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こんかいは都市計画法第58条の2(地区計画の届出)についてです。
市街地再開発事業の施行区域内の土地を有償で譲渡しようとする場合の制限についてです。
なんとなくわかっているようで、詳しく説明しようとすると理解できていないものです。
これらを詳細に理解するには、経験と知識が必要です。
しかしながら、どのような規定があるのか概要を理解しておけば、そのような物件に巡り合ったときに気づきが生まれます。
これが重要なのです。
内容を理解しておかないと、買主からの「ここで家が建てれるの!用途や大きさの建築はできるの?」との質問に正確に答えることができません。
この記事では、不動産取引における重要事項説明のうち「都市計画法第58条の2(地区計画の届出)」について解説しています。
不動産取引や建築設計において都市計画や建築基準法の制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。
建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。
それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。
1 都市計画法における重要事項説明事項とは?
重要事項説明では、都市計画法における規制として宅建業法施行令第3条第1項第1号に掲げる内容を説明する必要があります。
宅建業法施行令第3条第1項第1号(都市計画法:重要事項説明)
都市計画法第29条第1項及び第2項、第35条の2第1項、第41条第2項、第42条第1項、第43条第1項、第52条第1項、第52条の2第1項(同法第57条の3第1項において準用する場合を含む。)、第52条の3第2項及び第4項(これらの規定を同法第57条の4及び密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律第284条において準用する場合を含む。次項において同じ。)、第53条第1項、第57条第2項及び第4項、第58条第1項、第58条の2第1項及び第2項、第58条の3第1項、第65条第1項並びに第67条第1項及び第3項
建築基準法と比べると少ないですが、このうち都市計画や建築基準法に基づく指定や認可状況、条例などを調査し、該当する事項を説明することになります。
調査方法としては、都市計画課(法)や建築指導課(法)などを担当する窓口にて確認することとなります。
くれぐれも「どれが対象ですか?」などの尋ね方はやめましょう!
対象となる窓口にて確認して内容を理解し、説明が必要な事項を洗い出して整理するのが資格者の責務です。「役所がいったから。」では役割を果たしていません。
2 地区計画の届出対象
地区計画の届出が必要となるのは、次のとおりです。
- 再開発等促進区(地区整備計画等が定められたもの)
- 開発整備促進区(地区整備計画等が定められたもの)
- 地区整備計画が定められた地区計画
地区計画でも『地区整備計画』が定められていない場合は、届出の必要がありません。
地区整備計画とは、『建築物等の整備並びに土地の利用に関する計画』です。
よって、地区計画の中で定められる計画の一つが地区整備計画となります。
なお、地区整備計画の位置についても都市計画において定めることとされています。
ちなみ、この地区整備計画は原則として定めることとされていますが、特別の事情がある場合には定めなくても良いとされています(都市計画法第12条の5第7項)。
地区計画の詳細についてはコチラ>>
3 地区計画の届出が必要な行為
地区計画の届出が必要となる行為は、地区計画の区域内において建築物等の新築等を行う場合などです。
法律は、都市計画法第58条の2に定められており、また、法令では、届出が不要となる例外につても規定されています。
都市計画法第五十八条の二(建築等の届出等)地区計画の区域(再開発等促進区若しくは開発整備促進区(いずれも第十二条の五第五項第一号に規定する施設の配置及び規模が定められているものに限る。)又は地区整備計画が定められている区域に限る。)内において、土地の区画形質の変更、建築物の建築その他政令で定める行為を行おうとする者は、当該行為に着手する日の三十日前までに、国土交通省令で定めるところにより、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を市町村長に届け出なければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
二 非常災害のため必要な応急措置として行う行為
