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こんかいは建築基準法第52条第8項(容積率の緩和)の概要についてです。
「容積率」については、いろんな規定があり詳細に理解するには、経験と知識が必要です。
しかしながら、どのような規定があるのか概要を理解しておけば、そのような物件に巡り合ったときに気づきが生まれます。
これが重要なのです。
内容を理解しておかないと、買主からの「このような用途や大きさの建築はできるの?」との質問に正確に答えることができません。
不動産取引において都市計画や建築基準法の制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。
それでは、「建築基準法第52条第8項における容積率の緩和」について、わかりやすくポイントを絞って解説します。
1 建築基準法における重要事項説明事項とは?
重要事項説明では、宅建業法施行令第3条第1項第2号に掲げる内容を説明する必要があります。
宅建業法施行令第3条第1項第2号(重要事項説明:建築基準法)
二 建築基準法第39条第2項、第43条、第43条の2、第44条第1項、第45条第1項、第47条、第48条第1項から第14項まで(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第49条(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第49条の2(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第50条(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第52条第1項から第14項まで、第53条第1項から第8項まで、第53条の2第1項から第3項まで、第54条、第55条第1項から第3項まで、第56条、第56条の2、第57条の2第3項、第57条の4第1項、第57条の5、第58条、第59条第1項及び第2項、第59条の2第1項、第60条第1項及び第2項、第60条の2第1項、第2項、第3項(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)及び第6項、第60条の2の2第1項から第3項まで及び第4項(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第60条の3第1項、第2項及び第3項(同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第61条、第67条第1項及び第3項から第7項まで、第68条第1項から第4項まで、第68条の2第1項及び第5項(これらの規定を同法第88条第2項において準用する場合を含む。)、第68条の9、第75条、第75条の2第5項、第76条の3第5項、第86条第1項から第4項まで、第86条の2第1項から第3項まで並びに第86条の8第1項及び第3項
「エッ」と思うぐらい多いですが、このうち都市計画や建築基準法に基づく指定や認可状況、条例などを調査し、該当する事項を説明することになります。
調査方法としては、都市計画課(法)や建築指導課(法)などを担当する窓口にて確認することとなります。
くれぐれも「どれが対象ですか?」などの尋ね方はやめましょう!
対象となる窓口にて確認して内容を理解し、説明が必要な事項を洗い出して整理するのが資格者の責務です。「役所がいったから。」では役割を果たしていません。
2 容積率とは
容積率とは、「敷地面積(土地の面積)に対する延べ床面積(各階の床面積の合計)の割合」のことです。
建ぺい率といっしょに、建物の大きさを制限するために設けられた制限です。
「防火対策」「風通し、日当たりの確保」「景観を守る」だけでなく、人口をコントロールすることで、快適な住環境を守る役割があります。
容積率によって人口をコントロールすることで、快適な街づくりを行うことが目的です。
用途地域の指定がある場合は用途地域の種類(都市計画法)ごとに、無い場合は建築条例(建築基準法)などで指定容積率として定められている場合が多いです。
容積率とは=建築物の延べ面積※1の敷地面積に対する割合
※1:建築物の各階の床面積※2の合計
※2:建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心で囲まれた部分の水平投影面積による。
(容積率の算定例)
敷地面積:300㎡
1階床面積:100㎡
2階床面積: 50㎡
容積率(%)=(100㎡+50㎡)÷300㎡*100
=50%
実際の設計では、容積率の算定に含める・含めない部分の規定があるため、設計士による計算が必要ですが、イメージとしてはこのような形で計算することができます。
この容積率は、都市計画や建築条例(用途地域の指定がない場合)にて定めてあります。
用途地域以外にも、高度利用地区や地区計画などによって、別途制限が設けられるケースなどもあります。
不動産取引で示す指定容積率については、基本的に都市計画や建築条例で定められた内容を記載します。
ほとんどの自治体では、都市計画情報を窓口やホームページに掲載しています。
それでは、今回の主題になります容積率の緩和手法について説明していきます。
3 建築基準法第52条第8項
[建築基準法第52条第8項]
その全部又は一部を住宅の用途に供する建築物(特定用途誘導地区内の建築物であつて、その一部を当該特定用途誘導地区に関する都市計画において定められた誘導すべき用途に供するものを除く。)であつて次に掲げる条件に該当するものについては、当該建築物がある地域に関する都市計画において定められた第1項第二号又は第三号に定める数値の1.5倍以下で当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計のその延べ面積に対する割合に応じて政令で定める方法により算出した数値(特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内にあつては、当該都市計画において定められた数値から当該算出した数値までの範囲内で特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て別に定めた数値)を同項第二号又は第三号に定める数値とみなして、同項及び第三項から前項までの規定を適用する。ただし、当該建築物が第3項の規定により建築物の延べ面積の算定に当たりその床面積が当該建築物の延べ面積に算入されない部分を有するときは、当該部分の床面積を含む当該建築物の容積率は、当該建築物がある地域に関する都市計画において定められた第1項第二号又は第三号に定める数値の1.5倍以下でなければならない。
