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不動産を売買する上で、その物件の情報を早い段階で調査しておく必要があります。
そのような日々の業務の中で使用される専門用語など理解するのは重要です。なんとなくの独自の理解で納得していませんか?
不動産の契約で「手付解除」について理解しておくことは重要です。ここでは、その内容と考え方についてわかりやすく記事にしています。
不動産の売買において土地利用の内容を説明する際には正しい根拠を正確に売主・買主に伝える必要があります。
建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。
それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。
1 不動産売買契約書の「手付解除」とは
手付解除とは、不動産売買契約における手付が解約手付であること、手付解除期日までであれば、互いに書面により通知して契約の解除ができることを定めた条項のことです。
不動産を売買する際、契約書には「手付解除」という項目があります。
(手付解除)
第15条 売主、買主は、本契約を表記手付解除期日までであれば、互いに書面により通知して、解除することができます。
2 売主が前項により本契約を解除するときは、売主は、買主に対し、手付金等受領済みの金員を無利息にて返還し、かつ手付金と同額の金員を支払わなければなりません。買主が前項により本契約を解除するときは、買主は、売主に対し、支払い済みの手付金の返還請求を放棄します。
売主、買主共に合意により定めた手付解除期日までであれば、理由を問わず手付放棄、手付倍返し(手付金を返した上で、手付金と同額の金員を支払うこと)をすることによって不動産売買契約を解除することができるというものです。
手付解除については、理由を問わずに契約解除することができることから、「無理由解除」ともいわれます。
2 手付解除期日について
手付解除は理由を問わず契約解除ができる制度であるため、いつ契約解除されるかわからないということになります。したがって、いつの時点まで手付解除が可能なのか、明確になっておく必要があります。
民法では、手付解除期日について「履行に着手するまで」としています。
(民法第557条第1項)
買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
「民法第557条第1項にいう履行の着手とは、債務の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合を指す」
と説明されています。
しかし、「履行の着手」と言う概念は、手付解除期日を定める基準としては、不明確です。
そのため、民法の手付解除期限「履行に着手するまで」に対する特約とし、「手付解除期日」を当事者の合意により明確に定めることとしています。
3 手付解除期日の定め方
手付解除期日を設定するには、契約締結日から残代金決済日までの日程などを考慮し、売主買主双方の合意により決定しなければなりませんが、標準的な手付解除期日は次の表の通りとなっています。
契約から決済までの期間 ⇒ 標準とする手付解除の期日
- 1カ月以内 残代金支払日の1週間前から10日前
- 1カ月〜3カ月 契約日から1カ月前後の日
- 4カ月〜6カ月 契約日から2〜3カ月前後の日
売買契約締結後、決済までの間に内金を支払う場合、手付解除期日を内金支払日以降に設定することは避けるべきです。
条項が民法に対する特約であるとはいえ、買主の内金の支払いは「買主が履行に着手した」ことになり、内金支払後の手付解除に関してトラブルになる可能性があります。
そんな中でも、売主と買主の意向により、内金支払日の後の期日を手付解除期日と定めるケースもあります。
その場合には、次の特約例による特約を定めるのが一般的です。
◇内金授受の後といえども手付解除ができる特約
- 売主、買主は、第3条の内金支払い後といえども、第15条に定める手付解除条項が有効であることを、互いに合意します。
- 内金授受の後、第15条により手付解除となった場合、売主は受領済みの内金を無利息にて買主に返還しなければなりません。
また、売買契約締結後、売主、買主が協議した結果、不動産売買契約で手付解除期日より後の期日に支払い予定されている内金を、①手付解除期日前に授受すること、②この内金の授受をもって、売主、買主双方とも手付解除ができなくなることで合意した場合にも、覚書の締結が必要です。
3 手付解除の手続きについて
手付解除の条項では、書面による通知によって手付解除を行うことを定めています。後日のトラブル防止を考えれば、手付解除の通知は配達証明付きの内容証明郵便で行います。
売主が手付解除するときは、手付金と手付以外買主から受け取ったお金及び手付金と同額のお金の合計金額を買主に支払わなければなりません。売主は、手付解除の通知をするとともに、この合計金額を買主が受け取ることができるようにしなければなりません。
