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土地区画整理とは、碁盤の目のようにきれいな区画の街にする事業のことです。
宅建業法施行令第3条に規定され、調査した結果、売買の対象なる不動産が、土地区画整理法に関して指定のある区域等に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。
なんとなくわかっているようで、詳しく説明しようとすると理解できていないものです。
これらを詳細に理解するには、経験と知識が必要です。
しかしながら、どのような規定があるのか概要を理解しておけば、そのような物件に巡り合ったときに気づきが生まれます。
これが重要なのです。
内容を理解しておかないと、買主からの「ここで家が建てれるの!用途や大きさの建築はできるの?」との質問に正確に答えることができません。
この記事では、不動産取引における重要事項説明のうち「土地区画整理法における制限の内容」について解説しています。
不動産取引や建築設計において都市計画や建築基準法などの制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。
建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。
それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。
- 1 その他法令に基づく重要事項説明事項とは?
- 2 土地区画整理とは
- 3 事業の流れ
- 4 土地区画整理に出てくる用語
- 5 土地区画整理法における重要事項説明
- 6 区画整理事業地内の物件調査方法
- 7 保留地の売買について
- 8 仮換地中の建築の許可
- ■まとめ
1 その他法令に基づく重要事項説明事項とは?
法令としては、宅建業法第35条第1項第2号の部分となります。
[宅建業法第35条(重要事項の説明等)第1項第二号(抜粋)]
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
二 都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要
次に政令ですが、宅建業法施行令第3条となります。次の項では、この第3条について詳しく説明します。
都市計画法・建築基準法制限一覧は、こちらの記事で解説しています。
1-2 都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限
施行令第3条ですが、第1項が「宅地又は建物の貸借の契約以外の契約(売買)」について、第2項が「宅地の貸借の契約」について、第3項が「建物の貸借の契約」について規定されています。
大半が対象外となりますが、この内容を覚えておくことで、少しは重要事項説明漏れを防ぐことができると考えられます。
それでは、この記事ではその他の法令に基づく制限のうち『土地区画整理法』について解説していきます。
2 土地区画整理とは
土地区画整理事業とは、市街地の区画を整理し、道路に囲まれた区域をきれいに整備し、整然とした新たな市街地をつくる事業です。
土地区画整理を行うメリットとしては、区画も道路もきれいに整然となることで、土地の評価(地価)が上がります。
土地区画整理事業は、地権者が組合(土地区画整理組合)をつくって行う場合が多く、他にも市区町村等が主体となって行う場合もあります。
組合を設立するには、7人以上で定款および事業計画を定め、区画整理地区内の地権者それぞれの3分の2以上の同意を得て、組合設立の認可を受けます。
土地区画整理事業を実施するにあたって、地権者は原則としてお金を出さず、代わりに自分の土地の一部を提供します。
3 事業の流れ
①計画決定
土地区画整理事業を行うための、原案・方向性が決まります。
②事業決定
具体的に(着工・完成時期も含め)新しい区画や道路・公園の位置等を決定します。
土地区画整理組合施行による事業の場合は、事業決定の時期を組合の成立時期としていることが多いです。
③仮換地指定
新しく造る区画(=換地)の予定地を、工事の施工前に、仮に指定します。
それまで所有・使用していた土地を従前地(じゅうぜんち)といい、移動する先を仮換地といいます。仮換地指定が行われると、原則、従前地の使用は禁止され、仮換地を使用することとなります。
④換地処分
事業・工事が進められ、工事が完了し、区画・道路・公園等が整備されると、最後の換地処分を行います。換地処分が済むと、土地区画整理事業は終了です。
4 土地区画整理に出てくる用語
■従前地と換地
従前地は、土地区画整理事業実施前の未整理状態の土地です。換地は、従前地に代わるものとして、事業により新たにつくられる整然とした土地です。
■減歩
従前地から少しずつ提供し合い、公園や道路用地を捻出するために土地を減らすことを減歩といいます。そのため、換地の面積は、従前地の面積より少なくなります。この減少率を減歩率といいます。
■清算金
換地の面積は少なくなっても、区画が整備されて土地の形状も良くなれば地価が上がるので、原則的には従前地と換地の価値は等しくなります。しかし、実際には、従前地と換地の価値は完全に同じにはならないので、清算金を授受します。
新しい土地(換地)の評価が、従前地より上がれば清算金という名目で徴収され、逆に、従前地より評価が下がった場合は清算金が交付されます。
■仮換地
