土地利用の規制の調査で用途地域などがまたがっていることはよくあります。
基本的な考え方は、イメージをもっていれば慌てることはありません。
では、このような場合の取り扱いは、どこで規定されているのでしょうか?
正解は「建築基準法」になります。
都市計画法によって、用途地域を定められていますが、個別の土地の運用の考え方は建築基準法なのです。
大きな自治体では、都市計画と建築基準の部局が分かれていることが多いです。
つまり、都市計画部局ではなく建築基準について確認できる部局に確認しなければいけないということです。
建築基準法の中で規定される地域や地区が建築物の敷地をまたがる場合、どの規定が敷地全体に適用されて、どの規定が部分的に適用されるのかは、法第91条と個別の条項を確認することが重要です。
今回の記事では、建築基準法第91条(建築物の敷地が区域、地域又は地区の内外にわたる場合の措置)をわかりやすく解説します。
1 建築基準法第91条
[建築基準法第91条]
建築物の敷地がこの法律の規定(第52条、第53条、第54条から第56条の2まで、第57条の2、第57条の3、第67条第1項及び第2項並びに別表第3の規定を除く。以下この条において同じ。)による建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する禁止又は制限を受ける区域(第22条第1項の市街地の区域を除く。以下この条において同じ。)、地域(防火地域及び準防火地域を除く。以下この条において同じ。)又は地区(高度地区を除く。以下この条において同じ。)の内外にわたる場合においては、その建築物又はその敷地の全部について敷地の過半の属する区域、地域又は地区内の建築物に関するこの法律の規定又はこの法律に基づく命令の規定を適用する。
本条は、建築物の敷地が区域、地域又は地区の内外にわたる場合には、基本的に過半主義がとられることを規定したものです。
過半主義というのは、簡単に言うと、面積の大きな方の規制に従うということです。
建築基準法には、このように複数の地域・区域にまたがる場合の扱いというのが、いろいろ出てきます。
建築物の敷地が複数の地域等にわたる場合は、基本はこの過半主義ということになりますが、例外で過半主義以外のやり方がとられている場合もあります。
次の条項を除いて過半主義が適用されることを規定しています。
※)法第53条第7項においては、建築物の敷地が防火地域の内外にわたる場合においては、敷地内の建築物の全てが耐火建築物であるときは、その敷地は、すべて防火地域内にあるものとみなして、第3項第一号、第6項第一号の規定を適用
- 法第54条(外壁の後退距離) ⇒建築物の部分
- 法第55条(建築物の高さの限度) ⇒建築物の部分
- 法第56条(道路斜線・北側斜線・隣地斜線制限) ⇒建築物の部分
- 法第56条の2(日影規制) ⇒日影の対象区域外の土地については、日影を生じさせる場合には適用(令第135条の13参照)
- 法第58条(高度地区) ⇒都市計画に定められた内容に適合させる
- 法第61条(防火地域・準防火地域) ⇒建築物が一部でも重なる場合には防火地域又は準防火地域が適用。なお、建築物が防火地域と準防火地域にわたる場合には、防火地域が適用
2 用途地域がまたがる場合
先の解説のように例外部分に用途地域はありませんので過半主義による取り扱いになります。
そのため建築物の敷地をどのような設定するかによって、用途の扱いが変わります。
建築確認申請上の敷地設定であることに注意が必要です。
しかしながら、意図的な敷地設定は、用途制限を逃れていると捉えられる可能性もありますので、敷地設定の考え方は事前に行政に相談することをおすすめします。
また、今後の増改築や他の棟への影響があることもあり得ますので、将来を見据え設定しておきましょう。
また、用途地域境を明確にするためには、行政に確認しなければなりませんので不動産売買時にはきちんと確認しましょう。
行政が図示するのが当たり前のような方もいますが、作成精度がわからない資料に図示するはずもなく、義務もありません。
必要資料を備え売買や設計する方の責任で図示して、根拠資料と一緒に説明するのが通常です。
3 敷地に市街化調整区域が含まれる場合は?
建築計画する敷地の一部に市街化調整区域が含まれる場合には、都市計画法に基づき立地基準の制限を受けるようになります。
建築計画の前段階で開発行為の許可が必要になることがほとんどです。
開発について指導する行政窓口に確認しましょう。
用途地域とおなじように市街化区域と市街化調整区域などの境を行政に確認して不動産売買や設計時には確認しておきましょう。
4 まとめ
いかがでしたか?
基本的には法第91条の法文とおりです。
不動産売買や建築計画時に確認することは当たり前の内容です。
特に用途地域については建築できるかどうかが関係してくることから売買後のトラブル防止のため、あやしい場合は行政の窓口で根拠をしっかりと確認して、現場での確認も忘れずに行っておきましょう。