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流通業務市街地整備法の正式名称は「流通業務市街地の整備に関する法律」といい、1966(昭和41)年に制定されました。流通業務市街地は、流通業務施設(トラックターミナル・鉄道の貨物駅・卸売市場・倉庫・流通業関連の事務所や店舗や一定の工場など)が1ヵ所に集中された地区のことで、流通機能の向上と道路交通の円滑化を図るための法律です。
売買の対象となる流通業務市街地整備法によって整備された箇所に該当する場合には、重要事項説明が必要です。
宅建業法施行令第3条に規定され、調査した結果、売買の対象なる不動産が、地方拠点法に関して指定のある区域等に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。
なんとなくわかっているようで、詳しく説明しようとすると理解できていないものです。
これらを詳細に理解するには、経験と知識が必要です。
しかしながら、どのような規定があるのか概要を理解しておけば、そのような物件に巡り合ったときに気づきが生まれます。
これが重要なのです。
内容を理解しておかないと、買主からの「ここで家が建てれるの!用途や大きさの建築はできるの?」との質問に正確に答えることができません。
この記事では、不動産取引における重要事項説明のうち「流通業務市街地整備法」について解説しています
不動産取引や建築設計において都市計画や建築基準法などの制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。
建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。
それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。
1 その他法令に基づく重要事項説明事項とは?
法令としては、宅建業法第35条第1項第2号の部分となります。
[宅建業法第35条(重要事項の説明等)第1項第二号(抜粋)]
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
二 都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要
次に政令ですが、宅建業法施行令第3条となります。次の項では、この第3条について詳しく説明します。
都市計画法・建築基準法制限一覧は、こちらの記事で解説しています。
1-2 都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限
施行令第3条ですが、第1項が「宅地又は建物の貸借の契約以外の契約(売買)」について、第2項が「宅地の貸借の契約」について、第3項が「建物の貸借の契約」について規定されています。
大半が対象外となりますが、この内容を覚えておくことで、少しは重要事項説明漏れを防ぐことができると考えられます。
それでは、この記事ではその他の法令に基づく制限のうち『流通業務市街地整備法』について解説していきます。
2 流通業務市街地整備法とは
流通業務市街地整備法の正式名称は「流通業務市街地の整備に関する法律」で、1966(昭和41)年に制定されています。
流通業務市街地とは、流通業務施設(トラックターミナル・鉄道の貨物駅・卸売市場・倉庫・流通業関連の事務所や店舗や一定の工場など)が1ヵ所に集中された地区のことで、流通機能の向上と道路交通の円滑化を図るための法律になります。
都心部で流通関係のトラックやトレーラーが集まり、道路交通混雑を引き起こすような状態が続いていたため、流通業務施設を交通要衝地に適度に分散・再配置し、都市交通の確保と流通機能の向上を図るとともに、地域開発の拠点となるよう一体的に整備するというのが流通業務市街地整備法の目的です。
流通業務市街地整備法に基づいて、流通機能の向上および道路交通の円滑化を図る地区として、都市計画で流通業務地区を定めます。
流通業務地区内では、流通業務施設以外の建設や改築、用途変更は原則として禁止されます。
また、流通業務施設の敷地の造成・整備を行う事業である流通業務団地造成事業を都市計画事業として施行します。
流通業務団地の造成敷地には、一定期間内に流通業務施設を建築しなければならず、工事完了から10年間は、造成敷地または敷地上の流通業務施設に関する権利設定および移転等については、都道府県知事の承認が必要です。
3 重要事項の説明対象
流通業務市街地整備法に関する重要事項説明は、次の3つの条項が対象となります。
■法第5条第1項(流通業務地区内の規制) ※売買
流通業務地区においては、流通業務施設以外の施設を建設してはならない。なお、都道府県知事等が流通業務地区の機能を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合を除く。
■法第37条第1項(流通業務施設の建設義務)※売買
施行者から流通業務施設を建設すべき敷地を譲り受けた者(国等を除く。)は、施行者が定めた期間内に、建設計画を定めて、施行者の承認を受けた上で、流通業務施設を建設しなければならない。
■法第38条第1項(造成敷地等に関する権利の処分の制限)※売買・賃借
事業に係る工事完了公告から10年間は、造成敷地・流通業務施設又は公益的施設に関する所有権、地上権、質権、使用貸借による権利又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利の設定又は移転については、当事者が都道府県知事の承認を受けなければならない。
国が公表している『都市計画施行状況調査』によると令和3年3月31日現在で、24都市31地区が指定されています。
4 重要事項説明の方法等は
【流通業務市街地整備法第5条第1項(流通業務地区内の規制)・抜粋】
何人も、流通業務地区においては、次の各号のいずれかに該当する施設以外の施設を建設してはならず、また、施設を改築し、又はその用途を変更して次の各号のいずれかに該当する施設以外の施設としてはならない。ただし、都道府県知事等が流通業務地区の機能を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合においては、この限りでない。
一 トラックターミナル、鉄道の貨物駅その他貨物の積卸しのための施設
二 卸売市場
三 倉庫、野積場若しくは貯蔵槽(政令で定める危険物の保管の用に供するもので、政令で定めるものを除く。)又は貯木場
四 上屋又は荷さばき場
五 道路貨物運送業、貨物運送取扱業、信書送達業、倉庫業又は卸売業の用に供する事務所又は店舗
六 前号に掲げる事業以外の事業を営む者が流通業務の用に供する事務所
七 金属板、金属線又は紙の切断、木材の引割り、その他物資の流通の過程における簡易な加工の事業で政令で定めるものの用に供する工場
八 製氷又は冷凍の事業の用に供する工場
九 前各号に掲げる施設に附帯する自動車駐車場又は自動車車庫
十 自動車に直接燃料を供給するための施設、自動車修理工場又は自動車整備工場
十一 前各号に掲げるもののほか、流通業務地区の機能を害するおそれがない施設で政令で定めるもの
重要事項においては、流通業務地区の該当の有無、当該地区に該当する場合には、法第5条第1項に基づく建築制限の内容の説明が必要です。
また、法第37条第1項及び法第38条第1項に該当する場合には説明を行います。
流通業務地区内については、流通業務市街地整備法第5条第3項の規定により、建築基準法第48条(用途制限)・49条(特別用途地区)は適用されません。
そのかわり法第5条第1項による建物用途の制限が適用されます。
■まとめ
いかがでしたか?
重要事項説明の一つである『流通業務市街地整備法』についての説明でした。
流通業務地区の指定が多くはないので、当該地区での取引においては法令のほか、別途審査基準がないかどうか自治体に対して確認する必要があります。
流通業務地区に該当する取引を行うこと自体が少ないですが、該当する取引の場合には、丁寧に説明しましょう。
今後、調査した結果、もし売買の対象となる不動産が流通業務地区に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「流通業務市街地整備法」の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要しなければなりません。
このような土地に関しては、土地の仲介業者は購入希望者に対して、その土地がどの「用途地域」に属するかとあわせて、制限についても必ず伝える義務があります。
少しでも疑問がある場合は、事前に担当の部署に確認し法チェックをしておきましょう。
不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。