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こんかいは都市計画法第52条(田園居住地域)についてです。
田園居住地域とは、都市部における貴重な田園風景とそれがもたらす周辺の良好な低層住宅の環境を守る地域で、小中学校のほか、その地域で生産された農産物を使用する場合は500㎡までのお店、それ以外は150㎡までのお店が建てられる用途地域のひとつです。
なんとなくわかっているようで、詳しく説明しようとすると理解できていないものです。
これらを詳細に理解するには、経験と知識が必要です。
しかしながら、どのような規定があるのか概要を理解しておけば、そのような物件に巡り合ったときに気づきが生まれます。
これが重要なのです。
内容を理解しておかないと、買主からの「ここで家が建てれるの!用途や大きさの建築はできるの?」との質問に正確に答えることができません。
用途地域によって、建てられる建物が決まっています。
そのため、景観や街並みが大きく変わってくるため、住環境も大きく異なります。
用途地域は、不動産重要事項説明書の「建築基準法に基づく制限」の項目で必ず説明しなければならない内容となっています。
この記事では、不動産取引における重要事項説明のうち「都市計画法第52条(田園居住地域)」について解説しています。
不動産取引や建築設計において都市計画や建築基準法の制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。
建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。
それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。
1 都市計画法における重要事項説明事項とは?
重要事項説明では、都市計画法における規制として宅建業法施行令第3条第1項第1号に掲げる内容を説明する必要があります。
宅建業法施行令第3条第1項第1号(都市計画法:重要事項説明)
都市計画法第29条第1項及び第2項、第35条の2第1項、第41条第2項、第42条第1項、第43条第1項、第52条第1項、第52条の2第1項(同法第57条の3第1項において準用する場合を含む。)、第52条の3第2項及び第4項(これらの規定を同法第57条の4及び密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律第284条において準用する場合を含む。次項において同じ。)、第53条第1項、第57条第2項及び第4項、第58条第1項、第58条の2第1項及び第2項、第58条の3第1項、第65条第1項並びに第67条第1項及び第3項
建築基準法と比べると少ないですが、このうち都市計画や建築基準法に基づく指定や認可状況、条例などを調査し、該当する事項を説明することになります。
調査方法としては、都市計画課(法)や建築指導課(法)などを担当する窓口にて確認することとなります。
くれぐれも「どれが対象ですか?」などの尋ね方はやめましょう!
対象となる窓口にて確認して内容を理解し、説明が必要な事項を洗い出して整理するのが資格者の責務です。「役所がいったから。」では役割を果たしていません。
2 田園居住地域とは
田園居住地域とは、都市部における貴重な田園風景とそれがもたらす周辺の良好な低層住宅の環境を守る地域で、小中学校のほか、その地域で生産された農産物を使用する場合は500㎡までのお店、それ以外は150㎡までのお店が建てられる用途地域のひとつです。
都市部における農業振興を目的として定めためたものです。
この計画において、”都市農地は宅地化するものから都市にあるべきもの” と位置付けられました。
これまでは、地方都市を中心に将来にもわたり人口が大幅に増加することを見据え、土地利用を設定していたこともあり、未利用地が多く残っています。
人口が減少するなかで、これらの土地が宅地への転用、又宅地に転用されても人口密度の低下を招くことがないよう新たに整備されたのが、この田園住居地域です。
生産緑地制度や居住調整地域も含めて、今後の都市政策を担う重要な手法として整理されています。
では、この田園住居地域の用途制限についてです。
3 田園住居地域ではそのような建物が可能?
