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【重要事項説明】生産緑地法第8条1項(生産緑地地区内における行為の制限)|制度の概要と課題!?重要事項との関係、対象の地域とその理由!しっかり理解してがっちり土地利用。宅建・土地取引・投資のノウハウ!!

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生産緑地とは、都市計画で定められた市街化区域内に存在しており、一定の要件を満たした農地などのことです。

宅建業法施行令第3条第1項第三号に規定されています。調査した結果、売買の対象なる不動産が、生産緑地地区に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「生産緑地法」の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。

なんとなくわかっているようで、詳しく説明しようとすると理解できていないものです。

これらを詳細に理解するには、経験と知識が必要です。

しかしながら、どのような規定があるのか概要を理解しておけば、そのような物件に巡り合ったときに気づきが生まれます。

これが重要なのです。

内容を理解しておかないと、買主からの「ここで家が建てれるの!用途や大きさの建築はできるの?」との質問に正確に答えることができません。

この記事では、不動産取引における重要事項説明のうち生産緑地地区における制限の内容」について解説しています。

不動産取引や建築設計において都市計画や建築基準法の制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。

建築士試験、重要事項説明などにおいて必須の知識となりますので、こちらの記事が参考になれば嬉しいです。

それでは、わかりやすくポイントを絞って解説します。

 

 

 

1 その他法令に基づく重要事項説明事項とは?


法令としては、宅建業法第35条第1項第2号の部分となります。

宅建業法第35条(重要事項の説明等)第1項第二号(抜粋)]

宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。

二 都市計画法建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要

 

次に政令ですが、宅建業法施行令第3条となります。次の項では、この第3条について詳しく説明します。

都市計画法建築基準法制限一覧は、こちらの記事で解説しています。

ossan358.hatenablog.com

 

1-2 都市計画法建築基準法以外のその他の法令に基づく制限

施行令第3条ですが、第1項が「宅地又は建物の貸借の契約以外の契約(売買)」について、第2項が「宅地の貸借の契約」について、第3項が「建物の貸借の契約」について規定されています。

大半が対象外となりますが、この内容を覚えておくことで、少しは重要事項説明漏れを防ぐことができると考えられます。

それでは、この記事ではその他の法令に基づく制限のうち生産緑地地区』について解説していきます。

 

 

 

2 生産緑地地区とは?

都市計画法第8条第1項)

十四 生産緑地法(昭和49年法律第68号)第3条第1項の規定による生産緑地地区

 

生産緑地地区に関する都市計画)

生産緑地法第3条 市街化区域内にある農地等で、次に掲げる条件に該当する一団のものの区域については、都市計画に生産緑地地区を定めることができる。

一 公害又は災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり、かつ、公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること。

二 500㎡以上の規模の区域であること。

2 市町村は、公園、緑地その他の公共空地の整備の状況及び土地利用の状況を勘案して必要があると認めるときは、前項第二号の規定にかかわらず、政令で定める基準に従い、条例で、区域の規模に関する条件を別に定めることができる。

三 用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められるものであること。

 

生産緑地地区とは、生産緑地法第3条に規定されているもので、市町村が定めることができる都市計画とされています。生産緑地法は、都市部で農業を継続したいという要請と緑地確保の必要性から、農地等を緑地として計画的に残すための法律です。

都市農地のうち、良好な生活環境の確保に効果があり、かつ、公共施設等(公園、緑地、学校、病院などで公益性が高い施設:都市計画施設など)の敷地として適している500㎡以上(市町村条例により300㎡以上まで引き下げが可能)の農地等を都市計画に定め、建築行為等を市町村長の許可制により規制するものです。

農地等というのは、農地以外にも、採草放牧地、林業の用に供されている森林、漁業の用に供されている池沼を含み、農林漁業に利用されている緑地全般をさします。

 生産緑地地区の指定要件

  • 良好な生活環境の確保に相当の効果があり、公共施設等の敷地に供する用地として適しているもの
  • 500㎡以上の面積
  • 林業の継続が可能な条件を備えているもの

