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【重要事項説明】災害対策基本法第49条の5(指定緊急避難場所)|制度の概要と課題!?重要事項との関係、対象の地域とその理由!しっかり理解してがっちり土地利用。宅建・土地取引・投資のノウハウ!!

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災害対策基本法は、国土ならびに国民の生命や身体、財産を災害から守り、災害が発生した場合に被害の最小化および迅速な復旧を行うために、防災計画の作成、災害予防、災害復旧など災害対策の基本を定めることにより、防災行政の整備及び推進を図ることを目的に1961(昭和36)年に定められました。売買の対象となる不動産が、指定緊急避難場所に該当する場合には、重要事項説明が必要です。
 


なんとなくわかっているようで、詳しく説明しようとすると理解できていないものです。
これらを詳細に理解するには、経験と知識が必要です。
しかしながら、どのような規定があるのか概要を理解しておけば、そのような物件に巡り合ったときに気づきが生まれます。
これが重要なのです。
内容を理解しておかないと、買主からの「ここで家が建てれるの!用途や大きさの建築はできるの?」との質問に正確に答えることができません。
この記事では、不動産取引における重要事項説明のうち災害対策基本法について解説しています。
不動産取引や建築設計において都市計画や建築基準法などの制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。
建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。
それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。

 

 

 

1 その他法令に基づく重要事項説明事項とは?

 

法令としては、宅建業法第35条第1項第2号の部分となります。

宅建業法第35条(重要事項の説明等)第1項第二号(抜粋)]
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。

二 都市計画法建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要

次に政令ですが、宅建業法施行令第3条となります。次の項では、この第3条について詳しく説明します。

都市計画法建築基準法制限一覧は、こちらの記事で解説しています。

ossan358.hatenablog.com

 

■ 都市計画法建築基準法以外のその他の法令に基づく制限

施行令第3条ですが、第1項が「宅地又は建物の貸借の契約以外の契約(売買)」について、第2項が「宅地の貸借の契約」について、第3項が「建物の貸借の契約」について規定されています。
大半が対象外となりますが、この内容を覚えておくことで、少しは重要事項説明漏れを防ぐことができると考えられます。
それでは、この記事ではその他の法令に基づく制限のうち災害対策基本法について解説していきます。

 

 

 

2 災害対策基本法とは

災害対策基本法は、国土ならびに国民の生命や身体、財産を災害から守り、災害が発生した場合に被害の最小化および迅速な復旧を行うために、防災計画の作成、災害予防、災害復旧など災害対策の基本を定めることにより、防災行政の整備及び推進を図ることを目的に1961(昭和36)年に定められました。

災害対策基本法は、1959(昭和34)年に発生した伊勢湾台風による災害を契機につくられましたが、東日本大震災の経験から、2013(平成25)年に次のように改正された結果、重要事項説明が必要になりました。

①市町村長による避難行動要支援者名簿の作成
②被災市町村・被災都道府県の事務について国による応急措置の代行
③市町村長による指定緊急避難場所および指定避難所の指定

このうち、③が重要事項説明に関わる部分になります。

災害対策の一環として、市町村長は、災害の際の避難のために指定緊急避難場所を指定します。指定緊急避難場所とは、切迫した災害の危険から一時的に逃れるための場所で、災害の種類(洪水・崖崩れ、高潮、地震津波など)ごとに定めます。

指定緊急避難場所の管理者が、この指定を廃止することや、改築その他の事由により施設の現状に重要な変更を加えるときは、市町村長に届出なければなりません。なお、指定避難所とは、災害によって自宅に住めなくなった場合などに避難生活を送る場所です。

■指定緊急避難場所
津波、洪水等による危険が切迫した状況において、住民等が緊急に避難する際の避難先として位置付けるものであり、住民等の生命の安全の確保を目的としている。

■指定避難所
災害の危険性があり避難した住民等を災害の危険性がなくなるまで必要な期間滞在させ、または災害により家に戻れなくなった住民等を一時的に滞在させることを目的としている。

 

 

 

3 災害対策基本法(重要事項説明書)

災害対策基本法第49条の5は、不動産取引における重要事項説明事項(その他の法令上の制限)として調査する内容となっています。

災害対策基本法第49条の5(指定緊急避難場所に関する届出)】
指定緊急避難場所の管理者は、当該指定緊急避難場所を廃止し、又は改築その他の事由により当該指定緊急避難場所の現状に政令で定める重要な変更を加えようとするときは、内閣府令で定めるところにより市町村長に届け出なければならない。

