よく空港もなく明らかに対象外の自治体の窓口で「航空法はどんな規制がありますか?」と尋ねている業者さんがいますが、このような方は「大丈夫?」と不信を持ってしまいます。
少なくとも対象となる空港やエリアはすぐに調べることができるので、対象になるかどうかは扱う物件が微妙な場合以外は対象外であるとの判断ができます。
また、対象でない自治体で尋ねても「航空法?対象?」となってしまい微妙な空気が流れます。
どのような不動産が航空法の対象となり、どのような制限を受けるのでしょうか。
この記事では、不動産取引における重要事項説明のうち、「航空法」について解説していきます。
1 航空法の説明対象
売買の対象となる不動産が、航空法における進入表面・転移表面・水平表面の範囲内、延長進入表面・円錐表面・外側水平表面の範囲内に該当する場合には、重要事項説明が必要となります。
航空法(重要事項説明書)不動産の重要事項説明書の「都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限」において「航空法」という項目ですね。
【重要事項説明が必要な不動産】
- 進入表面、転移表面、水平表面の範囲
- 延長進入表面、円錐表面、外側水平表面の範囲
2 航空法とは
航空機の航行の安全および航空機の航行に起因する障害の防止を図ることを目的として航空法が1952(昭和27)年に定められました。
飛行機が安全に離着陸するために、空港周辺の空中の一定範囲内を、支障物がないように空けておくための規制で、空港の周辺は、航空法による高さ規制を受けます。
空港がある場合、原則として告示で示された進入表面、転移表面または水平表面の範囲(航空機の飛行の障害となるおそれのある範囲)の上に出る高さの建築物を設置することができません。
また、国土交通大臣が、第1種空港および政令で定める第2種空港について延長進入表面等を指定した場合は、指定された延長進入表面、円錐表面または外側水平表面の範囲(航空機の飛行の障害となるおそれのある範囲)の上に出る高さの建築物を設置してはなりません。
【進入表面、転移表面、水平表面の範囲における制限行為】
航空法第49条第1項(全ての空港)(物件の制限等)
第49条 何人も、空港について第40条(第43条第2項において準用する場合を含む。)の告示があつた後においては、その告示で示された進入表面、転移表面又は水平表面(これらの投影面が一致する部分については、これらのうち最も低い表面とする。)の上に出る高さの建造物(その告示の際現に建造中である建造物の当該建造工事に係る部分を除く。)、植物その他の物件を設置し、植栽し、又は留置してはならない。ただし、仮設物その他の国土交通省令で定める物件(進入表面又は転移表面に係るものを除く。)で空港の設置者の承認を受けて設置し又は留置するもの及び供用開始の予定期日前に除去される物件については、この限りでない。
法第49条第1項
(第55条の2第3項・自衛隊法第107条第2項での準用を含む。) 進入表面、転移表面、水平表面の上に出る高さの建造物、植物などの物件を設置・留置してはならないとする規定
(注)空港ごとに告示で指定
公共の用に供する飛行場について法40条の告示があった後においては、その告示で示された進入表面、転移表面または水平表面の上に出る高さの建造物(告示の際、現に建造中である建造物の当該建造工事に係る部分を除きます)、植物その他の物件は、原則として、設置、植栽または留置してはなりません。
【延長進入表面、円錐表面、外側水平表面の範囲における制限行為】
航空法第56条の3第1項
第56条の3 何人も、第56条第1項に規定する空港について前条第2項において準用する第40条の告示があつた後においては、その告示で示された延長進入表面、円錐表面又は外側水平表面(これらの投影面が一致する部分については、これらのうち最も低い表面とする。)の上に出る高さの建造物(その告示の際現に建造中である建造物の当該建造工事に係る部分を除く。)、植物その他の物件を設置し、植栽し、又は留置してはならない。
特定空港のみ
法第56条の3第1項
(東京・成田・中部・関西国際、釧路・函館・仙台・大阪国際・松山・福岡・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・那覇) 延長進入表面、円錐表面、外側水平表面の上に出る高さの建造物、植物などの物件を設置・留置してはならないとする規定
(注)空港ごとに告示で指定
第1種空港等について法40条の告示があった後においては、その告示で示された延長進入表面、円錐表面または外側水平表面の上に出る高さの建造物(その表示の際、現に建造中である建造物の当該建造工事に係る部分を除きます)、植物その他の物件を設置、植栽または留置してはなりません。
制限表面の概要(進入表面・転移表面・水平表面・延長進入表面・円錐表面・外側水平表面)はこちらです。
*進入表面:進入の最終段階及び離陸時における航空機の安全を確保するために必要な表面
*転移表面:進入をやり直す場合等の側面方向への飛行の安全を確保するために必要な表面
*水平表面:空港周辺での旋回飛行等低空飛行の安全を確保するために必要な表面
3 対象エリアと確認方法
進入表面や延長進入表面など航空法の制限の内容は、各空港の現地(空港管理事務所)で確認することができます。もしくは、インターネットで調べることができるケースもあります。
制限表面を詳しく調べる方法
国土交通省のホームページにおいて全国の空港における制限表面の詳細を確認することが可能です。
>>外部リンク(国土交通省):
■第1種空港
■第2種空港
釧路空港
熊本空港
大分空港
調査した結果、売買の対象となる不動産が、航空法における進入表面・転移表面・水平表面の範囲内、延長進入表面・円錐表面・外側水平表面の範囲内に該当する場合には、制限の内容を調査するとともに、不動産の重要事項説明書の「航空法」の項目にチェックをつけて、制限内容を説明する必要があります。
4 まとめ
いかがでしたか?
航空法の対象となるような物件の担当はめったに経験することはないかもしれませんが、航空法の対象となることは説明することが必要です。
特に航空法については建築できるかどうかが関係してくることから売買後のトラブル防止のため、あやしい場合は担当の窓口で根拠をしっかりと確認して、現場での確認も忘れずに行っておきましょう。