このブログは、まちづくりや都市計画、不動産の取引や投資に関して役立つ情報をつぶやくOSSAN(オッサン)のブログです。良かったらブックマークを活用いただき、業務や調べごとの時に活用してくれると励みになります。
こんかいはシリーズ第10弾!!いよいよ商業系用途地域も最後になります。
土地利用における基礎ルールでもある『用途地域』のうち『商業地域』についてです。
用途地域については、都市計画法による指定と建築基準法による建築制限が関連して運用されます。
両方の内容を理解しておかないと、買主からの「このような用途や大きさの建築はできるの?」との質問に正確に答えることができません。
不動産取引において都市計画や建築基準法の制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。
今回は、シリーズ第9弾として、都市計画法で指定される「用途地域」とその中でも『近隣商業地域』における「建築制限」についてわかりやすく解説しています。
1 建築基準法における重要事項説明事項とは?
重要事項説明では、宅建業法施行令第3条第1項第2号に掲げる内容を説明する必要があります。
条文は下記を参考に確認してください。>>
「エッ」と思うぐらい多いですが、このうち都市計画や建築基準法に基づく指定や認可状況、条例などを調査し、該当する事項を説明することになります。
調査方法としては、都市計画課(法)や建築指導課(法)などを担当する窓口にて確認することとなります。
くれぐれも「どれが対象ですか?」などの尋ね方はやめましょう!
対象となる窓口にて確認して内容を理解し、説明が必要な事項を洗い出して整理するのが資格者の責務です。「役所がいったから。」では役割を果たしていません。
2 建築物別の用途制限一覧
用途地域は、都市計画法に基づき指定(都市計画決定)されることで建築基準法第48条が適用され、建築基準法に基づき建築物の用途の制限が適用されます。
現時点で、用途地域は13種類あり、住居系、商業系、工業系の3つに大きく分類されます。
この一覧表は、概要を抜粋されているもので、全ての内容を掲載しているものではないため、詳細は確認をする必要があります。
それでは、今回はこの中で『商業地域』の建築制限について解説します。
3 商業地域とは
近隣商業地域は、都市計画法第9条第8項において、次のように規定されています。
第九条(地域地区):抜粋
10 商業地域は、主として商業その他の業務の利便を増進するため定める地域とする。
市の中心部(駅前)のような建物が密集していて、商業・業務施設など多く立地しているところで、繁華街といわれるような地域が商業地域になっています。
4 商業地域内の建築物の制限
第四十八条(用途地域等):抜粋
10 商業地域内においては、別表第二(ぬ)項に掲げる建築物は、建築してはならない。ただし、特定行政庁が商業の利便を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合においては、この限りでない。
建築基準法において、これら地域の制限については「建築してはならない建築物」として規定されています。
なお、建築基準法第48条において、特定行政庁による例外許可規定が設けられており、特定行政庁による裁量のもと建築することが可能です。
4-1 商業地域内の用途制限
[商業地域内に建築してはならない建築物]
- 準工業地域内に建築してはならない建築物(個室付浴場業に係る公衆浴場等を除く)
- 危険性や環境を悪化させるおそれがやや多い工場
- 危険性が大きいか又は著しく環境を悪化させるおそれがある工場
[建築OK工場の例]
-
危険性や環境を悪化させるおそれが少ない工場 作業場の床面積の合計が150㎡を超えないもの
- 自動車修理工場 作業場の床面積の合計が300㎡を超えないもの
特別用途地区や自治体の条例で制限されている場合ありますが、商業地域は近隣商業地域と異なり風俗営業系の建築物を建築することができます
一戸建て住宅、長屋、共同住宅、サービス付き高齢者向け住宅などは建築することが可能です。
商業系用途地域では、指定容積率が高く設定されている場合があるので、マンションなどの高度利用建築物が比較的建築しやすくなっています。
4-2 商業地域の容積率
容積率は、建築基準法第52条にて「この範囲で指定することができる」と規定されています。
容積率については市町村が定めています。
なお、商業系用途地域の場合は、全面道路によって容積率が変わりますので、個別に確認が必要です。
[商業地域の容積率の指定範囲]
○200〜1300%
4-3 商業地域の建蔽率
建蔽率についても、建築基準法第53条にて「この範囲で指定することができる」規定されています。容積率についても、市町村が定めています。
[️商業地域の建蔽率の指定範囲]
○80%
更に、建蔽率については、建蔽率の指定が80%かつ防火地域かつ耐火建築物の場合、商業系用途地域の場合ですと建蔽率の指定がなくなります。
理論上は100%も可能です。
4-4 商業用途地域の日影規制
商業地域については制限をかけることができません(建築基準法第56条の2、法別表第4)。
ただし、日影制限が設けられている地域に日影が落ちる場合には、制限の対象となるので注意が必要です。
5 まとめ
いかがでしたか?
商業系用途地域の強みは、商業・業務施設等の集積を図ることが可能となるとともに、マンションなどの高度利用建築物の立地を誘導していくことで、住商混在の地域となっている場合が多く、利便性が高い日常生活をおくることが可能です。
しかし、突然、隣地にマンションや大規模な商業施設が立地する可能性もあり、日照・通風・騒音・交通渋滞等において環境面での問題が起こる可能があります。
物件として魅力の高い商業系用途地域の不動産の取引や投資の際には、買主や施主の要望を十分に理解して、リスクを回避するためにも理解をしておく必要がありますね。