このブログは、まちづくりや都市計画、不動産の取引や投資に関して役立つ情報をつぶやくOSSAN(オッサン)のブログです。良かったらブックマークを活用いただき、業務や調べごとの時に活用してくれると励みになります。
大都市法とは、大都市地域における住宅および住宅地の供給の促進に関する特別措置法(大都市住宅供給法・大都市法)のことです。
宅建業法施行令第3条に規定され、調査した結果、売買の対象なる不動産が、大都市法に関して指定のある区域等に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。
なんとなくわかっているようで、詳しく説明しようとすると理解できていないものです。
これらを詳細に理解するには、経験と知識が必要です。
しかしながら、どのような規定があるのか概要を理解しておけば、そのような物件に巡り合ったときに気づきが生まれます。
これが重要なのです。
内容を理解しておかないと、買主からの「ここで家が建てれるの!用途や大きさの建築はできるの?」との質問に正確に答えることができません。
この記事では、不動産取引における重要事項説明のうち「大都市法」について解説しています。
不動産取引や建築設計において都市計画や建築基準法などの制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。
建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。
それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。
1 その他法令に基づく重要事項説明事項とは?
法令としては、宅建業法第35条第1項第2号の部分となります。
[宅建業法第35条(重要事項の説明等)第1項第二号(抜粋)]
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
二 都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要
次に政令ですが、宅建業法施行令第3条となります。次の項では、この第3条について詳しく説明します。
都市計画法・建築基準法制限一覧は、こちらの記事で解説しています。
1-2 都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限
施行令第3条ですが、第1項が「宅地又は建物の貸借の契約以外の契約(売買)」について、第2項が「宅地の貸借の契約」について、第3項が「建物の貸借の契約」について規定されています。
大半が対象外となりますが、この内容を覚えておくことで、少しは重要事項説明漏れを防ぐことができると考えられます。
それでは、この記事ではその他の法令に基づく制限のうち『大都市法』について解説していきます。
2 大都市法とは
宅建業法施行令第3条第1項第6の2
大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法第83条において準用する土地区画整理法第99条第1項及び第3項並びに第100条第2項並びに大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法第7条第1項、第26条第1項及び第67条第1項
大都市法の正式な名称は、「大都市地域における住宅および住宅地の供給の促進に関する特別措置法」です。
大都市地域における住宅および住宅地の供給の促進に関する特別措置法(大都市住宅供給法・大都市法)は、不足している大都市地域の住宅の供給を促進するために、土地区画整理促進区域及び住宅街区整備促進区域を定め、区域内における住宅地の整備と中高層住宅(マンション)の建設を定め、大量の住宅及び住宅地の供給と良好な住宅街区の整備とを図ることを目的として1975(昭和50年)に規定されました。
大都市地域とは、東京都の特別区(23区)、首都圏・近畿圏・中部圏の既成市街地およびその近郊にあたる市町村をいいます。
促進区域とは、市街地の再開発などを促進するために定められる区域のことで、次の4種類の区域を指します。
- 大都市地域における住宅および住宅地の供給の促進に関する特別措置法(大都市法)による「土地区画整理促進区域」
- 大都市地域における住宅および住宅地の供給の促進に関する特別措置法(大都市法)による「住宅街区整備促進区域」
- 都市再開発法による「市街地再開発促進区域」
- 地方拠点都市地域の整備および産業業務施設の再配置の促進に関する法律による「拠点業務市街地整備土地区画整理促進区域」
促進区域では建築を規制し、目的とする事業への移行を促す措置が規定されています。
どのような不動産が大都市法の対象となり、どのような制限を受けるのでしょうか。
3 土地区画整理促進区域
【土地区画整理促進区域内での制限行為】
(大都市住宅供給法第7条1項)
土地区画整理促進区域内において、土地の形質の変更または建築物の新築等の行為をしようとする者は、原則として、都道府県知事の許可を受けなければなりません。
