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不動産を売買する上で、その物件の情報を早い段階で調査しておく必要があります。
買主が物件を探している段階で、「この不動産にはどのような建物が建てられるのか?」と考えるからです。
不動産の調査の中でも、水道・電気・ガス・下水道などライフラインの調査は非常に重要です。不動産売買における重要事項説明の項目にも含まれています。
不動産の売買において土地利用の内容を説明する際には正しい根拠を正確に売主・買主に伝える必要があります。
建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。
それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。
住宅からの下水には、トイレ、台所や風呂・雨水があります。下水道とは、下水を集めて流す配管と処理施設のことをいいます。
ここでは、下水道の配管調査方法についてわかりやすく説明します。
1 重要事項説明書に記載されている下水道の調査
こちらが重要事項説明書に記載されている項目になります。
記載項目として、直ちに利用可能な施設、配管等の状況、整備予定・負担金の項目があります。
1-1 直ちに利用可能な施設
まずは、汚水・雑排水・雨水で「直ちに利用可能な施設」として利用できる下水道が、公共下水だった場合です。
下水の方式には2つあり、汚水(トイレ)、雑排水(風呂・台所・洗面所)、雨水の3つを一緒に流す方法を合流式、雨水のみ分けて流す方法を分流式といいます。
合流式:汚水・雑排水・雨水の全てを宅地内で合流させ、1本の下水管に流し込んで、下水処理場へ流して浄化。
分流式:汚水・雑排水は下水処理場へ、雨水のみ分けて排水。
雨水の排水方法としては、主に次の3種類があり、エリアごとに行政から指導されます。
①宅内浸透(たくないしんとう):敷地内に浸透マスなどを設置して、直接地中へ浸透させて地下水とする方法
②側溝排水(そっこうはいすい):道路のL字溝またはU字溝へ流し、川や海へ排水する方法
③雨水専用管(うすいせんようかん):雨水専用の管へ流し、川や海へ排水する方法
雨水の項目で「直ちに利用可能な施設」として選択するのは、次にあてはまるものになります。
- 合流式の場合:公共下水
- 分流式で側溝排水、雨水専用管の場合:側溝等
- 分流式で宅内浸透の場合:浸透
宅内汚水マス公共下水道が整備されると原則1宅地に1つ、道路部分に公共汚水枡が設置されます。道路部分ではなく、敷地内に設置されていることもあります。この公共マスと宅内汚水マス(接続マス)とをつなげることで下水が排水されます。
調査の際、現地で宅内汚水マスのフタをあけ、公共マスへ流れているかなど排水方向を確認する必要があります。
1-2 他人管埋設と他人地利用
配管が他人の土地を通っており、その土地の所有者が変わって新たに使う場合に制限があったり、逆に他の土地への配管が地下を通っているため、建築に制限が生じる場合があります。
配管のトラブルの多くが他人管埋設・他人地利用によるものです。売主や現地、水道局での聞き取り調査(ヒアリング)や取得資料を付け合わせて、十分な調査が必要です。
このような場合、直接引込管を引き直してもらうのが一番良いのですが、費用がかかるため、隣地間のトラブルにつながります。引き直してもらうこともあれば、将来再建築する際に管を引き直すことの同意書を取り付けることもあります。
また、現地では公共マス・宅地接続マスの位置を確認しましょう。次ようなケースは、他人管埋設や他人地利用の可能性があります。
- 前面道路に公共マスが2つある。
- 宅内接続マスが2つある。
- 公共マスが前面道路に無く、宅内接続マスが宅地の別の箇所にある。
- 手前側の宅地に宅内接続マスはなく、旗竿地の路地状部分に宅内接続マスが2つある。
- 公共マスも宅内接続マスもない。
- 公共マスはあるが宅内接続マスがなく、個別浄化槽らしきフタがある。
1-3 配管等の状況
配管等の状況の項目は重要で、調査が必要です。下水道管については、対象物件の敷地内配管・前面道路配管を調査します。担当部局の窓口で確認し、現地と照らし合わせます。
①前面道路の埋設管の位置
②私設管の有無(管の所有者について)
水道管は所有者によって次の2種類にわけることができます。
- 公設管(自治体が所有し、維持・管理する管)
- 私設管(個人で埋設したため個人が所有し、個人で維持・管理する管)
