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【徹底分析】国の水災害に対する新たな制度!特定都市河川法:浸水被害防止区域とは?わかりやすく分析してみた。

OSSANです。

近頃の大雨で浸水被害のマスコミ報道等を目にします。

 

近頃は大雨が頻発・激甚化しており、排水ポンプや貯留施設のハード整備だけでは間に合わない状況のようです。

 

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ここ数年、国では、家を建てる土地の使い方に関するルールについても考えていかなければならないと言っています。

 

要するに、浸水しやすい土地には開発をすべきではない、どうしても利用するならば土地の使い方のルールを定めるというものです。

 

ここでは、そんな状況の中で新たに設けられた『浸水被害防止区域』について解説します。

 

「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律(特定都市河川法や水防法等の改正法案)」のうち、特定都市河川法に追加される『浸水被害防止区域』の解説です。

 

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国土交通省がまとめているイメージで浸水するエリアを指定し、エリアに住む人たちを集団移転事業のための区域設定に感じます。

 

1 浸水被害防止区域とは?

 浸水被害防止区域とは、大雨により洪水・雨水出水(内水)の氾濫・浸水が起きた際に居住者の生命に危害が生ずる恐れがある区域のことをいいます。

 

指定されるエリアは、都市部を流れる河川(特定都市河川法に基づき特定都市河川流域に指定された河川)のうち洪水または内水により建築物が損壊・浸水し住民等の生命・身体に危害が生ずる恐れがある区域です。

 

また、指定権者は都道府県知事となります。

指定にあたっては、流域水害対策計画が定められていることが前提条件となります。

 

法律では次ように書かれています。

 

特定都市河川法第56条第1項(抜粋)

都道府県知事は、流域水害対策計画に定められた第4条第2項第12号に掲げる浸水被害防止区域の指定の方針に基づき、かつ、当該流域水害対策計画に定められた都市浸水想定を踏まえ、特定都市河川流域のうち、洪水又は雨水出水が発生した場合には建築物が損壊し、又は浸水し、住民その他の者の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、一定の開発行為及び一定の建築物(居室を有するものに限る。)の建築又は用途の変更の制限をすべき土地の区域を、浸水被害防止区域として指定することができる。

  

要するには、全国の全ての河川に浸水被害防止区域が指定されることはありません!

↑ ココは重要

 

指定することができる河川は

  • 都市部の一級・二級河川
  • 著しい浸水被害が発生(又は発生の恐れ)
  • 堤防整備や河道掘削、ダム、遊水池の整備などを行うことが困難

の3つです。

 

全ての条件に合致している河川流域から浸水被害防止区域が指定されます。

 

基本的は大都市(三大都市圏や一部の指定都市)を流れる一級・二級河川を対象としていますが、自然的条件により浸水被害防止が困難なケース(市街化率が概ね5割以上、年平均水害被害額が10億円以上の要件あり)も特定都市河川流域に指定することが可能になるようです。

 

つまり、対策を講じることができないケースでやむを得ず指定するものですから、地方に対象を拡大する場合、一級河川沿いに高密度に都市が形成されている指定都市クラスをイメージされているようです。

 

なお、浸水被害防止区域は基準水位も公表されることとなっており、数十年に一度の高確率の内水・洪水ハザードが示されるものと思います。

※浸水被害防止区域の創設により、都市洪水想定区域と都市浸水想定区域は削除されます。

 

 

2 特定都市河川とは?

  • 都市部を流れる河川(市街化率が概ね5割以上)
  • 流域において著しい浸水被害が発生し、又はそのおそれがあること。(過去の実績又は想定される年平均水害被害額が10億円以上)
  • 河川又は洪水調節ダムの整備による浸水被害の防止が市街化の進展により困難

 

上記の3つに該当する場合に指定され、一級河川が含まれる場合は国土交通大臣が指定(これ以外は都道府県知事)します。

 

イメージでは、大都市を流れる河川において指定されています。

 

なお、今回の改正案においては、特定都市河川の定義に、『都市部を流れる河川が接続する河川の状況若しくは当該都市部を流れる河川の周辺の地形その他の自然的条件の特殊性』という文言が追加され、”自然的条件”により浸水被害の防止が困難な場合には、指定することが可能となります。

 

 

自然的条件がどのような基準となるかは、国の資料によると全国の河川に拡大していくことを考えているようですから、地方で堤防整備や河道掘削も行われていないような地域は対象外になる可能性があります。

 

 

3 流域水害対策計画とは

浸水被害防止区域の指定の前提となる流域水害対策計画とは、総合的な浸水被害対策を推進するために特定都市河川の河川管理者、特定都市下水道の下水道管理者、関係都道府県知事及び市町村が共同で策定するものです。

 

今回の改正により、「浸水被害防止区域の指定の方針」を定められることとなり、想定する降雨量と浸水深等から区域指定の方針が示されることになります。

 

 

4 都市浸水想定とは

都市浸水想定については、流域水害対策計画において、都市浸水の発生を防ぐべき目標となる降雨が生じた場合に都市浸水が想定される区域及び浸水した場合に想定される水深のことです。

 

なお、都市浸水とは、今回の法改正より、洪水と雨水出水(内水)に分離されました。

従来の内水のみとしていた都市浸水想定とは考え方が違う(洪水が追加)ので注意が必要です。

 

つまり既往最大規模(これまでに流域で降った最大規模の雨量)に対しての浸水想定となります。

 

 

5 浸水被害防止区域の指定により制限される行為

浸水被害防止区域の指定により、災害レッドゾーンとして位置付けられ、開発行為と建築行為が制限されます。

 

浸水被害防止区域の指定により明示される内容は、指定区域と基準水位(都市浸水想定エリア)等となっています。

はじめに開発行為に対する制限についての解説です。

 