13種類ある用途地域の中で、第一種低層住居、第二種低層住居の次に制限が厳しい(住環境保護と営農者のための地域)地域となります。
《田園住居地域内において建築することができる用途(建築基準法別表第2(ち)項)より》
- 戸建・マンション
- 店舗兼住宅・事務所兼住宅(一定規模以下)
- 幼稚園・小学校・中学校・高等学校
- 図書館
- 神社・寺院・教会
- 老人ホーム・身体障害者福祉ホーム
- 保育所・公衆浴場・診療所
- 老人福祉センター・児童厚生施設(延べ面積600㎡以下のみ可)
- 巡査派出所(交番)・公衆電話ボックス
- 店舗や飲食店の部分が2階以下で床面積の合計が150㎡以内のもの
- 店舗や飲食店の部分が2階以下で床面積の合計が500㎡以内のもの(田園住居地域及びその周辺の地域で生産された農産物の販売またはそれを材料にした料理の提供を主たる目的とする場合や、原材料とする食品の製造・加工を主たる目的とする場合に限る)
- 農産物の生産、集荷、処理施設
- 農産物や農業の生産資材を貯蔵する倉庫
4 田園住居地域ではどのような制限を受ける?
田園居住地域では、次のような項目について制限がありますので確認が必要です。
- 建ぺい率(30% or 40% or 50% or 60%)
- 容積率 (50% or 60% or 80% or 100% or 150% or 200%)
- 道路斜線制限(適用距離:20m or 25m、勾配:1.25)
- 北側斜線制限(立ち上がり:5m、勾配:1.25)
- 絶対高さ制限(10m or 12m)
- 日影規制(対象建築物:軒高7m超または3階以上、測定面:1.5m、規制値 3-2h / 4-2.5h / 5-3h)
- 外壁後退(1m or 1.5m)
- 敷地面積の最低限度(200㎡以下の数値)
- 高度地区、防火地域・準防火地域・法22条(各自治体によって制限内容が異なる)
5 地区計画との関係
法第58条の3第1項で、市町村は、条例で、地区計画の区域(地区整備計画の区域)内の農地の区域内における第52条第1項(田園住居地域)本文に規定する行為について、市町村長の許可を受けなければならないこととすることができる規定があります。
重要事項説明でも、地区計画区域農地(地区整備計画策定)の場合で市町村条例化している場合には、その制限の内容を説明する必要があります。
6 まとめ
いかがでしたか?
田園住居地域は新しく追加された用途地域であり、第1種低層住居専用地域・第2種低層住居専用地域内に、生産緑地などの農地を中心に今後指定されると考えられます。
これまでの内容を簡潔にまとめると、
- 田園住居地域は2018(平成30)年4月に新しく導入された住居系の用途地域
- 都市部において宅地化されず残っている貴重な農地(都市農地・都市緑地)を今後も保全するための地域
- 2022年問題を見据えて、生産緑地の宅地化を防ぐための用途地域
- 田園住居地域内の農地について、土地の形質の変更、建築物の建築その他工作物の建設または土石その他の政令で定める物件の堆積(駐車場や資材置き場など)を行おうとする者は、市町村長の許可を受けなければならない(都市計画法第52条1項)
- 建ぺい率や容積率など各種の制限内容は、第2種低層住居専用地域の制限とほぼ同じであり、高さが10m(もしくは12m)に制限される(絶対高さ制限)
- 建ぺい率・容積率などの制限内容が非常に厳しく、外壁後退の制限もあるため、隣地にギリギリまで建物が建てられているようなことはない
- 制限内容そのものは第1種低層住居専用地域とほぼ同じだが、床面積150㎡以内の2階建までの店舗や飲食店(コンビニエンスストアなど)が建てられる
- 加えて、床面積500㎡以内の2階建までの農業用施設(田園住居地域及びその周辺の地域で生産された農産物の販売所、それを材料にした料理の提供をするレストランなどの飲食店や、この地域の農産物を原材料に食品の製造・加工をするパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋などや、農機具収納施設など)が建てられる
用途地域は土地利用の基本ルールであり、土地の仲介業者は購入希望者に対して、その土地がどの「用途地域」に属するか、建築物への制限についても必ず伝える義務があります。思い込みはやめてきちんと窓口などで内容を確認しましょう。
少しでも疑問がある場合は、事前に都市計画の部署に確認し法チェックをしておきましょう。
不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。