今年も8月になって大雨が続きました。
近年、全国各地で水災害が頻発・激甚化しています。
21世紀末には、2000年頃と比べて降雨量が全国平均で1.1倍、洪水発生頻度が2倍になるとの試算もあります。
国としては、これまでのハード整備だけでは気候変動の影響には追い付かず、災害リスクの可視化やリスクからの低減・回避を目指して、建築・開発行為等の規制強化や河川・下水道整備、避難施設の整備に向けた法改正に方向性を切り替えました。
その動きは早く、国のスピードの速さに、驚いた自治体やコンサルの担当者も多いと思います。
また、不動産業を営まれる方にとってもどのような改正が行われるのか気になりますよね。
今回、関連する改正点のポイントまとめてみました!
1 改正される法律
https://www.mlit.go.jp/river/kasen/ryuiki_hoan/pdf/gaiyo.pdf
国交省が公表している『特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律』や関連資料読みはじめたのですが、多岐にわたる改正となっているので、理解するのは大変です。
改正される主要な法律は次のとおりです。
なお、この法律の改正に合わせて、関連する施行令(政令)や施行規則(省令)が改正されます。
この他にも関連する地方自治法や地方税法といった法律も改正される予定となっています。
改正の概要としては、次の4つに分類にされています。
イ 流域治水の計画・体制の強化(特定都市河川法関係)
*流域水害対策計画の対象を拡大(河川・下水等の管理者や市町村が共同で流域治水に取り組む計画)、流域水害対策に係る協議会の創設
ロ 氾濫をできるだけ防ぐための対策(河川法、下水道法、特定都市河川法、都市計画法、都市緑地法)
*利水ダムの事前放流の拡大を図る協議会の創設、下水道の対策強化、樋門等の操作ルール策定の義務付け、貯留機能保全区域の創設、グリーンインフラの活用、自治体・民間の雨水貯留浸透施設の整備支援
ハ 被害を減少させるための対策(特定都市河川法、都市計画法、防災集団移転特措法、建築基準法)
*災害レッドゾーン(津波被害防止区域)を創設し、特定都市河川流域内の住宅及び要配慮者施設の安全性を確認(許可制)、防災集団移転促進事業エリアの拡充、都市安全確保拠点施設(都市施設)の追加、地区計画の改正
ニ 被害の軽減、早期復旧・復興のための対策(水防法、土砂災害防止法、河川法)
*ハザードマップ作成を中小河川に拡大、要配慮者利用施設の避難計画・訓練に対する市町村の助言・勧告の追加、国の権限代行の対象を拡大(災害で堆積した土砂・準用河川)
この中で、氾濫をできるだけ防ぐための対策として「貯留機能保全区域」の創設が気になってしまいました。
■流域における雨水貯留対策の強化(国の施策抜粋)
- 貯留機能保全区域を創設し、沿川の保水・遊水機能を有する土地を確保
- 都市部の緑地を保全し、貯留浸透機能を有するグリーンインフラとして活用
- 認定制度、補助、税制特例により、自治体・民間の雨水貯留浸透施設の整備を支援
2 貯留機能保全区域とは
国の説明では、豪雨で氾濫するリスクが高い河川流域で貯水機能を持つ場所を整備し、住宅や福祉施設の建築を許可制とするなどの対策を進める。貯水対策として、農地など河川沿いの低地を「貯留機能保全区域」に指定。盛り土などの開発行為は事前の届け出を義務づける。氾濫が起きやすい河川の周辺地域に住宅や高齢者福祉施設などを建てる際は許可制とし、都道府県などが居室に浸水深以上の高さがあるかや洪水で倒壊しない強度かを確認する。
とあります。
3 まとめ
詳細の運用内容などについては、不明ですが指定する都道府県についても悩ましい事務になることは間違いないでしょう。
沿川の保水・遊水機能を有する土地を区域指定するといういかにも防災減災のために必要な説明ですが、所有者や営農者にとっては土地の価値に関わる問題です。
これまでの農業政策を否定することにもなりかねません。農林水産省は??
大雨や浸水被害が生じるときには、この地域に一時雨水を溜めますよというとです。
その時に、農作物に被害があった場合はどうなるのでしょうか?自治体が補償してくれるのでしょうか?
固定資産税はどうなるのでしょうか?
買収はしてくれないでしょうか?
罰則は?義務は?
まだまだ不明確な内容が多い状況です。
防災的な視点では重要な施策なのかもしれませんが、関係者の説得には時間がかかりそうです。
これまでと同じく制度はつくったので、あとは自治体が頑張ってという感じなのでしょうか?
これからの詳細については、追って整理していきたいと思います。