「特定用途誘導地区」を全国で指定した都市は徐々に増えてきていますが、平成26年の都市再生特別措置法の改正により設けられた新しい土地利用制度で、どちらかというと緩和型の都市計画制度です。
こんにちはOSSANです!!
今回は、「特定用途誘導地区」の解説していきます。
比較的新しい制度なので、まだまだ実績はすくないようですが、宅建士の試験でも出題されるくらい重要な都市計画の制度になっています。
1 「特定用途誘導地区」の定義
都市計画法でいう「地域地区」になります。
[都市計画法第8条第1項第四号の2]
都市再生特別措置法(平成14年法律第22号)第36条第1項の規定による都市再生特別地区、同法第89条の規定による居住調整地域又は同法第109条第1項の規定による
特定用途誘導地区
都市計画法第8条の規定により、都市再生特別措置法第109条第1項に規定されているものであることがわかります。
[都市再生特別措置法第109条第1項]
立地適正化計画に記載された都市機能誘導区域のうち、当該都市機能誘導区域に係る誘導施設を有する建築物の建築を誘導する必要があると認められる区域(都市計画法第8条第1項第一号に規定する用途地域(同号に掲げる工業専用地域を除く。)が定められている区域に限る。)については、都市計画に、特定用途誘導地区を定めることができる。
「都市計画運用指針」も確認すると、
[都市計画運用指針 抜粋]
特定用途誘導地区は、都市機能誘導区域内において、誘導施設に限定して容積率や用途規制の緩和を行う一方、それ以外の建築物については従前通りの規制を適用することにより、誘導施設を有する建築物の建築を誘導することを目的とする地域地区である。
本制度は、誘導施設について、新築・建替え等の個別具体の構想がない段階で、特定用途誘導地区に当該施設を誘導したいという趣旨を事前明示するために設定することが想定されるが、個別具体の構想が決まってから当該地区を設定することも可能である。後者については、例えば、老朽化した医療施設や福祉施設の建替え、増築や新築の際に本制度を活用することが想定される。
なお、用途地域やそれを補完する特別用途地区、地区計画等は、建築物等の用途に応じて、単に建築を禁止又は許容するものであるが、今後、人口減少社会を迎え、活発な建築 活動も見込みにくくなる中で、用途地域等により、建築物の用途に応じて建築を禁止するだけでなく、民間の建築投資を必要な場所に誘導することが重要であり、こうした観点からも、特定用途誘導地区の活用が効果的である。
また、用途地域内において、指定容積率は、建築物の用途にかかわらず、すべての建築物について一律に適用されるものであるのに対し、特定用途誘導地区内において、誘導施設を有する建築物については、指定容積率とは別に定められた容積率の最高限度が適用される。
都市計画運用指針の中を簡単に整理する!
- 立地適正化計画における誘導施設を有する建築を誘導することが目的
- 個別具体の構想の有無を問わず区域を設定することが可能
- 民間の建築投資を必要な場所に誘導することに焦点。
- 誘導施設については、指定容積率とは別に定められた容積率の最高限度が適用される。
という感じです。
2 「特定用途誘導地区」を指定可能な区域
指定できる区域は、都市機能誘導区域内 かつ工業専用地域を除く用途地域
です。
これ以外の用途地域内では指定できません。
なお、都市機能誘導区域とは、医療施設、福祉施設、商業施設その他の都市の居住者の共同の福祉又は利便のため必要な施設で、都市機能の増進に著しく寄与するもの誘導を図る区域のことです。
要約すると、都市居住者の日常生活等に必要な機能の誘導を図る区域のこと。
3 「都市計画」で定める内容
都市計画で定める内容は、都市計画法ではなく都市再生特別措置法第109条第2項に規定されています。
[都市再生特別措置法第109条第2項]
特定用途誘導地区に関する都市計画には、都市計画法第8条第3項第一号及び第三号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 建築物等の誘導すべき用途及びその全部又は一部を当該用途に供する建築物の容積率の最高限度
二 当該地区における土地の合理的かつ健全な高度利用を図るため必要な場合にあっては、建築物の容積率の最低限度及び建築物の建築面積の最低限度
三 当該地区における市街地の環境を確保するため必要な場合にあっては、建築物の高さの最高限度
まとめると次のようになります。
都市計画で定める内容
地域地区の種類:必須
位 置:必須
区 域 :必須
建築物の容積率の最高限度:必須
建築物の容積率の最低限度:高度利用を図る場合
建築物の建築面積の最低限度:高度利用を図る場合
建築物の高さの最高限度:市街地の環境確保として必要な場合
となっています。
4 「特定用途誘導地区」を定めることができる者
市町村になります。
(都市計画を定める者)
第15条 次に掲げる都市計画は都道府県が、その他の都市計画は市町村が定める。
一 〜 四 (略)
四 第8条第1項第四号の二、第9号から第13号まで及び第16号に掲げる地域地区(同項第四号の二に掲げる地区にあつては都市再生特別措置法第36条第1項の規定による都市再生特別地区に、第八条第一項第九号に掲げる地区にあつては港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第二条第二項の国際戦略港湾、国際拠点港湾又は重要港湾に係るものに、第八条第一項第十二号に掲げる地区にあつては都市緑地法第五条の規定による緑地保全地域(二以上の市町村の区域にわたるものに限る。)、首都圏近郊緑地保全法(昭和四十一年法律第百一号)第四条第二項第三号の近郊緑地特別保全地区及び近畿圏の保全区域の整備に関する法律(昭和四十二年法律第百三号)第六条第二項の近郊緑地特別保全地区に限る。)に関する都市計画
都市計画法第8条第1項第四号の二に、都市再生特別措置法に規定する、「居住調整地域」、「都市再生特別地区」、「特定用途誘導地区」が規定されていますが、カッコ書きの部分で、「都市再生特別地区」に限るとされています。
立地適正化計画は市町村が策定し、公表する計画ですからね。
5 その他、建築基準法との関係
建築基準法との関係で重要なポイントがあります。
[建築基準法第60条の3第3項]
特定用途誘導地区内においては、地方公共団体は、その地区の指定の目的のために必要と認める場合においては、国土交通大臣の承認を得て、条例で、第48条第1項から第13項までの規定による制限を緩和することができる。
大臣承認を得れば、用途地域内の制限を緩和することが可能です。(自治体の条例化は必須)
今回は、特定用途誘導地区について解説しました。
今後の都市づくりでは重要なツールの一つになってくる可能性が高い都市計画ですので、この機会に知っておくことは良いことだと思います。