よくある質問で、
風致地区って何?どんな規制があるの?
こんなに厳しい規制があるなんて土地をかったときに聞いていない!
などのお尋ねがあります。
実態としては、風致地区の場合かなり昔から指定がある場合が多く、調査不足や理解不足が原因の場合が多いようです。
そのようなことにならないよう、この記事では、「風致地区」についてわかりやすく解説していきます。
1 風致地区とは
都市計画運用指針(国土交通省)では、風致地区とは、「都市における風致を維持するために定められる地域地区」され、”風致とは”「都市において自然的な要素に富んだ土地における良好な自然的景観」と規定されています。
「都市」を構成する要素として、都市が定める土地利用計画上、都市環境の保全を図るため風致の維持が必要な区域について定めるのが風致地区です。
自然のあり様のまま景観が保たれている地区を保護しようというものです。
そのため、都市づくりの重要なツールであり、福岡市のような市街地でも風致地区が指定されています。
更に、近年では「グリーンインフラ」として風致地区の役割が注目されています。
激甚化・頻発化する災害に対応するため、樹木や土壌の保全を図ることで、雨水の貯留浸透等のグリーンインフラ(緑の社会資本)としての機能を維持する役割も期待されています。
国土交通省によると、風致地区の指定状況については、令和2年3月末時点で全国225都市754地区指定されています。
風致地区は、都市計画決定(都道府県知事又は市町村長)される区域となるため、市区町村が公開している都市計画図や窓口で確認が可能です。
ただし、規制の内容が自治体毎に条例で規定され、内容が異なるため詳細に確認しておくことが必要です。
自己判断は危険です。
2 風致地区の建築制限(重要事項説明の対象)
風致地区が指定されると、都市計画法第58条第1項の規定に基づき風致条例(風致地区内における絵建築等の規制の基準を定める政令)により建築等の制限がされます。
なお、風致地区の都市計画決定にも関わってきますが、風致地区の面積が10ha以上(2以上の市区町村をまたぐ場合)には都道府県が、10ha未満は市区町村が都市計画の決定権者になります。また、各決定権者が風致条例により建築の許可権者になります。
都市計画法第58条第1項(建築等の規制)
風致地区内における建築物の建築、宅地の造成、木竹の伐採その他の行為については、政令で定める基準に従い、地方公共団体の条例で、都市の風致を維持するため必要な規制をすることができる。
都市計画法第58条第1項に規定される風致条例は、不動産取引における重要事項説明の対象となっています。
売買等を行う土地・建物が風致地区内であれば、都道府県・市町村の風致地区条例を確認し、買主に説明することが必要です。
こちらは福岡市風致地区条例における許可が必要な行為の例です。
例えば、建築物の建築を行う場合には、あらかじめ福岡市長の許可が必要となります。
許可の必要な行為
風致地区内で、次の行為をするときは、市長の許可が必要です。
- 建築物、その他の工作物の新築、改築、増築、移転
- 宅地の造成、土地の開墾、その他土地の形質の変更(法面や擁壁築造等の高さが5メートル以上の場合)
- 木竹の伐採(高さ5メートル以上の樹木を伐採する場合等)
- 土石の採取、水面の埋立て等
- 建築物等の色彩の変更
- 屋外における土石、廃棄物、又は再生資源の堆積
出典:福岡市HP>>>>
また、許可基準(建築物の建築)として、福岡市では次のように定めています。
風致地区内で上記の行為を行う場合は、敷地内の緑の確保等を目的として、以下の制限を設けています。
詳しくは,「風致地区内の行為許可申請のあらまし」をご確認ください。
- 建築物の高さは、15メートル以下です。
- 建ぺい率は、40%以下です。
- 建築物の外壁後退は、道路から2メートル以上、隣地から1メートル以上です。
- 建築物、工作物等の色彩は、周辺の風致と調和するものとし、純白や原色等派手なものは避けてください。
- 風致地区内では、みどり率(敷地面積に対して生長した樹木の樹幹を水平に投影した面積の割合)が30%以上となるよう、敷地内に必要な植栽の基準本数が定められています。
- その他
建蔽率は40%以下、壁面後退は道路側で2m、道路面以外は1.5mの他、緑化率として30%以上の確保が求められます。
植栽計画については、細かく規定されており、単純に「緑化」すれば良いというものではありません。
また、許可表示板の設置や完了届も必要になっています。
3 まとめ
いかがでしょうか?
風致地区は用途地域のうえに補完的に定められる土地利用のルールであり、風致の保護のためかなり厳しい規制が課せられています。
土地の利用計画にかなり影響を与えるため重要事項の説明が不足していると、リスクの高いエリアになります。
反面、将来的にもゆったりとした土地利用が可能であり住環境としては良好なエリアとして好まれて購入や投資してくる方が多いのも事実です。
クライアントの意向を十分に把握して取引を行っていきましょう。