このブログは、まちづくりや都市計画、不動産の取引や投資に関して役立つ情報をつぶやくOSSAN(オッサン)のブログです。良かったらブックマークを活用いただき、業務や調べごとの時に活用してくれると励みになります。
マンションの建替え等の円滑化に関する法律(マンション建替え円滑化法)は、今後予想される老朽化マンションの建て替えをスムーズに行えるようにと2002(平成14)年に定められました。
売買の対象が特定行政庁より耐震性不足を認定されたマンションに該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、重要事項説明が必要です。
宅建業法施行令第3条に規定され、調査した結果、売買の対象なる不動産が、マンションの建替え等の円滑化に関する法律に関して指定のある区域等に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。
なんとなくわかっているようで、詳しく説明しようとすると理解できていないものです。
これらを詳細に理解するには、経験と知識が必要です。
しかしながら、どのような規定があるのか概要を理解しておけば、そのような物件に巡り合ったときに気づきが生まれます。
これが重要なのです。
内容を理解しておかないと、買主からの「ここで家が建てれるの!用途や大きさの建築はできるの?」との質問に正確に答えることができません。
この記事では、不動産取引における重要事項説明のうち「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」について解説しています
不動産取引や建築設計において都市計画や建築基準法などの制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。
建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。
それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。
1 その他法令に基づく重要事項説明事項とは?
法令としては、宅建業法第35条第1項第2号の部分となります。
[宅建業法第35条(重要事項の説明等)第1項第二号(抜粋)]
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
二 都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要
次に政令ですが、宅建業法施行令第3条となります。次の項では、この第3条について詳しく説明します。
都市計画法・建築基準法制限一覧は、こちらの記事で解説しています。
1-2 都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限
施行令第3条ですが、第1項が「宅地又は建物の貸借の契約以外の契約(売買)」について、第2項が「宅地の貸借の契約」について、第3項が「建物の貸借の契約」について規定されています。
大半が対象外となりますが、この内容を覚えておくことで、少しは重要事項説明漏れを防ぐことができると考えられます。
それでは、この記事ではその他の法令に基づく制限のうち『マンションの建替え等の円滑化に関する法律』について解説していきます。
2 マンションの建替え等の円滑化に関する法律とは
マンションの建替え等の円滑化に関する法律(マンション建替え円滑化法)は、今後予想される老朽化マンションの建て替えをスムーズに行えるようにと2002(平成14)年に定められました。
マンション建替え事業は、区分所有者の集会で建替えの決議から始まります。
建物の区分所有等に関する法律(建物区分所有法)第62条による建替え決議がなされたとき、都道府県知事の認可を得て、法人格を持つマンション建替組合を設立します。
建替組合は、建替えに賛成しない者の区分所有権を買い取ること可能で、賛成しない者も建替組合に買取りを請求できます。
建替え事業には、マンション建設に関する知識や経験、資金力を持つ民間事業者が、参加組合員として参加できます。
マンション建替組合は、総会の議決により権利変換計画を定め、権利変換を行います。それにもとづき、建替え前のマンションの区分所有権や抵当権は、新しいマンションに移行し、その登記は組合が一括して行います。
マンション建替え事業の流れは、第1種市街地開発事業とほぼ同じですね。
マンションの建替え等の円滑化に関する法律(重要事項説明書)マンションの建替えの事例は多くはありません。
一方で、様々な巨大地震発生のおそれがある中、耐震性不足の老朽化マンションの建替えが大きな課題となっています。
国土交通省の推計では、昭和56年の建築基準法施行令改正以前の耐震基準(旧耐震基準)で建設されたものが約106万戸存在し、その多くが耐震性不足と考えられます。
このような状況を踏まえ、同法の改正(平成26年12月24日施行)が行われ、具体的には
①マンションとその敷地の売却を多数決により行うことが可能になったこと、
②容積率の緩和
の2点が追加されました。
まず、耐震性不足の認定(除却の必要性にかかる認定)を受けたマンションについては、区分所有者等の5分の4以上の賛成でマンションおよびその敷地を売却することができます。これにより、なかなか進まなかった耐震性不足のマンションの建替えが、敷地ごとマンション売却して、新たにマンションを建築することができるようになりました。
さらに、令和2年の法改正(施行は公布後1年6ヶ月以内)により新たに「外壁の剥落等により危害を生ずるおそれがあるマンション」や「バリアフリー性能が確保されていないマンション」なども対象となりました。
そして、耐震性不足などにより当該マンションを除却する必要がある旨の認定(マンション建替え円滑化法第102条1項)を受けたマンションの建替えにより新たに建築されるマンションで、敷地面積が一定の規模以上を有し、市街地環境の整備や改善につながる場合、特定行政庁の許可を受けて、容積率制限を緩和することができます。
「敷地面積が一定の規模以上」とは次の面積です。
■1,000㎡
第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、田園住居地域、用途地域の指定のない地域
■500㎡
第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域
■300㎡
近隣商業地域、商業地域
「耐震性不足の認定」を受けられるかどうかはマンション管理者等からの申請に基づき、耐震性不足などの客観的基準により特定行政庁が認定します。
この耐震性不足が認定されたマンションで、マンションの建替え等の円滑化に関する法律第105条第1項に基づく容積率緩和を受けた建物をつくる場合、上記のように敷地面積の規模により制限を受けるため重要事項として説明しなければなりません。
3 重要事項説明の対象となる内容
【マンション建替法第105条第1項(容積率の特例)抜粋】
その敷地面積が政令※1で定める規模以上であるマンションのうち、要除却認定マンション※2に係るマンションの建替えにより新たに建築されるマンションで、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、その建ぺい率、容積率及び各部分の高さについて総合的な配慮がなされていることにより市街地の環境の整備改善に資すると認めて許可※3したものの容積率は、その許可の範囲内において、建築基準法第52条第1項から第9項まで又は第57条の2第6項の規定による限度を超えるものとすることができる。
マンション建替法第105条第1項が重要事項説明の対象となっています。
この第105条第1項は、法第102条第1項に基づく認定を受けたマンションの建替えにより新たに建築されるマンションについて特定行政庁の許可により容積率を緩和(一定の敷地面積の確保・市街地の環境の整備改善に資するもの)できる旨が規定されています。
通常、マンションの売買であれば、特定行政庁より容積率緩和の認定を受けたかどうかは売主が把握している事項のため、調査に難航することはないですが、仮に売主も分からない場合には、築年数の古いマンションを一度建替ている場合は留意が必要です。なお、容積率の緩和ですので、都市計画で定められた容積率を超えて建築することが認められています。
※出典:国土交通省
■まとめ
いかがでしたか?
重要事項説明の一つである『マンションの建替え等の円滑化に関する法律』についての説明でした。
調査した結果、売買の対象が特定行政庁より耐震性不足を認定されたマンションに該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。
このような物件に関しては、物件の仲介業者は購入希望者に対して、その物件がどの「用途地域」に属するかとあわせて、制限についても必ず伝える義務があります。
少しでも疑問がある場合は、事前に担当の部署に確認し法チェックをしておきましょう。
不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。