土地区画整理事業は、開始から終了までかなりの期間を要するので、その間は仮換地を指定して、それを使用することになります。通常は、仮換地がそのまま本換地となるので、仮換地上に建物を建築することができます。
■保留地
土地区画整理事業内の全部の土地を換地として割り当てずに、一部を保留地として残します。換地に割り当てることを保留するので、保留地といいます。減歩が必要なのは、道路などの公共用地が増えるだけでなく、保留地をつくるためです。
施行者は、保留地を売却することで事業費を賄い、地権者からは清算金以外のお金は取ることなく土地区画整理事業を行います。
■換地処分
区画整理事業が済んで、従前地の形はなくなって新しい換地が完成していても、登記上は従前地の状況のままです。これを新しい換地へ変えるための手続きを換地処分といいます。換地処分により、従前地に関する権利関係はそのまま換地に移ります。
5 土地区画整理法における重要事項説明
宅建業法施行令第3条第1項第六号
土地区画整理法第76条第1項、第99条第1項及び第3項、第100条第2項並びに第117条の2第1項及び第2項
重要事項説明の対象条項が定められている宅建業法施行令第3条には、土地区画整理法に関して規定されています。
土地区画整理が行われている土地(土地区画整理事業中の土地)における制限について重要事項での説明が必要となります。
《土地区画整理法における主な制限》
■法第76条第1項
土地区画整理地内において、土地区画整理事業の開始(認可公告)から換地処分(事業完了)までの間に、建築行為を行う場合には許可が必要です。
(注)建築基準法関係規定ではないため、建築確認申請時に添付の必要は無い
■法第99条第1項・第3項
仮換地の指定の効果
仮換地(事業開始から換地処分の完了前)の土地取引においては、従前地を対象にした契約となります。
■第100条第2項
使用収益の停止
■第117条の2第1項・第2項
住宅先行建設区における”住宅”の建設
住宅先行建設区が指定された場合には、指定期限(土地区画整理毎に規定)までに住宅を建設しなければなりません。
6 区画整理事業地内の物件調査方法
土地区画整理事業が進行中の土地を売買するときは、十分に注意してしましょう。
土地区画整理事業が進むにつれて、従前地の形はなくなりますが、権利がなくなるわけではないので、従前地(土地)を売買することは可能です。従前地に対して仮換地が指定されるので、仮換地の状態(面積や形状など)に着目して売買取引します。
換地処分による新たな換地の登記がなされるまでは、登記上の記載は従前地のままです。面積は減歩前の面積であり、仮換地の面積とは異なります。
つまり、換地処分が終わるまでは、登記簿の記載を頼りにできないので、仮換地指定通知や仮換地図などにより、実際に使用できる仮換地の状況を確認します。
①売主(不動産所有者)への確認事項:事業主体(組合なのか市町村等なのか)を確認し、売主が持っている資料(仮換地指定通知や仮換地図)を確認します。また、権利証などで従前地の地番を確認したり、各資料や固定資産税の納税通知書などから仮換地先の区画番号を確認します。
②法務局での謄本取得:換地処分してはじめて換地後の不動産が登記されるため、それ以前の進捗段階においては、従前地の書類を取得します。そのためC段階では、売買対象敷地と法務局で取得する敷地や敷地の面積が異なります(同位置に換地される場合もあります)。
③事業主体先への確認事項:Aの計画決定段階では、通常の調査方法と同じです。今後の進捗予定及び都市計画法第53条・第54条の制限を確認します。土地区画整理事業区域内では「地階(地下)の無い2階建てまでで、木造・鉄骨造・コンクリートブロック造などの非堅固な建物」しか建築できません。「堅固な建物」とは、鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コンクリートなどの建物のことです。
6-1 都市計画法第53条・54条
第53条 都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。
第54条 都道府県知事は、前条第1項の規定による許可の申請があった場合において、当該申請が次の各号のいずれかに該当するときにその許可をしなければならない。
3.当該建築物が次に掲げる要件に該当し、かつ、容易に移転し、又は除却することができるものであると認められること。
イ 階数が2以下で、かつ、地階を有しないこと
ロ 主要構造部(建築基準法第2条第5号に定める主要構造部をいう。)が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であること。
Bの計画決定段階やC段階では、今後の進捗予定や土地区画整理法第76条の制限、今後の建築が可能になる時期などを確認します。B段階においては、減歩により登記簿上の面積よりも換地先の敷地面積が減少することがあります。それぞれ個別の指導が出ることが多いので必ず確認が必要です。
6-2 土地区画整理法第76条
施行地区内において、本事業の施行の障害となるおそれがある次の行為を行おうとする者は、国土交通大臣が施行する土地区画整理事業にあつては国土交通大臣の、その他の者が施行する土地区画整理事業にあつては都道府県知事(市の区域内において個人施行者、組合若しくは区画整理会社が施行し、又は市が第三条第四項の規定により施行する土地区画整理事業にあつては、当該市の長。以下この条において「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。