手付解除の通知のひな形は次のとおりです。
【売主の手付解除通知①「倍返しの典型パターン(振込口座を教えてもらえている場合)】
前略 平成◯年◯月◯日付の貴殿との◯◯◯◯の売買契約(以下「本契約」という。)について、通知いたします。
さて、本契約第15条第1項には、本契約における手付解除期日(平成◯年◯月◯日)までであれば互いに書面により通知して契約を解除することができることが定められておりますので、私は、書面をもって、同条1項に基づき本契約を解除します。
また、同条2項前段には、売主から手付解除する場合には、手付金等受領済みの金員を返還し、かつそれと同額の金員を支払うものとされていますので、受領済みの金員◯◯◯円および手付金と同額の金員◯◯◯円の合計◯◯◯円を貴殿指定の銀行口座にお振り込みいたしましたので、あわせて通知いたします。
本書面をもって、手付解除の通知と◯◯◯円のお支払いの連絡といたします。
草々
平成◯年◯月◯日
買主 ◯◯◯◯ 殿
売主 ◯◯◯◯ 印
【売主の手付解除通知②「倍返しのパターンで郵便為替を送る場合」】
前略 平成◯年◯月◯日付の貴殿との◯◯◯◯の売買契約(以下「本契約」という。)について、通知いたします。
さて、本契約第15条第1項には、本契約における手付解除期日(平成◯年◯月◯日)までであれば互いに書面により通知して契約を解除することができることが定められておりますので、私は、書面をもって、同条1項に基づき本契約を解除します。
また、同条2項前段には、売主から手付解除する場合には、手付金等受領済みの金員を返還し、かつそれと同額の金員を支払うものとされていますので、受領済みの金員◯◯◯円および手付金と同額の金員◯◯◯円の合計◯◯◯円の郵便為替証書を配達証明にてお送りいたしましたので、あわせて通知いたします。
本書面をもって、手付解除の通知と◯◯◯円のお支払いの連絡といたします。
草々
平成◯年◯月◯日
買主 ◯◯◯◯ 殿
売主 ◯◯◯◯ 印
【売主の手付解除通知③「倍返しのパターンで銀行口座を教えてもらっていない場合」】
前略 平成◯年◯月◯日付の貴殿との◯◯◯◯の売買契約(以下「本契約」という。)について、通知いたします。
さて、本契約第15条第1項には、本契約における手付解除期日(平成◯年◯月◯日)までであれば互いに書面により通知して契約を解除することができることが定められておりますので、私は、書面をもって、同条1項に基づき本契約を解除します。
また、同条2項前段には、売主から手付解除する場合には、手付金等受領済みの金員を返還し、かつそれと同額の金員を支払うものとされていますので、受領済みの金員◯◯◯円および手付金と同額の金員◯◯◯円の合計◯◯◯円をお振込みいたします。貴殿の銀行口座を下記の連絡先までご通知いただきたく、よろしくお願い致します。
本書面をもって、手付解除の通知と◯◯◯円のお支払いの連絡といたします。
草々
平成◯年◯月◯日
買主 ◯◯◯◯ 殿
売主 ◯◯◯◯ 印
記
連絡先住所 ◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯ ◯丁目◯番◯号
連絡先 ◯◯◯◯株式会社 不動産部 (担当者 ◯◯◯◯)
電話番号 ◯◯−◯◯◯◯-◯◯◯◯
この場合、通知の後に銀行口座をきき、実際に振込手続きを行って、金銭を現実的に提供するまでは、手付倍返しによる契約解除の効果が発生しないことに注意が必要です。
【買主の手付解除通知】
前略 平成◯年◯月◯日付の貴殿との◯◯◯◯の売買契約(以下「本契約」という。)について、通知いたします。
さて、本契約第15条第1項には、本契約における手付解除期日(平成◯年◯月◯日)までであれば互いに書面により通知して契約を解除することができることが定められておりますので、私は、本書面をもって、同第1項に基づき本契約を解除します。
また、同条第2項により、買主から手付解除する場合には、支払い済みの手付金の返還請求を放棄するものとされていますので、私は支払い済みの手付金◯◯◯円の返還請求権を放棄いたしますので、あわせて連絡いたします。
本書面をもって、手付解除と支払い済み手付金◯◯◯円の返還請求権放棄の通知といたします。 草々
平成◯年◯月◯日
売主 ◯◯◯◯ 殿
買主 ◯◯◯◯ 印
■まとめ
いかがでしたか?
不動産契約の基礎となる「手付解除」についての説明でした。
物件の仲介を行うためには、用語の意味をきちんと理解し、売主・買主に適切に把握してもらう必要があります。
物件の売買を実施・仲介するにあたっては、宅地建物取引士として重要な要素となってきます。
調査した結果、売買の対象となるについては、十分に説明し理解のうえ、契約を行う必要があります。
少しでも疑問がある場合は、事前に十分に確認しチェックをしておきましょう。
不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。