「都市計画公園は、都市緑地法ですか?」との質問を受けますがまったく別です。
都市緑地法には、
都市における緑地の保全及び緑化の推進に関し必要な事項を定めることにより、都市公園法その他の都市における自然的環境の整備を目的とする法律と相まって、良好な都市環境の形成を図り、もつて健康で文化的な都市生活の確保に寄与することを目的
とあります。
都市緑地法による緑地や緑化の推進をするための手法の一つが「都市計画公園」なのです。
この目的を果たすために、いろんな規制がありますので漏れがないように調査が必要です。
今回は、宅建業法の重要事項説明において規定されている『都市緑地法』について、わかりやすく解説します。
- 1 重要事項説明が必要な事項(都市緑地法)
- 2 緑地保全地域【都市緑地法第8条第1項(緑地保全地域における行為の届出等)】
- 3 特別緑地保全地域
- 4 地区計画等緑地保全条例
- 5 管理協定区域
- 6緑化地域
- 7 地区計画等緑化率条例
- 8 緑地協定
- 9 まとめ
1 重要事項説明が必要な事項(都市緑地法)
都市緑地法で重要事項説明の説明が必要となる対象は次のとおりです。
ほとんど対象となる物件はないと思いますが数が意外と多いのがわかります。
今後の法改正により多くなる可能性もありますので注意しておきましょう。
第8条第1項:緑地保全地域における行為の届出
第14条第1項:特別緑地保全地区における行為の制限
第20条第1項:地区計画等緑地保全条例
第35条第1項・第2項・第4項:緑化地域に関する規定
第36条:一団地認定を受けた敷地の緑化率
第39条第1項:地区計画等の区域内における緑化率規制
第50条:緑地協定
第51条第5項:緑地協定
第54条第4項:緑地協定
2 緑地保全地域【都市緑地法第8条第1項(緑地保全地域における行為の届出等)】
都市緑地法第8条第1項
緑地保全地域(特別緑地保全地区及び第20条第2項に規定する地区計画等緑地保全条例により制限を受ける区域を除く。以下この条及び第6章第2節において同じ。)内において、次に掲げる行為をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、都道府県知事等にその旨を届け出なければならない。
一 建築物その他の工作物の新築、改築又は増築
二 宅地の造成、土地の開墾、土石の採取、鉱物の掘採その他の土地の形質の変更
三 木竹の伐採
四 水面の埋立て又は干拓
法律第8条第1項の規定は、都市計画で定める『緑地保全地域(都市計画法第8条第1項第12号)』内では、建築物の新築や宅地の造成を行う場合に事前に、都道府県知事(市の区域内は市長)に対して届出が必要となります。
都市計画の決定権者は市町村です。
都市緑地法第5条では緑地保全地域は、次のような地域に指定されます。
指定されている地域の取引の場合には、次の行為を行う場合に都道府県知事(市の区域は市長)に届出が必要となります。
- 建築物その他の工作物の新築、改築又は増築
- 宅地の造成、土地の開墾、土石の採取、鉱物の掘採その他の土地の形質の変更
- 木竹の伐採
- 水面の埋立て又は干拓
- 緑地の保全に影響を及ぼすおそれのある行為(屋外における土石、廃棄物・再生資源の堆積)
施行令第4条では、届出が不要となる行為を定めています。
緑地保全地域内での取引となった場合には届出が不要となる行為もあわせて説明しましょう。
3 特別緑地保全地域
都市緑地法第14条第1項
(特別緑地保全地区における行為の制限)
特別緑地保全地区内においては、次に掲げる行為は、都道府県知事等の許可を受けなければ、してはならない。ただし、公益性が特に高いと認められる事業の実施に係る行為のうち当該緑地の保全上著しい支障を及ぼすおそれがないと認められるもので政令で定めるもの、当該特別緑地保全地区に関する都市計画が定められた際既に着手していた行為又は非常災害のため必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。
一 建築物その他の工作物の新築、改築又は増築
二 宅地の造成、土地の開墾、土石の採取、鉱物の掘採その他の土地の形質の変更
三 木竹の伐採
四 水面の埋立て又は干拓
都市計画で定められる特別緑地保全地域は、緑地保全地域の届出制と異なり都道府県知事等の許可を受けなければ、建築物の新築や宅地造成等の行為に着手することはできません。
樹木等を保全することが目的であり、指定要件は次のように定められています。
- 無秩序な市街地化の防止、公害又は災害の防止等のため必要な遮断地帯、緩衝地帯又は避難地帯として適切な位置、規模及び形態を有するもの
- 神社、寺院等の建造物、遺跡等と一体となつて、又は伝承若しくは風俗慣習と結びついて当該地域において伝統的又は文化的意義を有するもの
- 次のいずれかに該当し、かつ、当該地域の住民の健全な生活環境を確保するため必要なもの
- 風致又は景観が優れていること
- 動植物の生息地又は生育地として適正に保全する必要があること
このような土地を所有し続けるメリットがあまりないため、所有者から相談を受けた場合には、自治体に相談しておく方がよいでしょう。
4 地区計画等緑地保全条例
都市緑地法第20条第1項(抜粋)
(地区計画等緑地保全条例)
市町村は、地区計画等の区域(地区整備計画、防災街区整備地区整備計画、沿道地区整備計画、若しくは集落地区整備計画において、現に存する樹林地、草地等(緑地であるものに限る。次項において同じ。)で良好な居住環境を確保するため必要なものの保全に関する事項が定められている区域又は歴史的風致維持向上地区整備計画において、現に存する樹林地、草地その他の緑地で歴史的風致の維持及び向上を図るとともに、良好な居住環境を確保するために必要なものの保全に関する事項が定められている区域(同項において「歴史的風致維持向上地区整備計画区域」という。)に限り、特別緑地保全地区を除く。)内において、条例で、当該区域内における第14条第1項各号に掲げる行為について、市町村長の許可を受けなければならないこととすることができる。