三 国又は地方公共団体が行う行為
四 都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為
五 第二十九条第一項の許可を要する行為その他政令で定める行為
2 前項の規定による届出をした者は、その届出に係る事項のうち国土交通省令で定める事項を変更しようとするときは、当該事項の変更に係る行為に着手する日の三十日前までに、国土交通省令で定めるところにより、その旨を市町村長に届け出なければならない。
3 市町村長は、第一項又は前項の規定による届出があつた場合において、その届出に係る行為が地区計画に適合しないと認めるときは、その届出をした者に対し、その届出に係る行為に関し設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告することができる。
4 市町村長は、前項の規定による勧告をした場合において、必要があると認めるときは、その勧告を受けた者に対し、土地に関する権利の処分についてのあつせんその他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
届出対象よりも例外的に届出が不要となる行為を覚える方が大切かと思います。
というのも、届出不要であれば、その分の事務手続きを省略できますから手戻りが少なくてすみます。
《届出が必要な行為(都市計画法第58条の2第1項)》
■土地の区画形質の変更
- 道路や公園、緑地、水路などの公共施設の新設、変更、廃止
- 農地から宅地へ転用(造成)、切土又は盛土による高さの変更など
■建築物の建築
- 建築物の新築、増築、改築、新築
- 工作物の建設(門や塀、柵、擁壁など)
■建築物の用途変更
- 用途変更後の建築物等が制限に適合しない場合(※用途等の制限が定められている地区計画内のみ。)
■建築物の意匠等の変更
- 建築物等の形態や色彩、意匠を変更する場合(※形態・色彩・意匠の制限が定められている地区計画内のみ)
■木竹の伐採 ※樹林地、草地等の保全に関する事項が定められている地区計画のみ
■物件の堆積 ※農地の土地の形質の変更等に関する事項が定められている地区計画のみ
4 届出が不要となる行為
次の行為については届出が不要となります。都市計画法第58条の2第1項”ただし書き”の部分がポイントです。
- 『通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの』
- 『非常災害のため必要な応急措置として行う行為』
- 『国又は地方公共団体が行う行為』
- 『都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為』
- 『第29条第1項の許可を要する行為その他政令で定める行為』
仮設建築物の建築や仮設工作物の建設、通常の管理に必要な木竹の伐採、国等による建築は届出が不要となります。
また、5号の政令で定める行為においては、建築基準法に基づき地区整備計画で定められた内容を条例化している場合のことで、建築確認申請が必要となる建築等であれば、その中で審査されることとなるため、届出は不要となります。
《届出が必要なもののうち、例外的に届出が不要となる行為》
■通常の管理行為、軽易な行為
①土地の区画形質の変更
仮設建築物の建築、仮設工作物の建設、既存建築物等の管理、農林漁業
②建築物の建設・工作物の建設・建築物の意匠等の変更
仮設建築物の建築、仮設工作物の建設、屋外広告物(表示面積1㎡以下、H≦3m)の建設、水道管・下水管等の工作物で地下に建設、建築物に附属する物干場・建築設備・空中線・旗竿の建設、農林漁業の物置・作業小屋
③建築物の用途の変更
仮設建築物の用途の変更、農林漁業の物置・作業小屋への変更
④木竹の伐採
除伐、間伐、整枝等木竹の保育、枯損・危険な木竹の伐採、自家生活用、仮植、測量・実地調査・施設保守の支障となる木竹の伐採
■非常災害のため必要な応急措置として行為
■国・地方公共団体が行う行為
■都市計画事業の施行として行う行為等
- 都市計画施設の管理予定者が都市計画に適合して行う行為
- 土地区画整理事業の施行として行う行為
- 市街地再開発事業の施行として行う行為
- 住宅街区整備事業の施行として行う行為
- 防災街区整備事業の施行として行う行為
■開発行為の許可を要する行為等
- 市街化調整区域内(開発許可を受けた区域外)での建築物の建築、工作物の建設、用途変更などの許可を要する行為(都市計画法第43条第1項許可)
- 地区計画の内容が建築条例化(都市計画法第68条の2)されている場合。※条例化されていない項目や一定の地区計画(再開発等促進区など)は従来どおり届出が必要となる。