一 第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域若しくは準工業地域(高層住居誘導地区及び特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域を除く。)又は商業地域(特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域を除く。)内にあること。
二 その敷地内に政令で定める規模以上の空地(道路に接して有効な部分が政令で定める規模以上であるものに限る。)を有し、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上であること。
簡単に述べると、一号(一号に該当する用途地域)と二号(敷地面積・空地規模)の条件に該当する住宅については容積率を緩和しますよというものです。
4 建築基準法第52条第8項ー緩和の概要
イメージとしては、いくつかの条件を満たせば住宅であれば全てが指定容積率の1.5倍以下まで緩和できるという内容です。
その条件は次のとおりです。
①第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域
②敷地規模が一定面積以上
③空地規模が一定面積以上(そのうち、2分の1以上は道路に接して設ける)
※1.5倍以下に関しても条件式があります。
4-1 緩和される条件①(用途地域)
まず緩和される条件として、用途地域についてです。
緩和可能な用途地域は、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域となっています。
しかし注意が必要なのは、都道府県都市計画審議会の議を経て指定される区域については、除かれている点です。
よって、自治体によっては、この建築基準法第52条第8項区域を定めています。
いわゆる緩和の条件を適用しない区域を都市計画審議会に諮り特定行政庁で定めているのです。
例えば、札幌市ですと、市内全区域が本制度を適用しない区域に指定されています。
4-2 緩和される条件②(敷地規模)第135条の16 敷地内の空地の規模等
次に敷地規模ですが、用途地域ごとに敷地面積が決まっています。
■第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、準工業地域(*特定行政庁が指定する区域を除く)の場合
敷地面積の規模:2,000㎡
条例化により指定できる範囲:500㎡以上4,000㎡未満
■近隣商業地域、商業地域(*特定行政庁が指定する区域を除く)の場合
敷地面積の規模:1,000㎡
条例化により指定できる範囲:500㎡以上2,000㎡未満
■上記に関する注意点
①上記の用途地域と指定されていない区域にわたる場合:その全部を上記の用途地域に関する規定を適用
②上記の用途地域の上下段にまたがる場合:その全部の敷地について過半の敷地の規定を適用
基本的には、開発行為の許可が必要となる規模以上(住居系用途地域の場合には、2倍)の敷地面積を用意しないとするものです。
4-3 緩和される条件③(空地規模)第135条の16 敷地内の空地の規模等
対象となる敷地規模、敷地内の有効空地規模及び道路に接して有効な部分の空地面積の敷地面積に対する割合については、政令で定められた数値を採用することとします。
空地の規模は、指定されている建蔽率の最高限度によって決まっています。
なお、空地の規模については、2分の1以上を道路に接して設けることとされていることに注意が必要です。
《計算例》
建蔽率の最高限度(K):60%
敷地面積:2,000㎡
敷地面積に対する空地の規模=1-60%+20%=60%
空地面積=2,000㎡×60%=1,200㎡
つまり1,200㎡の空地を確保し、まつ、そのうちの半分となる600㎡については道路に面する必要があります。
4-4 緩和条件③(指定容積率の1.5倍以下、かつ政令式以下)
政令で定める式とは、次のものです。
Vr=3*Vc /3ーR
Vc:指定容積率(都市計画において定められた数値)
R:延べ面積に対する住宅の占める割合
例えば、Vcが200%で、Rが0.8だとすると、Vrは273%に、300%よりも低い値になることから、このケースでは、273%が適用されることになります。
5 容積率緩和の適用の留意点
○建築基準法第52条第2項は緩和されません。前面道路の幅員によっては、容積率が緩和されない場合があります。
▶️前面道路の幅員に関する記事はこちらをご覧ください。
○道路斜線や隣地斜線制限についても緩和されません。特に住居系用途地域の場合については、斜線制限に注意が必要です。
○自治体では、建築基準法第52条第8項区域の指定(緩和を受けることができない区域)を行なっている場合が多いですので、適用にあたっては、特定行政庁の窓口やホームページでのチェックが必要です。
○住居系用途地域の場合には、日影規制に注意が必要です。建物形状・配置には十分に注意する必要があります。
6 まとめ
いかがでしたか?
建築基準法第52条第8項の緩和については、住宅の用途に限って緩和していることが特徴です。
この制度は周辺の住環境等との調和を図りながら、空地の確保を条件として、容積率の緩和を受けることが可能になっています。
住宅の建築には、容積率・建ぺい率のほかにも敷地の条件に合わせて守るべき、下記のように規模を制限する法律があります。
少しでも疑問がある場合は、事前に建築確認の部署(機関)に確認をしておきましょう。
一概にホームページのパンフレットだけでは読み解けない部分もあるため、きちんと窓口などで内容を確認し理解しておきましょう。
不動産の取引や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。