空き家空き地問題って何?
国で「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されたことにより、空き家が社会問題となっています。
OSSANです。
空き家問題とは一体何なのだろう?
空家があるとどのような問題が生じるのだろう?
空き家対策特別措置法とはどのような法律なのだろう?
そこで今回は「空き家問題」にフォーカスしてお伝えいたします。
この記事を読むことでみなさんが空き家問題を理解し、空き家対策特別措置法によって不利益を受けないようにすることができるかもしれません。
総務省が調査した結果、空き家の数は日本全国で7~8軒に1軒は空き家ということになります。そして放置空き家は毎年10万戸ずつ増加しているとされます。
また、所有者不明の土地面積を合計すると、ほぼ九州の面積に匹敵するとの情報もあります。
その結果、空き家空き地がある地域に様々な問題が生じています。
■トピック
茨城県笠間市は、土地の寄付要望が増えるのを想定し、受け入れ要件をまとめた指針を作った。維持管理の負担が少ないことなどを求めている。どのような土地であれば、市が受け入れるかを明確にするのが狙い。将来のまちづくりに活用できる土地の寄付が増えることを期待している。
指針では、維持管理で市の財政負担が大きくならないよう求めた。土壌汚染の可能性があったり、のり面補強が必要だったりすると、市の費用負担が膨らむためだ。係争の恐れがないことや、土地の利用制限がないことも併せて盛り込んだ。
土地の寄付はこれまで、原則として道路や事業用地目的以外は受け入れていなかった。人口減少で今後は不要となった所有地の寄付が増える可能性があることから、受け入れ指針を作成。9月から運用を始めた。
トピックにもあるように空き家や空き地になり管理にも困るからと自治体に寄付しようとしても、必要な箇所以外は受け入れてくれません。自己責任でなんとかしなければなりませんし、周囲に迷惑がかからないようにすることも大事です。
1 空き家問題とは
空き家問題とは、適切な管理が行われていない空き家がもたらす、所有者ではなく、外部の近隣住民や地域住民に対して及ぼす影響のこと
具体には、
問題1.建物の危険(倒壊しそうな建物がある)
空き家は建物が古くなることで、建物自体の倒壊や、屋根瓦や窓ガラスの落下等により、通行人や隣地所有者に危害を加えてしまう可能性があります。管理されていない建物は劣化が早く進みます。建物自体の倒壊だけでなく、壁が剥がれて落ちたり、ブロック塀が倒れたりして通行人や車両に危険を及ぼすこともあります。
問題2.治安の悪化(不審者のねぐら・たまり場になる。放火の危険がある。)
空き家は地域の「治安の悪化」の原因にもなりかねないという問題を抱えています。
不審者が空家に出入りするようになると治安が悪化することが考えられます。また、不審者が明かりに使っていたロウソクから失火し、火災になった事件も発生しています。
問題3.ご近所トラブル(庭木や雑草が繁茂する。ゴミを投棄される。)
放置された空家の敷地は、庭木の枝が伸び放題となり、雑草が生い茂ります。その結果、蚊や蜂などの害虫が繁殖し、近隣住民に危害を与えることがあります。また、雑草の種子が近隣に飛び散り、周辺地域ではいくら草取りをしても追いつかなくなることがあります。
空き家空き地に誰かがゴミを捨てると、次々とゴミが捨てられ、異臭が発生し不衛生極まりない状況が発生することがあります。
空き家が「ご近所トラブル」の原因となることは多く、特に隣地には多大な迷惑をかける可能性があります。
問題4.景観への悪影響(景観が悪化し、近隣不動産価格が下落する。)
空き家は放置が続くとツタがびっしりと生い茂るようになり、お化け屋敷のような異様な雰囲気を周囲に放ちます。
戸建住宅地に1件だけこのような古い空き家があると、近隣の景観にかなり悪影響を及ぼします。
バラック小屋のような空き家の前を通るのが怖いと感じる人も増え、通行量も減り、さらに治安も悪くなります。 空き家は地域のイメージを損ない、「景観への悪影響」という問題を発生させます。
窓が割れたり壁に落書きされた空き家があると地域の景観が悪化し、それが原因で近隣の不動産の評価まで下落することがあります。
2 なぜ空き家は増えているの?では、どれぐらい空き家が増えているの?