大都市地域の市街化区域内において、住居系地域で大部分が非建設敷地(住宅等が建っていない土地のこと)、0.5ha以上のまとまった区域などの条件を満たす区域に定めることができるのが土地区画整理促進区域になります。
土地区画整理促進区域内の地権者は、特定土地区画整理事業(大都市地域において住宅や住宅地の供給促進を目的として行われる土地区画整理事業のこと)を行うよう努めなければなりません。また、土地区画整理促進区域の決定から2年が経過すると、市町村が主体となって特定土地区画整理事業を行うことになります。
したがって、土地区画整理促進区域内では、事業の妨げになるような土地の形質の変更や建築物の新築・改築・増築等の行為をする場合は、原則として都道府県知事等(指定都市または中核市では市長)に許可を受けなければなりません。
4 住宅街区整備促進区域
【住宅街区整備促進区域内での制限行為】
(大都市住宅供給法第26条1項)
住宅街区整備促進区域内において、土地の形質の変更または建築物の新築等の行為をしようとする者は、原則として、都道府県知事の許可を受けなければなりません。
【住宅街区整備事業における制限行為】
(大都市住宅供給法第67条1項)
住宅街区整備事業の施行の認可の公告の日後、換地処分があった旨の公告がある日までは、施行地区内において、住宅街区整備事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更や建築物の新築等の行為をしようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければなりません。
(大都市住宅供給法第83条において準用する土地区画整理法第99条1項および3項)
住宅街区整備事業に係る仮換地が指定された場合には、従前の宅地について所有権、賃借権等を有していた者は、仮換地指定の効力の発生の日から換地処分の公告の日まで、仮換地について従前の宅地に存する権利と同じ内容の使用収益権を取得する代わりに、従前の宅地に存した使用収益権を行使することができません。 また、仮換地の所有者や賃借権者等は、その仮換地指定の効力が発生の日から換地処分の公告の日まで、仮換地に存した使用収益権を行使することができません。
(大都市住宅供給法第83条において準用する土地区画整理法第100条2項)
住宅街区整備事業を施行する者が、工事の施工を円滑に行うため、換地計画において換地を取得または利用しないこととされる所有者や賃借権者等に対して、その宅地の使用収益の権能を期日を定めて停止した場合は、その所有者や賃借権者等は、その期日から換地処分の公告がある日まで使用収益することができません。
土地の高度利用と良好な住宅街区を形成するために、大都市地域の市街化区域内において、高度利用地区かつ中高層住居系地域か住居系地域、大部分が非建築敷地として一定の要件を備えた0.5ha以上の区域などの条件を満たす区域に定めることができるのが住宅街区整備促進区域です。
住宅街区整備促進区域内の地権者は、住宅街区整備事業を行うよう努めなければなりません。また、住宅街区整備促進区域の決定から2年が経過すると、市町村が主体となって住宅街区整備事業を行います。
したがって、住宅街区整備促進区域内で、事業の妨げになるような土地の形質の変更や建築物の新築・改築・増築等の行為をする場合は、原則として都道府県知事等(指定都市または中核市では市長)に許可を受けなければなりません。
また、住宅街区整備事業施行地区内では、土地の形質の変更や建築物の新築・改築・増築、移動が容易でない物件の設置・堆積にあたっては、都道府県知事等の許可を受けなければなりません。
■まとめ
いかがでしたか?
重要事項説明の一つである『大都市法』についての説明でした。
大都市において良好な住宅地を造るために、道路や公園などの公共施設の整備・改善や宅地の利用増進を主な目的とした土地区画整理促進地域に対し、住宅街区促進区域は、これに加えて共同住宅(マンション)の建設を同時に行うものです。
ただし、現在は人口減社会の影響もあり、指定されることは少なくなっています。
調査した結果、売買の対象となる不動産が土地区画整理促進区域や住宅街区整備促進区域、住宅街区整備事業施行地区に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「大都市地域における住宅および住宅地の供給の促進に関する特別措置法」の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要しなければなりません。
このような土地に関しては、土地の仲介業者は購入希望者に対して、その土地がどの「用途地域」に属するかとあわせて、制限についても必ず伝える義務があります。
少しでも疑問がある場合は、事前に担当の部署に確認し法チェックをしておきましょう。
不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。