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こんかいは建築基準法第75・76条(建築協定)についてです。
建築協定とは、住民が決めた街並みを守る取り決めです。地区計画とは法の根拠も含め異なっています。
なんとなくわかっているようで、詳しく説明しようとすると理解できていないものです。
これらを詳細に理解するには、経験と知識が必要です。
しかしながら、どのような規定があるのか概要を理解しておけば、そのような物件に巡り合ったときに気づきが生まれます。
これが重要なのです。
内容を理解しておかないと、買主からの「このような用途や大きさの建築はできるの?」との質問に正確に答えることができません。
この記事では、不動産取引における重要事項説明のうち「建築基準法第68条の9(都市計画区域及び準都市計画区域以外の区域内の建築物の敷地及び構造)」について解説しています。
不動産取引や建築設計において都市計画や建築基準法の制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。
建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。
それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。
- 1 建築基準法における重要事項説明事項とは?
- 2 建築協定の目的
- 3 建築協定の認可(手続き)について
- 4 建築協定で定められる内容について
- 5 地区計画の目的とは(参考)
- 6 建築条例と地区計画の比較
- 7 まとめ
1 建築基準法における重要事項説明事項とは?
重要事項説明では、宅建業法施行令第3条第1項第2号に掲げる内容を説明する必要があります。
宅建業法施行令第3条第1項第2号(重要事項説明:建築基準法)
二 建築基準法第39条第2項、第43条、第43条の2、第44条第1項、第45条第1項、第47条、第48条第1項から第14項まで(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第49条(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第49条の2(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第50条(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第52条第1項から第14項まで、第53条第1項から第8項まで、第53条の2第1項から第3項まで、第54条、第55条第1項から第3項まで、第56条、第56条の2、第57条の2第3項、第57条の4第1項、第57条の5、第58条、第59条第1項及び第2項、第59条の2第1項、第60条第1項及び第2項、第60条の2第1項、第2項、第3項(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)及び第6項、第60条の2の2第1項から第3項まで及び第4項(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第60条の3第1項、第2項及び第3項(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第61条、第67条第1項及び第3項から第7項まで、第68条第1項から第4項まで、第68条の2第1項及び第5項(これらの規定を同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第68条の9、第75条、第75条の2第5項、第76条の3第5項、第86条第1項から第4項まで、第86条の2第1項から第3項まで並びに第86条の8第1項及び第3項
「エッ」と思うぐらい多いですが、このうち都市計画や建築基準法に基づく指定や認可状況、条例などを調査し、該当する事項を説明することになります。
調査方法としては、都市計画課(法)や建築指導課(法)などを担当する窓口にて確認することとなります。
くれぐれも「どれが対象ですか?」などの尋ね方はやめましょう!
対象となる窓口にて確認して内容を理解し、説明が必要な事項を洗い出して整理するのが資格者の責務です。「役所がいったから。」では役割を果たしていません。
2 建築協定の目的
建築基準法第69条
市町村は、その区域の一部について、住宅地としての環境又は商店街としての利便を高度に維持増進する等建築物の利用を増進し、かつ、土地の環境を改善するために必要と認める場合においては、土地の所有者及び借地権を有する者(土地区画整理法第98条第1項(大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法第83条において準用する場合を含む。次条第3項、第74条の2第1項及び第2項並びに第75条の2第1項、第2項及び第5項において同じ。)の規定により仮換地として指定された土地にあつては、当該土地に対応する従前の土地の所有者及び借地権を有する者。以下「土地の所有者等」と総称する。)が当該土地について一定の区域を定め、その区域内における建築物の敷地、位置、構造、用途、形態、意匠又は建築設備に関する基準についての協定(以下「建築協定」という。)を締結することができる旨を、条例で、定めることができる。
建築協定は、より良い街づくりを行うために、建築基準法より厳しい内容や建築基準法が制限しない内容など、個々の地域性に見合った内容を取り決める、住民の合意による協定です。
敷地:土地の分割禁止、最低敷地面積の制限、地盤高の変更禁止、区画一戸建てなど
位置:建築物の壁面から敷地の境界や道路の境界までの距離の制限など
構造:木造に限る、耐火構造など