- 地区計画等緑地保全条例の許可
- 地区計画の目的を達成する上で支障が少ない国土交通省令で定める行為(道路の新設、河川改良工事の施行、林道の開発、公園施設の設置など*省令第43条の7に規定)
次に、届出書の様式や添付書類の説明です。
5 地区計画の届出
5-1 様式
届出書の様式は、都市計画法施行規則第43条の9で定められており、『別記様式第11の2』を使用します。
なお、変更の届出の場合は『別記様式第11の3』を使用します。
こちらのページを参照ください。
令和3年1月1日より押印は廃止されています。
ただし、委任状の取り扱い(押印の有無)については自治体によって対応が異なりますので、届出の際には、事前に役所に確認しておきましょう。
5-2 提出部数
届出書の提出部数については、原則として一部です。
ただし、自治体によっては、建築確認申請のように二部提出(正本・副本)を求めている場合もあります。
一部提出の場合は、受付した証明を交付したり受付印を押して、その写を交付しているケースもありますが、自治体によって対応が異なるため、公式ホームページを確認するか、直接問合せを行うこととなります。
5-3 提出時期
届出書の提出は、行為着手の30日前までです。
この規定は法律で定められています。
行為に着手とは、建築物の建築であれば工事着手、宅地造成であれば造成工事への着手となります。
届出のため基本的には受理して手続きは完了です。
30日前を過ぎそうな場合は、窓口に相談をしておきましょう。
5-4 添付書類
添付書類は、都市計画法施行規則第43条の9に定められています。
行為の種類によって添付書類が異なるので注意してください。
必要な添付書類は次のとおりです。
■土地の区画形質の変更
- 土地の区域並びに区域内及び区域周辺の公共施設を表示する図面で縮尺1000分の1以上
- 設計図で縮尺100分の1以上
■建築物の建築、工作物の建設、建築物(工作物)の用途変更
- 敷地内の建築物又は工作物の位置を表示する図面で縮尺100分の1以上
- 都市緑地法第34条第2項に規定する建築物の緑化施設の位置を表示する図面(地区整備計画において建築物の緑化率の最低限度が定められている場合に限る。)で縮尺100分の1以上
- 2面以上の建築物又は工作物の立面図で縮尺50分の1以上
- 各階平面図で縮尺50分の1以上
■建築物又は工作物の形態又は意匠の変更
- 敷地内の建築物又は工作物の位置を表示する図面で縮尺100分の1以上
- 2面以上の立面図で縮尺50分の1以上
■木竹の伐採
- 土地の区域を表示する図面で縮尺1000分の1以上のもの
- 施行方法を明らかにする図面で縮尺100分の1以上のもの
■共通
- その他参考となるべき事項を記載した図書
敷地の一部が地区計画区域内の場合には、その範囲を配置図に明示する必要があるため、事前にその位置の確認を受けるようにしてみてください。
6 不適合用途の届出について
不適合建築物の届出については、次のように法律で規定されています。
都市計画法第58条の2第3項・第4項
3 市町村長は、第1項又は前項の規定による届出があつた場合において、その届出に係る行為が地区計画に適合しないと認めるときは、その届出をした者に対し、その届出に係る行為に関し設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告することができる。
4 市町村長は、前項の規定による勧告をした場合において、必要があると認めるときは、その勧告を受けた者に対し、土地に関する権利の処分についてのあつせんその他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
適合しないと認めるときは、「勧告することができる」と規定されています。「しなければならない」ではなくて「することができる」となっています。
勧告した場合には、必要がある場合に限り、土地の斡旋等を行うこととされています。
勧告される可能性はありますが、届出行為のため自治体は受理せざるを得ないということです。
7 まとめ
いかがでしたか?
地区計画は、地域で決めたルールですから、ルールに従うこと基本となっています。
仮に建築や売買でルールに従わない場合は、地域での信用を失いかねません。
地区計画がある場合は、土地の仲介業者は購入希望者に対して、その土地がどの「用途地域」に属するかとあわせて、制限についても必ず伝える義務があります。
少しでも疑問がある場合は、事前に都市計画の部署に確認し法チェックをしておきましょう。
不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。