 

農業を続けたい農家は、生産緑地地区の指定を受けることによって、長期間にわたり農地等として利用し続けることができます。

一般的に、市街化区域内の農地等は、固定資産税・都市計画税について宅地並み課税を受けますが、生産緑地はその対象とならず、農地並みの課税になるという税金上のメリットがあります。

 

生産緑地は、税法上優遇されていることから自由売買することが制限されています。農地等としての利用が義務付けられ、原則として30年間は農地等から宅地転用ができず、建物建築や宅地造成をする場合は、市町村長の許可が必要です

 

令和3年3月末時点で全国225都市に指定されており、その決定面積は12,128.8ha、地区数としては58,798箇所となっています。

 

図 生産緑地と税制の関係 出典:国土交通省

図 生産緑地指定の流れ 出典:国土交通省

 

なお、国では指定後30年経過後である2022年に指定した生産緑地の約8割(約1.1万ha)が大量に宅地として市場に供給(市町村が買い取らず、農林等希望者へのあっせんも不調に終わる場合、制限が解除)される恐れがあることから、買取申出可能時期を10年間先送りする特定生産緑地制度を創設(10年経過毎に繰り返し10年延長が可能)しています。

10年延長措置(特定生産緑地の指定)については、都市計画審議会での意見聴取が必要となるため、多くの自治体では、30年経過するまでに特定生産緑地に指定しなければならないことから、現在、鋭意手続きを進めていると思います。

 

 

 

3 地方都市における生産緑地

これまで、地方の市街化区域内農地(都市農地)の固定資産税は、宅地並み評価・農地に準じた課税(平成9年度以降の毎年の税額の上昇幅は10%以下に抑制する負担調整措置)として軽減措置がとられており、都市農業者に対して一定の配慮がされてきました。

ところが、現在、その都市農地も周辺住宅地と同水準まで増加している状況にあり、営農継続が困難になる可能性が指摘されています。

実際に営農が厳しいことから、生産緑地や田園住居地域への指定に向けた動きも地方では見られます。

営農継続が困難となった緑地が、宅地に転用されることで、市街化の拡大(人口密度の低下)を招き合理的な都市構造(コンパクトシティ)の形成を阻害すると考えられています。

なお、地方都市においても生産緑地地区の指定を受けることにより、固定資産税が大幅に減免(地方都市平均で1/50)されることになり、農地等の保全とあわせて水害への備え(グリーンインフラ機能)も有することとなることから、徐々に、生産緑地地区の指定している都市が増加しています。

 

 

 

4 不動産取引における重要事項説明の内容

不動産取引においては、生産緑地法第8条第1項が重要事項説明の対象とされています。

市町村の都市計画情報から生産緑地地区内であることが分かれば、いつ・何㎡・誰が指定を受けているのか、売主や市町村へのヒアリング等で正確に把握し、建築行為の制限について説明する義務があります。

なお、生産緑地地区内の土地取引においては、都市計画と農業、税が大きく関係してくることから、都市計画や農業振興を担当する部署や農業委員会、さらには売主の相続税納税猶予の有無などを調査した上で、売主の税負担資力なども相談に応じる必要があると思われます。

 

4-1 生産緑地地区内での建築は許可制

生産緑地法第8条第1項、第2項(生産緑地地区内における行為の制限)

生産緑地地区内においては、次に掲げる行為は、市町村長の許可を受けなければ、してはならない。ただし、公共施設等の設置若しくは管理に係る行為、当該生産緑地地区に関する都市計画が定められた際既に着手していた行為又は非常災害のため必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。

一 建築物その他の工作物の新築、改築又は増築

二 宅地の造成、土石の採取その他の土地の形質の変更

三 水面の埋立て又は干拓

 

2 市町村長は、前項各号に掲げる行為のうち、次に掲げる施設の設置又は管理に係る行為で良好な生活環境の確保を図る上で支障がないと認めるものに限り、同項の許可をすることができる。