5-1 特定開発行為の制限(法第57条第1項許可)

浸水被害防止区域内において、開発行為のうち政令で定める土地の形質の変更を伴うもので開発行為を行う土地の区域内において建築が予定されている建築物の用途が制限用途であるものについては、事前に都道府県知事(指定都市及び中核市の場合にはその長)の許可が必要となります。

 

特定都市河川法第57条第1項

浸水被害防止区域内において、開発行為のうち政令で定める土地の形質の変更を伴うものであって当該開発行為をする土地の区 域内において建築が予定されている建築物(以下「予定建築物」とい う。)の用途が制限用途であるもの(以下「特定開発行為」という。)をする者は、あらかじめ、当該特定開発行為をする土地の区域に係 る都道府県(当該土地の区域が指定都市等の区域内にある場合にあっ ては、当該指定都市等)の長(第59条から第65条までにおい て「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。

  

なお、開発行為完了後の地盤面のうち、地盤面の高さが基準水位(都市浸水想定エリアに指定されるもの)以上である場合はその区域を公告することとなっています。

 

 

5-2 制限用途・許可基準とは?(法第57条第2項第1・2・3号)

制限用途とは、特定都市河川法第57条第2項において、

1号:住宅(自己居住用を除くもの。共同住宅・長屋・建売住宅)

2号:高齢者・障害者・乳幼児等の特に防災上の配慮を要する者が利用する社会福祉施設・学校・医療施設(政令で定めるもの。政令は現時点で未定)

3号:市町村条例で指定する施設

となっています。

 

つまり、住宅(自己用を除く)、社会福祉施設、学校・医療施設が制限用途となり、この制限用途を予定する建築物を建築する場合の開発行為については特定都市河川法に基づく許可が必要となります。

 

許可にあたっては、許可基準(特定都市河川法第59条)が設けられており、『特定開発行為に関する工事の計画が、擁壁の設置その他の洪水又は雨水出水が発生した場合における特定開発区域内の土地の安全上必要な措置を国土交通省令(現時点では未定)で定める技術的基準に従い講ずるものであり、かつ、その申請の手続がこの法律及びこの法律に基づく命令の規定に違反していないと認めるとき。』とされています。

 

ですので、安全上必要な措置(省令で定められる技術的基準)が講じられれば許可されます。

基準水位と関係してくるでしょうから、宅地が浸水による外力などに対して安全が確保されていれば許可されます。

 

 

5-3 特定建築行為の制限(法第66条第1項許可)

特定建築行為とは、浸水被害防止区域内において、住宅の用途に供する建築物、法第57条第2項第2号(社会福祉施設)若しくは第3号(市町村条例で定める施設)に掲げる用途の建築物の建築(既存の建築物の用途を変更して住宅の用途に供する建築物又は同項第2号若しくは第3号に掲げる用途の建築物とすることを含む。

 

とされており、建築行為を行う前に都道府県知事(指定都市及び中核市の場合にはその長)の許可を受けなければならないとされています。

*特定開発行為と異なり、自己用の住宅も含まれます。

 

特定都市河川法第66条第1項

浸水被害防止区域内において、住宅の用途に供する建築物又は第57条第2項第2号若しくは第3号に掲げる用途の建築物の 建築(既存の建築物の用途を変更して住宅の用途に供する建築物又は 同項第2号若しくは第3号に掲げる用途の建築物とすることを含む。 以下「特定建築行為」という。)をする者は、あらかじめ、当該特定 建築行為をする土地の区域に係る都道府県(当該土地の区域が指定都市等の区域内にある場合にあっては、当該指定都市等)の長(第68条から第71条までにおいて「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。

  

なお、許可を受けないと工事着手することができないとされています。

 

法律上は、建築基準関係規定とみなすと書かれていないので、建築確認申請との関係性は不明です(特定都市河川法第8条は建築基準法施行令に建築基準関係規定として記載されているので、施行令改正により関係規定とする考えもなくはないかもです。)

 

こちらも開発行為同様に許可基準(法第68条)が設けられており、『都道府県知事等は、住宅の用途に供する建築物又は第57条第2項第2号に掲げる用途の建築物について第66条の許可の申請があったときは、当該建築物が次に掲げる基準に適合するものであり、かつ、その申請の手続がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していないと認めるとき』とされており、

 

  • 洪水又は雨水出水に対して安全な構造のものとして国土交通省令で定める技術的基準に適合するものであること。
  • 次のイ又はロに掲げる建築物の区分に応じ、当該イ又はロに定める居室の床面の高さ(居室の構造その他の事由を勘案して都道府県知事等が洪水又は雨水出水に対して安全であると認める場合にあっては、当該居室の床面の高さに都道府県知事等が当該居室について指定する高さを加えた高さ)が基準水位以上であること。

イ 住宅の用途に供する建築物 政令で定める居室

ロ 第57条第2項第2号に掲げる用途の建築物 同号の政令で定める用途ごとに政令で定める居室

 

とされています。

 

 

6 勧告制度

法第76条の規定により、都道府県知事は、浸水被害防止区域からの移転やリスクを手減するための勧告を行うことができるようになっています。なお、都道府県知事は、勧告を行う場合に、必要があると認めたときは、土地の取得について斡旋等を行うこととされています。

 

まとめ

いかがですか?

これまでは大都市の河川の浸水を対象にしてきた区域設定ですが、近頃の大雨を受けて地方の河川も対象に指定して浸水対策を事業を行うための区域のようです。

まだ、出来たばかりの改正なので細かい運用の部分は注意深く見ていく必要があります。

この区域設定がされた場合、その区域内の土地利用はどう制限されるのか。資産価値はどうなるのか不透明な部分が多く、所有者の理解には十分な説明と説得が必要に感じます。