立地適正化計画を作成され、その計画に位置付けのある「居住誘導区域」の中で定めるものでして、ある特定用途の誘導を目的して容積率の緩和などが行うことができる地区です。
3 居住環境向上施設とは
居住環境向上施設については、都市再生特別措置法第81条第5項に規定されています。
都市再生特別措置法第81条第5項
第二項第六号に掲げる事項には、居住誘導区域ごとにその立地を誘導すべき居住環境向上施設(病院、店舗その他の都市の居住者の日常生活に必要な施設であって、居住環境の向上に資するものをいう。以下同じ。)及び必要な土地の確保その他の当該居住誘導区域に当該居住環境向上施設の立地を誘導するために市町村が講ずべき施策に関する事項を記載することができる。
都市計画運用指針では、次のような施設を想定しています。
- 地域住民を対象とした比較的小規模な病院・診療所等の医療施設
- 日用品を扱う比較的小規模なスーパーマーケット等の店舗
- 専ら近隣に居住する者の利用に供する事務所(コワーキング施設)
用途地域の規定からすれば、居住誘導区域内でも第一種低層住居専用地域などの住宅地では、先のような施設は建築することができません。
住宅地での日常生活に必要な施設の建築の建築や建て替えを可能にすることで、立地適正化計画における居住誘導区域を維持誘導していこうとするものです。
4 都市計画で定める内容
【都市再生特別措置法第94条の2第2項】
居住環境向上用途誘導地区に関する都市計画には、都市計画法第8条第3項第一号及び第三号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 建築物等の誘導すべき用途及びその全部又は一部を当該用途に供する建築物の容積率の最高限度
二 当該地区における市街地の環境を確保するため必要な場合にあっては、建築物の建蔽率の最高限度、壁面の位置の制限及び建築物の高さの最高限度
ポイントは、都市計画法第8条第3項第一号及び第三号と都市再生法第94条の2第2項各号です。
①地域地区(居住環境向上用途誘導地区)の種類②位置、③区域:都市計画法第8条第3項第一号
④都市計画の面積:都市計画法第8条第3項第三号
⑤建築物の用途:都市再生法第94条の2第2項
⑥容積率の最高限度:都市再生法第94条の2第2項第一号 容積率
⑦建蔽率の最高限度、⑧壁面の位置の制限、⑨建築物の高さの最高限度:都市再生法第94条の2第2項第二号 建蔽率等
5 居住環境向上用途誘導地区と建築基準法との関係
建築基準法においては、都市計画で定められた内容についての制限が規定されます。
●容積率(法第52条第1項第六号)
誘導すべき用途として定められた用途に供するものについては、都市計画で定められた容積率以下
●建蔽率(法第60条の2の2第1項)
建蔽率は、都市計画で定められた最高限度以下
公益上必要な建築物は適用除外(一部の公益上必要な建築物は、建築審査会の同意を得て特定行政庁の許可)
●壁面の位置の制限(法第60条の2の2第2項)
建築物の壁or柱は、都市計画で定められた壁面の位置の制限に反してはならない(地盤面下のものや歩廊等を除く)
公益上必要な建築物は適用除外
●絶対高さ(法第60条の2の2第3項)
最高高さは、都市計画で定められた最高限度以下
特定行政庁が用途・構造でやむを得ないとして許可したものを除く(建築審査会の同意が必要)
●用途制限の緩和(法第60条の2の2第4項)
6 まとめ
いかがでしたか?
居住環境向上用途誘導地区の指定された物件をすぐに扱うことは少ないでしょう。
しかし、建築士や宅建士の試験には出題される可能性が大きいです。
近年のトレンドとして理解しておいてよいかと思います。
でもこのような地区が指定されていれば周辺も含め物件の魅力があがることは間違いありません。
都市計画図をインターネットや電話で確認するだけではわかりにくい場合も多いようです。
思い込みはやめてきちんと窓口などで内容を確認することも必要です。
土地の仲介業者は購入希望者に対して、その土地がどの「用途地域」に属するかとあわせて、建築物への制限についても必ず伝える義務があります。
少しでも疑問がある場合は、事前に建築確認の部署(機関)に確認し法チェックをしておきましょう。
不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。