用途:専用住宅に限る、共同住宅の禁止、兼用住宅の制限など
形態:階数の制限、建ぺい率や容積率や高さの制限など
意匠(いしょう):色彩の制限、屋根形状の制限、看板など広告物の制限など
建築設備:屋上温水設備の禁止など
このように非常にきめ細かく制限することができ、建築協定により良好な街並みが形成されることになります。
建築協定を定めるには、関係する区域内の住民全員の合意により「建築協定の区域」「建築物に関する基準」「協定の有効期間」および「協定違反があった場合の措置」を定めた建築協定書を作成し、その代表者により特定行政庁に認可を受けることが必要です。
提出された建築協定書は、市町村による公告・縦覧(じゅうらん)・意見の聴取の手続きを経て、特定行政庁によって認可・公告がなされます。
建築協定の特徴として、運営委員会の存在があります。建築協定の及ぶ土地の範囲を協定区域といいますが、協定区内の住民によって構成される運営委員会は、協定地域内に起こる建築行為に対して審査を行うことができます。
違反者が出た場合は、運営委員会が違反工事の停止や是正措置を請求します。それでも改善されない時は、裁判所に提訴するなどの措置がとられます。
ただ、建築協定は、あくまでも私法上の行為であり、公的な強制力を持ちません。このあたりが、条例で強制力を持つ地区計画とは異なります。
建築協定の変更は、建築協定の締結と同様の手続きが必要で、土地所有者の全員の合意に基づく認可の申請と市区町村による諸手続き、特定行政庁による認可の公告が必要です。
また、建築協定を廃止するには、土地所有者等の過半数の合意による申請で、こちらも特定行政庁の認可、公告が必要になります。
建築協定は、所有者が1人(分譲地の事業会社など)の場合でも定めることができ(これを「一人協定」といいます)、土地を分譲する前に物件の付加価値として最初から指定しておくことができます。
建築協定は住民の合意により成立し、協定成立時の土地所有者だけでなく、あとから土地を買った者にも効力が及びます(これを「承継効(しょうけいこう)」といいます)。
3 建築協定の認可(手続き)について
先にも記述しましたが、建築協定は、土地の所有者等(土地の所有者、借地権者)の全員の合意を持って建築協定書を作成して、特定行政庁の認可を受けなれければなりません。
ここで重要なことは、全員の合意が必要ということです。
合意に至らない土地は、協定の範囲から外れます。
認可者は市町村ではなく、特定行政庁です。
これは、建築協定の内容を変更する場合も同じです。
なお、廃止する場合には、過半数の合意で良いとされています。
4 建築協定で定められる内容について
建築協定書には、「建築協定区域」、「建築物に関する基準」、「協定の有効期間」、「協定違反があった場合の措置」を定める必要があります。
一般的には、協定書に運営委員会についても定められています。
運営委員会は、土地の所有者等によって構成されており、協定区域内における協定に関わる行為等あった際の審査や、違反者に対する指導などを行います。
つまり、建築協定に違反があった場合は、建築基準法において指導するのではなく、建築協定を運営する運営委員会が行うのです。
5 地区計画の目的とは(参考)
(都市計画法第12条の5第1項抜粋)
地区計画は、建築物の建築形態、公共施設その他の施設の配置等からみて、一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し、開発し、及び保全するための計画とし、次の各号のいずれかに該当する土地の区域について定めるものとする。
(都市計画法第12条の5第2項第一号)
主として街区内の居住者等の利用に供される道路、公園その他の政令で定める施設及び建築物等の整備並びに土地の利用に関する計画
地区計画は、都市計画決定によるものです。
地区計画には、地区施設と地区整備計画を定める必要があります。
道路や公園、緑地、広場等の施設については、建築協定では定めません。
住民の全員合意は不要で、自治体が定めます。
5-1 地区計画の届出とは
地区計画区域内に建築等を行う場合には、自治体への届出が必要となります。ま
た、地区計画を建築基準法に基づく条例化を行っている場合には、届出は不要となり、建築確認申請の中で審査されることになります。
6 建築条例と地区計画の比較
《建築協定》
法令:建築基準法
協定・計画の決定者:住民同士で建築協定書を作成し、特定行政庁から認可を受ける。
概要:一定の区域内において建築物に関する用途や意匠、構造等に住民同士のルール
期限:建築協定書内で定める(多くは自動更新)
《地区計画》
法令:都市計画法
協定・計画の決定者:説明会等を開催し住民の理解を受けた上で、自治体が都市計画決定を行う。
概要:一定の区域内において建築物の用途等のルール及び道路や公園等の施設整備など
期限:期限なし
7 まとめ
いかがでしたか?
ただ、建築協定は、あくまでも私法上の行為であり、公的な強制力を持ちません。このあたりが、条例で強制力を持つ地区計画とは異なります。
どの自治体でも指定の可能性があるものですが、場合によっては、都市計画図をインターネットや電話で確認するだけではわかりにくい場合も多いようです。
窓口も建築基準法を担当している部局になり、都市計画部局ではわからない場合も多いです。
また、不動産業者の方や建築士の方は、取引等でこの地区に入っている場合には、忘れずに確認して、クライアントに説明できるようにしておくことが必要です。
思い込みはやめてきちんと窓口などで内容を確認することも必要です。
土地の仲介業者は購入希望者に対して、その土地がどの「用途地域」に属するかとあわせて、建築物への制限についても必ず伝える義務があります。
少しでも疑問がある場合は、事前に建築確認の部署(機関)に確認し法チェックをしておきましょう。
不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。