こんにちは!OSSANです。
今回は、令和2年9月7日に施行された、改正都市計画法及び都市再生法の中から、地域地区の仲間となった『居住環境向上用途誘導地区』の説明です。
資格試験の場合は、今年度が初めての年になります。
内容的には、特に地方都市における市街地再生と強く関係してくる内容です。
これからの不動産の知識として知っていて損はないと思います。
1 法律上の定義
まずは法律の定義です。
法律読まずに理解しようとする方がいますが、ちゃんと法律からみましょうね!
都市計画法第8条における記載
【都市計画法第8条第1項第四の2】
都市再生特別措置法第36条第1項の規定による都市再生特別地区、同法第89条の規定による居住調整地域、同法第94条の2第1項の規定による居住環境向上用途誘導地区又は同法第109条第1項の規定による特定用途誘導地区
上記となり、都市計画の内容については、都市再生法第94条の2第1項に規定されることになります。
なお、この『居住環境向上用途誘導地区』の都市計画決定権者は、市町村です。市町村の利害に関係する内容だからですね。
では、都市再生特別措置法第94条の2第1項の内容をみていきたいと思います。
都市再生特別措置法
都市再生特別措置法第94条の2第1項では次のように規定されています。
▶️居住環境向上施設を有する建築物の建築を誘導する必要があると認められる区域
[都市再生特別措置法第94条の2第1項]
立地適正化計画に記載された居住誘導区域のうち 、当該居住誘導区域に係る居住環境向上施設を有する建築物の建築を誘導する必要があると認められる区域(都市計画法第8条第1項第一号に規定する用途地域(同号に掲げる工業専用地域を除く。第109条第1項において同じ。)が定められている区域に限る。)については、都市計画に、居住環境向上用途誘導地区を定めることができる。
この地区ですが、居住誘導区域の中で定めるものでして、ある特定用途の誘導を目的して容積率の緩和などが行うことができる地区です。都市計画運用指針では次のように書かれています。
居住環境向上用途誘導地区は、居住誘導区域内において、居住環境向上施設に限定して用途規制や容積率の緩和を行う一方、それ以外の建築物に ついては従前通りの規制を適用することにより、居住環境向上施設を有する建築物の建築を誘導することを目的とする地域地区である。
※出典:都市計画運用指針
居住環境向上施設とは
この施設は、
病院、店舗その他の都市の居住者の日常生活に必要な施設であって、居住環境の向上に資するもの
と都市再生特別措置法第81条第5項に規定されています。
上記が法律なのですが、もうちょっと具体的な用途でいうと国の方では、医療施設や日用品を扱う比較的小規模な店舗、コワーキング施設などを想定しているようです。
居住誘導区域内でも第一種低層住居専用地域などの住宅地ですと、次の施設のうち診療所以外は建築することができません。
住宅地での日常生活に必要な施設の建築の建築や建て替えをやりやすくすることで、立地適正化計画(コンパクトシティの形成)の実効性を高めようとしているのです 。
地域住民を対象とした比較的小規模な病院・診療所等の医療施設
日用品を扱う比較的小規模なスーパーマーケット等の店舗
専ら近隣に居住する者の利用に供する事務所(コワーキング施設)
※出典:都市計画運用指針(国土交通省)
従来ですと建築基準法第48条のただし書きや特別用途地区などを活用して、難しい手続きを経て例外的に認めてきたようなものです。
簡単には、『コンパクトシティの形成に必要不可欠な居住の誘導を図る居住誘導区域に限定した用途の緩和を行うことができるようにしたよ!』って感じです。
特定用途誘導地区という似たような内容の地域地区もありますので違いに注意しましょう!
2 都市計画で定めることができる内容
都市計画で定める内容は、都市再生特別措置法第94条の2第2項に規定されていて、ポイントは、都市計画法第8条第3項第一号及び第三号と都市再生法第94条の2第2項各号です。
【都市再生特別措置法第94条の2第2項】
居住環境向上用途誘導地区に関する都市計画には、都市計画法第8条第3項第一号及び第三号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 建築物等の誘導すべき用途及びその全部又は一部を当該用途に供する建築物の容積率の最高限度
二 当該地区における市街地の環境を確保するため必要な場合にあっては、建築物の建蔽率の最高限度、壁面の位置の制限及び建築物の高さの最高限度
まとめるとこんな感じです。
①地域地区(居住環境向上用途誘導地区)の種類
②位置
③区域
④都市計画の面積
⑤建築物の用途
⑥容積率の最高限度
⑦建蔽率の最高限度
⑧壁面の位置の制限
⑨建築物の高さの最高限度
3 居住環境向上用途誘導地区と建築基準法
次に建築基準法の関係についてみていきます。
建築基準法においては、都市計画で定められた内容についての制限が規定されます。
建築基準法第52条第1項第六号と同法第60条の2の2第1項に制限が追加されましたので、この規定を確認しておけばOKです。
容積率:誘導すべき用途として定められた用途に供するものについては、都市計画で定められた容積率以下
建蔽率:都市計画で定められた最高限度以下。公益上必要な建築物は適用除外(一部の公益上必要な建築物は、建築審査会の同意を得て特定行政庁の許可)
壁面の位置の制限:建築物の壁or柱は、都市計画で定められた壁面の位置の制限に反してはならない(地盤面下のものや歩廊等を除く) 公益上必要な建築物は適用除外
絶対高さ:最高高さは、都市計画で定められた最高限度以下。特定行政庁が用途・構造でやむを得ないとして許可したものを除く(建築審査会の同意が必要)
用途制限の緩和:条例により用途地域の緩和が可能(国土交通大臣承認が必要)
いますぐに居住環境向上用途誘導地区を指定する自治体はないでしょうが、試験問題とかには出題されてもおかしくはありません。
建築士や宅建士になりたい方は、近年の動向として確認しておいてはいかがでしょうか。
ということで以上となります。参考となれば幸いです。