第1次ベビーブームで人口が急激に増加しました。その世代は団塊世代と呼ばれ、その人たちが就職や進学で都市部へ大挙して移動したため、都市部で人口過密が起こりました。それが1960年から1970年代の高度経済成長期と重なり、マイホームブームが沸き立ち、一気に住宅が増加しました。
その後団塊の世代も高齢化し、死亡や施設への入所により、彼らのマイホームが空き家となっていったのです。
一方、団塊の世代が旅立った後の農漁村地域では、残された彼らの親世代はとうに死亡し、都会に出て生活の基盤ができた団塊の世代も田舎に帰ることはなく、誰も管理しないその生家は荒れるに任せる空き家となりました。
つまり、住宅が増えすぎたのです。
社会問題となっているのは、そんな空き家が年々増えているから。
2019年4月26日に総務省統計局から公表された「平成30年住宅・土地統計調査」を元に空き家の状況を紹介します。
空き家と空き家率の推移
結論、全国の空き家は年々増加傾向にあります。
空き家数及び空き家率の推移-全国(1958 年~2018 年)
※出典:総務省統計局「平成 30 年住宅・土地統計調査 P2」より
2018年における空き家の戸数は849万戸あり、全住宅のうち13.6%を占めています。
3 国や自治体が行っている空き家問題解決策
もちろん国も増え続ける空き家問題を放置しているわけではありません。
次のような解決策に取り組んでいます。
①空き家対策特別措置法
空き家はこのまま増え続けると社会問題となることから、平成27年5月26日に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行。
空き家特別措置法とは、危険な空き家を「特定空き家」として指定し、最終的には行政がその空き家を強制的に取り壊すことができるようになった法律。
②空き家バンク
空き家バンクとは、居住者のいない空き家を活用し、地域振興などにつなげるために市町村等の自治体が空き家を紹介する制度。
空き家を「貸したい・売りたい」と思っている方が各市町村に情報を提供し、「借りたい・買いたい」と思っている人が利用を申し込むことができます。
③低廉な空き家等の売却手数料
2018年1月1日以降より、400万円以下の低廉な空き家等の取引については、不動産会社は媒介報酬に加え、現地調査等の費用を受領することができるようになりました。
不動産会社は仲介手数料に現地調査等の費用を加えることができ、最大18万円まで受領することが可能。
仲介手数料は取引額に応じて、その上限額が以下のように決まります。
④相続空き家の3,000万円特別控除
2016年4月1日以降の相続から、相続で取得した空き家も売却しやすくなっています。
その理由は、「相続空家の3,000万円特別控除」という税金特例が設けられたため。
4 空き家対策特別措置法
平成27年5月26日 空家等対策の促進に関する特別措置法(以下「空家特措法」といいます。)が全面施行されました。
一定の要件のもと空家措置法で「特定家屋等」に指定されると、市町村長が所有者等に対し、必要な改善措置をとるように「助言または指導」「勧告」「命令」をすることができるようになりました。
市町村長は空家等の所有者等を調べるために、空家等への立ち入りや固定資産税情報を利用した調査を行うことができます。
さらに改善命令に従わない場合、市町村長は行政代執行法に基づく「代執行」を行うことができます。
なお、代執行で要した費用(例えば建物取り壊し費用)は、市町村長が所有者等の財産を差し押さえて回収することができます。
<「特定家屋等」の指定要件>
1.著しく保安上危険となるおそれがある状態
2.著しく衛生上有害となるおそれがある状態
3.著しく景観を損なっている状態
4.その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
5 空き家空き地を放置しておくとどうなるの?
現在、どんな家でも存在するとその底地の固定資産税が住宅用地特例で減税されています。
しかし、空家特措法により「特定家屋等」に指定されて「勧告」を受けると、建物が現存していてもその底地は特例から除外され、固定資産税等が更地価格まで(約6倍くらい)増額することになります。
そして市町村長は、空家措置法により空家等の所有者等(相続人も)を捜索して指導等を行います。
これからは、税金が安くなるからと放置しておいて得なことはありません。
6 空家を放置した場合のリスクは
次のような、リスクが想定されます。
1.空家等から生じた損害の賠償責任がある
2.固定資産税やマンション管理費等の負担
3.補修などの維持費用の負担
4.建物解体費用の負担
7 家を空き家空き地にしないために
空き家の原因の約7割が相続人の現地不在(遠地居住など)、約5割が相続が発生して権利関係が複雑化していることが多く、相続登記が未了の不動産が多いのです。
たとえ相続登記が済んでいなくて亡き親の名義のままであったとしても、その家は子供たち(相続人)に管理する責任があります。
空家特措法の施行により、空家等増加の予防策、減少策、利用策が講じられることになりました。
つまり法律により強制できる場合があることになったわけです。
6.まとめ
空き家問題は日本の大きな社会問題となっているため、国が色々な政策を打っています。
特定空き家の指定を受けないためにも、まずは不動産会社や土地家屋調査士などに相談してみなしょう。
7 よくある質問
①所有者不明土地問題について
Q 隣の空き家の樹木が生い茂って侵入してきましたが、隣家の所有者が分からなくて困っています。どうしたらよいでしょうか?
A その樹木の所有者を捜索し、切り取ることを求め、樹木所有者が応じないときは、樹木所有者の費用で第三者に切り取らせることを裁判所に請求します。
所有者の所在が分からない場合は、家庭裁判所で不在者財産管理人の選任をしてもらい、その管理人と話し合いをします。
空家特措法上の「特定家屋等」(上記の解説をご参考)に指定されますと、市町村長が所有者を探し指導等をしてくれる場合がありますので、市役所や町役場にもお問い合わせしてみてください。
ご自分の判断で勝手に枝の切除等はしないほうが良いですよ。
②相続財産管理人、不在者財産管理人について
Q 高齢の親が認知症のために施設に入所。住んでいた家が空き家となっていますが、どうすれば良いでしょうか?
A 空き家の管理は事実上、親の代わりに子供がすることが多いでしょう。子供たちが遠方に住んでいるなど管理が難しい場合は、家庭裁判所で後見人等を選任してもらうのが良いでしょう。
壁が剥がれ落ちて他人が負傷した等、その空き家が原因で他人に損害を与えたときは、その空き家の所有者等は損害賠償の責任を負います。
家庭裁判所で成年後見人等を選任してもらい、その後見人等に自宅を管理してもらう方法があります。