ア 土地の形質の変更
イ 建築物・工作物の新築等
ウ 政令で定める移動の容易でない物件の設置または堆積
D段階では、実際に換地後の区画が整備されていくに従い、用途地域や道路などが決定され、仮換地先の具体的な調査が可能となります。また、清算金の金額及び時期も確認できるようになります。個人情報保護により仲介業者による調査の限界がある場合には、売主より情報提供をお願いする必要があります。
あとで清算金を払うことが多いので、売主・買主のどちらが負担するのかを明確にしておきます。
組合施行の区画整理事業地内の土地(仮換地)を、組合員から購入した者は、土地取得とともに売主(組合員)の地位を引き継ぎます。
土地区画整理事業は、保留地の販売収入で事業費を賄いますが、地価が下がったり、保留地売却の収入が不足すると、新たな保留地をつくり出すために再減歩を行ったり、組合員から賦課金(ふかきん)を徴収してカバーするしか方策がありません。賦課金は場合によっては多額になることもあり、後々のトラブルの原因となります。そのため、賦課金の有無および金額に関する調査も必要です。
7 保留地の売買について
保留地の売買の場合、換地処分が終わるまでは、保留地の登記がないことに注意が必要です。
換地処分によって表題登記および甲区に組合の名義で所有権保存登記を行います。
その後、購入者への所有権移転登記や、住宅ローンを利用している場合は抵当権設定登記を行います。
そのため、保留地を購入しても換地処分までの間は、登記ができないため対抗力を有していません。また、抵当権設定登記もできないので、特例で住宅ローンを利用します。
8 仮換地中の建築の許可
(建築行為等の制限)
第76条 次に掲げる公告があつた日後、第103条第4項の公告がある日までは、施行地区内において、土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物その他の工作物の新築、改築若しくは増築を行い、又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくは堆積を行おうとする者は、国土交通大臣が施行する土地区画整理事業にあつては国土交通大臣の、その他の者が施行する土地区画整理事業にあつては都道府県知事(市の区域内において個人施行者、組合若しくは区画整理会社が施行し、又は市が第3条第4項の規定により施行する土地区画整理事業にあつては、当該市の長。以下この条において「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。
一 個人施行者が施行する土地区画整理事業にあつては、その施行についての認可の公告又は施行地区の変更を含む事業計画の変更(以下この項において「事業計画の変更」という。)についての認可の公告
二 組合が施行する土地区画整理事業にあつては、第21条第3項の公告又は事業計画の変更についての認可の公告
三 区画整理会社が施行する土地区画整理事業にあつては、その施行についての認可の公告又は事業計画の変更についての認可の公告
四 市町村、都道府県又は国土交通大臣が第三条第四項又は第五項の規定により施行する土地区画整理事業にあつては、事業計画の決定の公告又は事業計画の変更の公告
五 機構等が第3条の2又は第3条の3の規定により施行する土地区画整理事業にあつては、施行規程及び事業計画の認可の公告又は事業計画の変更の認可の公告
土地区画整理事業の公告開始から換地(完了公告)までの間において、当該施行区域内で土地区画形質の変更や建築物の新築等を行う場合には、あらかじめ都道府県知事の許可を受けなければなりません。
- 土地区画整理事業開始の公告(事業開始)から換地(完了公告)の間における制限
- の間に建築等を行う場合には、行為に着手する前に都道府県知事(市の区域内は市長)の許可が必要
- 制限される行為は、土地の形質の変更、建築、改築、増築、移動が容易でない物件の設置、移動が容易ではない堆積
*重量が5tonをこえる物件(容易に分割され、分割された各部分の重量がそれぞれ5ton以下となるものを除く。)
法第76条許可申請は、事業が長期間にわたる土地区画整理事業について、全体工事が完了する前に、土地区画整理事業に支障となる行為を、行政側でチェックするために設けられています。
実際の運用は、整備が完了した仮換地中の土地について、許可を受ければ建築することができように定めた規定です。
重要事項説明の場合には、仮換地中に建築等の行為を行う場合には土地区画整理法第76条許可申請が必要である旨を説明します。
仮換地図や街区整備図などは地権者が保有しているはずです。
■まとめ
いかがでしたか?
重要事項説明の一つである『土地区画整理法』についての説明でした。
不動産売買において、不動産が土地区画整理法に該当した場合には、不動産の重要事項説明書の「土地区画整理法に基づく制限」の項目にチェックをつけて、それぞれの項目を記載し、制限内容を説明しなければなりません。
対象となる場合は、事業中でもあるため重要事項の必要の有無についてはほぼ明確です。
このような土地に関しては、土地の仲介業者は購入希望者に対して、その土地がどの「用途地域」に属するかとあわせて、制限についても必ず伝える義務があります。
少しでも疑問がある場合は、事前に担当の部署に確認し法チェックをしておきましょう。
不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。