 

『指定緊急避難場所』の管理者は、その避難場所について

    廃止
    改築
    変更(政令で定める事項)
のいずれかに該当する行為を行う場合は、市町村長に届出が必要というものです。

重要事項説明においては、取引する土地や建物が指定緊急避難場所に該当している場合は、その施設等について廃止・改築・変更を行う場合には、市町村長に届出を行わなければならないとする法律の規定を、買主に対して説明する必要があります。

 

3-1 指定緊急避難場所とは

災害対策基本法第49条の4(指定緊急避難場所の指定)】
市町村長は、防災施設の整備の状況、地形、地質その他の状況を総合的に勘案し、必要があると認めるときは、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合における円滑かつ迅速な避難のための立退きの確保を図るため、政令で定める基準に適合する施設又は場所を、洪水、津波その他の政令で定める異常な現象の種類ごとに、指定緊急避難場所として指定しなければならない。

指定緊急避難場所とは、内閣府が公表している手引きによると『居住者等が災害から命を守るために緊急的に避難施設又は場所』となるものです。避難者を受け入れて滞在させる『指定避難所(法第49条の7)』とは別施設となりますが、法律上は、両方を兼ねることができるとされています。

 

3-2 指定緊急避難場所の調査方法

国土地理院が公表しているデータを活用します。ただし、直近で市町村が変更を行なっている場合などは反映されていない可能性がありますので、その点はご注意ください。
www.gsi.go.jp

 

 

 

4 市町村への届出対象となる行為

これまでの説明のとおり、市町村への届出対象は、大きく3つの行為が対象となります。

    廃止
    改築
    変更(政令で定める事項) 


このうち、3つの変更については政令で定める事項となっています。
政令で定める事項とは次のような行為をいいます。

⑴号が、床面積の10%が増減する行為(ただし、安全区域外で、洪水・高潮・津波に関する避難場所の場合は、居住者等受入用部分の面積)の場合

⑵号アが、安全区域外で、改築又は増築により構造体力上主要な部分の変更(地震に関する避難所を除く)の場合

⑵号イが、安全区域外で、洪水・高潮・津波に関する避難場所において、居住者等受入用部分までの避難上有効な経路の変更を行う場合

⑶号が、地震に関する避難場所において、構造耐力上主要な部分の変更を行う場合
 

では次に、いつまでに届出行うことが義務化されているのかについてです。

施行規則では、次のような内容しか記載されていません。

災害対策基本法施行規則第1条の7(変更の届出)】
法第49条の5(法第49条の7第2項において準用する場合を含む。)の規定による変更の届出は、当該変更の内容を記載した届出書を提出して行うものとする。

 

 

 

■まとめ

いかがでしたか?
重要事項説明の一つである『災害対策基本法』についての説明でした。
内閣府が公表している『指定緊急避難場所の指定に関する手引き』において次のように記載されています。

内閣府令で定めるところにより」の内容については、規則第1条の7において定めているとおり、市町村長へ届出を行うに際しては、変更の内容について記載した書面である届出書によって行う必要がある。その際、具体的な様式については法令上特段定めていないが、各市町村においては、施設管理者の負担を考慮の上、必要な変更事項を適切に把握できるよう、当該届出に必要となる簡易な様式を定めておくことが望ましい。また、届出の方法についても、簡易な方法を各市町村において定めておくことを推奨する。

このため、取引する土地・建物が指定緊急避難場所に指定されている場合は、届出方法について予め市町村に確認しておく必要があります。
市町村によってはホームページに公表しているケースも考えられなくはないですが、独自の内規等がある可能性や”例えば、建築確認申請の前までに届出を行いなさい”といった一定のルールを設けていると思われますので、確認しておきましょう。

指定緊急避難場所は、市町村長により公示されるため、調査物件が該当しているかは「◯◯(市町村) 指定緊急避難場所(指定避難所)」と検索すれば調べることができます。
ただ、指定緊急避難場所は、学校や公園など面積が広く公共の施設で指定されることが多いため、一般の不動産仲介で重要事項説明の対象となるケースは稀です。
調査した結果、売買の対象となる不動産が、指定緊急避難場所に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「災害対策基本法」の項目にチェックをつけて、制限の内容を説明する必要があります。

このような物件に関しては、物件の仲介業者は購入希望者に対して、その物件がどの「用途地域」に属するかとあわせて、制限についても必ず伝える義務があります。
少しでも疑問がある場合は、事前に担当の部署に確認し法チェックをしておきましょう。
不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。