私設管を利用する場合、設置者の承諾を得る必要があります。
1-4 整備予定金・負担金
下水道管を引く(敷設)予定がある場合や私設管の場合は、その時期と費用が発生するか(負担金の有無)について、こちらの項目で記載します。
2 下水道の調査方法
現在の主流は分流式です。調査物件が合流式の場合は、雨水の排水方法についてなにか指導がないかを確認しましょう。
助成金の制度を設けて、雨水浸透施設の設置の指導をしたり、敷地面積や建築延床面積の規模、地域によっては、雨水を合流式の公共下水への排水をみとめていない行政もあります。
下水道管理図面下水道の配管調査では、下水道管理図面(下水道台帳)を取得し、前面道路配管(汚水管・雨水管)を確認します。
下水道管理図面は、通常公設管しか記載されていないため、私設管は、現地のマンホールで確認します。公認マンホールなら公設管、私設マンホールなら私設管があると予想し、水道局でも確認します。公設管の公認マンホールは、管理している自治体のマークが記載されたり、彫られています。それに対して、私設管のマンホールには、自治体のマークはなく、単なるセメントのふたであることが多いです。私設管の場合は、現地のマンホールやマスで引込みを確認します。
3 浄化槽や汲取式の調査のポイント
浄化槽とは、微生物の働きなどを利用して汚水を浄化し、きれいな水にして放流するための施設のことです。汚水・雑排水で「直ちに利用可能な施設」として利用できる下水道が、公共下水以外(公共下水処理区域外)の場合は、浄化槽(じょうかそう)での処理が一般的ですが、現地でどのように処理しているかを調査しなければなりません。
①集中浄化槽:複数の宅地の下水を1箇所に集めて浄化する施設で、分譲地などで見られる。
②個別浄化槽:各戸の敷地内に浄化槽が埋設され、そこで下水が浄化されます。浄化槽の種類は、合併浄化槽(汚水・雑排水を一緒に浄化して流す)あります。浄化された水の多くは、宅内浸透か側溝へ排水されて川や海へ放流されます。浄化槽は、定期的に清掃する必要があり費用が発生します。売却の際、売主は残金決済・引き渡しの時点で浄化槽内を清掃しておく必要があることがあります。
浄化槽の場合、浄化槽で処理した後の上澄み水の処理方法(放流先など)が指定されている場合があるので、役所の下水道課や環境課、水道局などで確認します。また、自治体独自の指導がないかも確認します。
③汲取式(くみとりしき):汲取式では、定期的にバキュームカーで汲み取りを実施するため、費用が発生します。売却の際は、個別浄化槽と同様、売主は残金決済・引渡しの時点で清掃する必要があります。また、浄化槽設置の義務があるかについて確認します。
浄化槽や汲取式だった場合、役所で公共下水道の整備予定を確認しましょう。もし今後、下水道の整備予定がある場合には受益者負担金についても調べておきましょう。
3-1受益者負担金制度
公共下水の整備により、利便性・快適性が向上し、その結果土地の資産価値が増加します。その際に、公共下水の建設費を一部負担してもらう制度のことです。敷地面積に応じて負担金が決まり、一括や分割で納付します。
3-2 公共下水処理区域内で、個別浄化槽のままの建物について
下水道法では、「公共下水が整備されればすみやかに接続工事を実施するように」と指導されていますが、何らかの事情により、接続工事を実施せず、未だに個別浄化槽を使用している建物があります。
前面道路のマンホールや公共接続マスの有無だけで、公共下水と判断しないようにしましょう。
売主に直接確認したり、建物の近くで浄化槽設備の機器(ブロアー)が設置・稼働していないか確認したり、あるいは下水道共用開始時期(処理告示年月日)と新築時期とを照らし合わせる方法などがあります。もし、このような状況で、個別浄化槽を利用していて売買する場合、再建築の際には、公共下水への接続に加えて浄化槽撤去の費用が発生する旨を買主に説明しなければなりません。
■まとめ
いかがでしたか?
不動産調査の基礎となる『下水道の配管調査方法』についての説明でした。
物件の仲介を行うためには、土地利用の条件を的確に調査し、売主・買主に適切に把握してもらう必要があります。
物件の売買を実施・仲介するにあたっては、宅地建物取引士として重要な要素となってきます。
調査した結果、売買の対象となるについては、十分に説明し理解のうえ、契約を行う必要があります。
少しでも疑問がある場合は、事前に十分に確認しチェックをしておきましょう。
不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。