地区計画等緑地保全条例は、地区計画という都市計画手法を活用して、その計画区域内において特別緑地保全地域内の行為を条例により市町村長の許可制にするものです。
不動産取引においては、地区計画条例の内容を説明することになります。
地区計画条例の内容とは、地区計画と地区整備計画、又、地区計画に係る条例のことです。特別緑地保全地域内の行為に関することが定められているはずです。
5 管理協定区域
都市緑地法第29条
(管理協定の効力)
第27条(前条において準用する場合を含む。)の規定による公告のあつた管理協定は、その公告のあつた後において当該管理協定区域内の土地の所有者等となつた者に対しても、その効力があるものとする。
管理協定とは、緑地保全地域や特別緑地保全地域内の樹木等の管理について、所有者と自治体・緑地保全・緑化推進法人が管理に関する協定を締結し、所有者にかわりに保全行為を行うものです。
重要事項説明が必要な理由として、管理協定が締結された後に所有者となった者にもその効力が引き続き及ぶとする承継効(都市緑地法第29条)に関する内容だからです。
6緑化地域
緑化地域内においては、敷地面積が政令で定める規模(*1,000㎡以上。条例化により300㎡以上まで引き下げることが可能)以上の建築物の新築又は増築(当該緑化地域に関する都市計画が定められた際既に着手していた行為及び政令で定める範囲内の増築を除く。以下この節において同じ。)をしようとする者は、当該建築物の緑化率を、緑化地域に関する都市計画において定められた建築物の緑化率の最低限度以上としなければならない。当該新築又は増築をした建築物の維持保全をする者についても、同様とする。
2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
一 その敷地の周囲に広い緑地を有する建築物であつて、良好な都市環境の形成に支障を及ぼすおそれがないと認めて市町村長が許可したもの
二 学校その他の建築物であつて、その用途によつてやむを得ないと認めて市町村長が許可したもの三 その敷地の全部又は一部が崖地である建築物その他の建築物であつて、その敷地の状況によつてやむを得ないと認めて市町村長が許可したもの
3 (略)
4 建築物の敷地が、第1項の規定による建築物の緑化率に関する制限が異なる区域の二以上にわたる場合においては、当該建築物の緑化率は、同項の規定にかかわらず、各区域の建築物の緑化率の最低限度(建築物の緑化率に関する制限が定められていない区域にあつては、零)にその敷地の当該区域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計以上でなければならない。
緑化地域とは、敷地面積に対する緑化面積の割合の最低限度を定めるもので、都市計画で決定します。
重要事項説明の対象としては、都市緑地法第35条第1項・第2項・第4項、となります。
いずれも緑化地域に関する内容を説明するものです。
- 第1項:建築物の緑化率は都市計画で定められた最低限度以上としなさいとするもの、
- 第2項:緑化率の適用除外(市町村長の許可を受けたもの)、
- 第4項:緑化地域が内外にわたる場合
緑化地域が指定されている場合には、この規定の説明が必要です。
特に重要なのは、第1項の基本的な規定の説明です。
【補足】都市緑地法第36条:一団地認定敷地に係る第35条
都市緑地法第36条
(一の敷地とみなすことによる緑化率規制の特例)
建築基準法第86条第1項から第4項まで(これらの規定を同法第86条の2第8項において準用する場合を含む。)の規定により一の敷地とみなされる一団地又は一定の一団の土地の区域内の建築物については、当該一団地又は区域を当該建築物の一の敷地とみなして前条の規定を適用する。
一団地認定敷地を使い、一敷地内に複数の建築物を建築する場合、緑化率について一敷地として適用されます。
7 地区計画等緑化率条例
都市緑地法第39条第1項
市町村は、地区計画等の区域(地区整備計画、特定建築物地区整備計画、防災街区整備地区整備計画、歴史的風致維持向上地区整備計画又は沿道地区整備計画において建築物の緑化率の最低限度が定められている区域に限る。)内において、当該地区計画等の内容として定められた建築物の緑化率の最低限度を、条例で、建築物の新築又は増築及び当該新築又は増築をした建築物の維持保全に関する制限として定めることができる。
地区計画等緑化率条例は、地区計画を用いて、緑化率を定めるものです。
重要事項説明においては、地区計画の内容、地区整備計画の内容、地区整備計画に関して条例化された緑化率の最低限度等を説明が必要です。
8 緑地協定
緑地協定の重要事項説明については、法第50条、51条第5項、54条第4項が該当します。
大規模な開発などの場合は、協定(法第54条協定)が結ばれている場合があります。
緑地協定には、次のようなルールを定めることができ、市町村長が認可をします。
重要事項説明においては、緑地協定が締結されているかどうか確認し、該当する場合にはその内容を伝えるほか、協定締結に合意した所有者から継承した者は協定を守る必要があることを説明します。
9 まとめ
いかがですか?
都市緑地法の目的をはかるために、都市計画や協定を活用することで規制をしているのがわかると思います。
いずれも建築計画に影響が出てくる内容です。
契約後のトラブルを回避するためにも、きちんと買主さんに説明し、内容を確実に伝えておくことが必要です。
調査には、市町村の公園を担当する部署に確認しましょう。