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航空機騒音障害防止地区・特別地区とは、航空機の著しい騒音が及ぶこととなる地域に定められる建築物等の規制のことです。
宅建業法施行令第3条に規定されています。
宅建業法施行令第3条第五の二号
五の二 特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法第5条第1項及び第2項(これらの規定を同条第5項において準用する場合を含む。)
調査した結果、売買の対象なる不動産が、航空機騒音障害防止地区及び航空機騒音障害防止特別地区に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「特定空港周辺特別措置法」の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。
なんとなくわかっているようで、詳しく説明しようとすると理解できていないものです。
これらを詳細に理解するには、経験と知識が必要です。
しかしながら、どのような規定があるのか概要を理解しておけば、そのような物件に巡り合ったときに気づきが生まれます。
これが重要なのです。
内容を理解しておかないと、買主からの「ここで家が建てれるの!用途や大きさの建築はできるの?」との質問に正確に答えることができません。
この記事では、不動産取引における重要事項説明のうち「航空機騒音障害防止地区及び航空機騒音障害防止特別地区における制限の内容」について解説しています。
不動産取引や建築設計において都市計画や建築基準法の制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。
建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。
それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。
1 その他法令に基づく重要事項説明事項とは?
法令としては、宅建業法第35条第1項第2号の部分となります。
[宅建業法第35条(重要事項の説明等)第1項第二号(抜粋)]
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
二 都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要
次に政令ですが、宅建業法施行令第3条となります。次の項では、この第3条について詳しく説明します。
都市計画法・建築基準法制限一覧は、こちらの記事で解説しています。
1-2 都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限
施行令第3条ですが、第1項が「宅地又は建物の貸借の契約以外の契約(売買)」について、第2項が「宅地の貸借の契約」について、第3項が「建物の貸借の契約」について規定されています。
大半が対象外となりますが、この内容を覚えておくことで、少しは重要事項説明漏れを防ぐことができると考えられます。
それでは、この記事ではその他の法令に基づく制限のうち『航空機騒音障害防止地区・特別地区』について解説していきます。
2 航空機騒音障害防止地区・航空機騒音障害特別地区とは?
航空機騒音障害防止地区・航空機騒音障害特別地区は、都市計画(都道府県決定)により定められます。都市計画法第8条第16号に規定される地域地区の一つになります。
■航空機騒音障害防止地区とは、航空機の著しい騒音が及ぶこととなる地域
■航空機騒音障害防止特別地区とは、航空機騒音障害防止地区のうち航空機の特に著しい騒音が及ぶこととなる地域
令和2年3月末時点(出典:令和2年都市計画現況調査)で防止地区が7箇所、特別地区が6箇所指定されていますが、いずれも千葉県内にしていされています。
千葉県内の区域一覧は、千葉県のホームページからダウンロードすることができます。>>
3 防止地区での制限
特定空港周辺特別措置法第5条第1項・第2項(抜粋)
(航空機騒音障害防止地区及び航空機騒音障害防止特別地区内における建築の制限等)
第五条 航空機騒音障害防止地区(航空機騒音障害防止特別地区を除く。)内において次に掲げる建築物(建築基準法第二条第一号に規定する建築物をいう。以下同じ。)の建築をしようとする場合においては、当該建築物は、政令で定めるところにより、防音上有効な構造としなければならない。
一 学校教育法第1条に規定する学校
二 医療法第1条の五第2項に規定する病院
三 住宅
四 前三号に掲げる建築物に類する建築物で政令で定めるもの
*政令:施行令第6条
2 航空機騒音障害防止特別地区内においては、前項各号に掲げる建築物の建築をしてはならない。ただし、都道府県知事が、公益上やむを得ないと認め、又は航空機騒音障害防止特別地区以外の地域に建築をすることが困難若しくは著しく不適当であると認めて許可した場合は、この限りでない。
3-1 航空機騒音障害防止地区内の制限
航空機騒音障害防止地区内で一定の用途の建築物を建築する場合には防音上有効な構造としなければならないとされています。
《防止地区内で防音上有効な構造としなければならない用途》
学校、病院、診療所、助産所、乳児院、保育所、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設、児童自立支援施設、家庭的保育事業、小規模保育事業、事業所内保育事業を行う施設、救護施設、更生施設、授産施設、特別養護老人ホーム、障害者支援施設、障害福祉サービス事業、幼保連携型認定こども園、住宅
3-2 航空機騒音障害防止特別地区内の制限
航空機騒音障害防止特別地区内では、防止地区内で防音上有効な構造としなければならない用途に掲げる用途の建築物を建築してはならないとされています。
4 防音上有効な構造とは
特定空港周辺特別措置法施行令第5条第1項(防音構造)
航空機騒音障害防止地区(航空機騒音障害防止特別地区を除く。)内において法第5条第1項各号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該建築物は、次の各号に定める構造としなければならない。
一 直接外気に接する窓及び出入口(学校の教室、病院の病室、住宅の居室その他の国土交通大臣が指定する建築物の部分に設けられるものに限る。)にあつては、次に掲げる構造とすること。
イ 閉鎖した際防音上有害なすき間が生じないものであること。
ロ 窓又は出入口に設けられる戸は、ガラスの厚さ(当該戸が2重以上になつている場合は、それぞれの戸のガラスの厚さの合計)が0.5㎝以上であるガラス入りの金属製のもの又はこれと防音上同等以上の効果のあるものであること。
二 直接外気に接する排気口、給気口、排気筒及び給気筒(前号の規定により国土交通大臣が指定する建築物の部分に設けられるものに限る。)にあつては、開閉装置を設ける等防音上効果のある措置を講ずること。
航空機騒音障害防止地区内において住宅や学校、病院といった用途に供する建築物は、「防音上有効な構造」としなければなりません。この構造とは、施行令第5条第1項に規定されています。
ポイントは、外壁に接する開口部(窓、出入り口)には防音上有害な隙間が生じないようにすること。戸に設けられるガラスの厚さは5㎜以上とすること。給排気口は防音効果のある開閉装置とすることが定められています。
成田市の構造基準を参考に>>
5 まとめ
いかがでしたか?
重要事項説明の一つである『航空機騒音障害防止地区及び航空機騒音障害防止特別地区』についての説明でした。
現在は、航空機騒音障害防止地区及び航空機騒音障害防止特別地区については、成田市などの千葉県内の一部にしか指定されていません。
指定地区周辺においては、取引する土地・建物が当該区域に該当しないか確認し、該当している場合には、問い合わせの上、防音構造の詳細を確認し、重要事項にて説明を行います。
重要事項の説明対象となる地域や区域、計画や条例などは多数に渡ります。
このような土地に関しては、土地の仲介業者は購入希望者に対して、その土地がどの「用途地域」に属するかとあわせて、制限についても必ず伝える義務があります。
少しでも疑問がある場合は、事前に担当の部署に確認し法チェックをしておきましょう。
不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。