一 次に掲げる施設で、当該生産緑地において農林漁業を営むために必要となるもの

イ 農産物、林産物又は水産物の生産又は集荷の用に供する施設

ロ 農林漁業の生産資材の貯蔵又は保管の用に供する施設

ハ 農産物等の処理又は貯蔵に必要な共同利用施設

ニ 農林漁業に従事する者の休憩施設

二 次に掲げる施設で、当該生産緑地保全に著しい支障を及ぼすおそれがなく、かつ、当該生産緑地における農林漁業の安定的な継続に資するものとして国土交通省令で定める 基準に適合するもの

イ 当該生産緑地地区及びその周辺の地域内において生産された農産物等を主たる原材料として使用する製造又は加工の用に供する施設

ロ イの農産物等又はこれを主たる原材料として製造され、若しくは加工された物品の販売の用に供する施設

ハ イの農産物等を主たる材料とする料理の提供の用に供する施設

三 前二号に掲げるもののほか、政令で定める施設

 

大原則として、生産緑地地区内での建築等については、市町村長の許可を受けなければ着手することはできません。

生産緑地制度自体が市街化区域内農地を保護するために誕生したものですので、農地以外の利用に供することを想定していません。

許可基準は第8条第2項において基準が定められています。

  • 第2項第一号が農業生産等に必要な貯蔵、保管、処理、休憩施設(床面積or建築面積の合計が90㎡以下は許可不要。法第8条第9項)など
  • 第2項第二号が農産物等の製造・加工施設や農家レストラン、直売所などの施設(①建築物の敷地面積は、生産緑地地区の面積から敷地面積を除いて500㎡以上(自治体の条例により引下げられている場合はその数値)あること。②建築物の敷地面積の合計が生産緑地地区面積の20%以下 など)
  • 第2項第三号が農作業講習施設や市民農園など

なお、仮設工作物や農道、林道の設置、農地とするための土地の形質の変更などの管理行為(第8条第9項に規定)については許可不要と定められています。

 

4-2 土地取引

生産緑地の営農義務や建築行為の制限は30年を経過しても自動的に解除されないことに注意が必要です。指定の解除を受けるには、市区町村に対し買取申出を行う必要があります。

重要事項説明時のポイントとして、生産緑地地区の概要(指定日、指定を受けた面積、指定を受けた者など)や、指定から何年経過しているか、営農者であるかどうかや営農義務期間などに配慮する必要があります。特に生産緑地地区の場合には、売主にとって不利益(税猶予分などを一括して払えない)とならないよう注意することが大切かと思います。

 

 

 

5 まとめ

いかがでしたか?

重要事項説明の一つである『生産緑地地区』についての説明でした。

生産緑地地区については、売買する不動産の隣接地(または近隣)が生産緑地に指定されている場合についても、不動産重要事項説明書の備考欄に次のような文言を入れておいた方が良いでしょう。

対象不動産の(方角)側約◯◯mに生産緑地(指定年月日・指定期間・対象地番等)があります。気象条件によっては土埃や臭気等が生じる場合があります。

該当不動産の隣接地に生産緑地(らしきもの)がある場合には、役所で次の点に気を付けて調査します。

  • 隣接地が生産緑地の指定を受けているかを役所の都市計画課で確認する(指定年月日・指定期間・対象地番も併せて確認する)
  • その場で、現時点でその生産緑地において市町村への「買取請求」が出ていないかを確認する
  • もし生産緑地が「指定解除」されている場合は、建築指導課で、現時点でなにか建築計画が出ているかを確認する

重要事項の説明対象となる地域や区域、計画や条例など多数に渡ります。

このような土地に関しては、土地の仲介業者は購入希望者に対して、その土地がどの「用途地域」に属するかとあわせて、制限についても必ず伝える義務があります。

少しでも疑問がある場合は、事前に都市計画や公園緑地の部署に確認し法チェックをしておきましょう。

不動産の取引・設計や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。

 

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