OSSAN358’s ブログ

OSSANの日々の雑記ブログです

【OSSAN’s知恵袋】不動産業者や宅建士、投資家のみなさんにわかっておいて欲しい。地域地区の『生産緑地地区』って節税とか結構使い勝手よくない!?わかりやすく説明します!

こんにちはOSSANです。

 

以前からある土地利用の手法ですが、少子高齢化が進展する中で、国が活用を推奨している『生産緑地地区』について解説します。

f:id:OSSAN358:20210927184118p:plain

自治体によりますが場合によっては、大きな節税効果がある可能性もあります。

生産緑地は、生産緑地法で定められた土地制度の一つです。

最低30年間は農地・緑地として土地を維持する制約の代わりに、税制面で大幅な優遇が受けることができます。

今回はこの生産緑地の概要や、話題について、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。

1 生産緑地とは?

 1.生産緑地制度の生まれた背景

生産緑地」とは、長期間農業を継続することを条件に、固定資産税・相続税等の税務上のメリットを受けることのできる市街化区域内の農地です。

生産緑地法が初めて制定されたのは1970年代頃。

その頃は人口の急激な増加により、都市化が急速に進み、緑地の宅地化が増えていました。

急速に市街地の緑地が減少した結果、住環境の悪化や、土地が地盤保持・保水機能を失ったことによる災害などが多発し、重大な社会問題となりました。

この問題の解決のため1972年に制定されたのが、生産緑地法です。

生産緑地法は、緑地の有する環境機能などを考慮し、農林漁業との調整を図りつつ、良好な都市環境を形成していこうという目的で制定された土地利用制度なのです。

 

 2.生産緑地の定義

生産緑地」は、生産緑地地区の区域内の土地又は森林のことです。

生産緑地法第3条第1項の規定で、具体的には以下のように決められています。

公害又は災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり、かつ、公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること。

500平方メートル以上の規模の区域であること。

用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められるものであること。

(※生産緑地法 第2条、第3条第1項より引用)

 

 

 3.全国の生産緑地

令和2年のデータでは、全国1.2万ヘクタールにも相当する広大な土地が、生産緑地に指定されています。(※国土交通省より)

そのほとんどの土地が、三大都市圏(首都圏・中部圏・近畿圏)の、特に東京都・愛知県・大阪府とその近郊の3県に全体の約8割が集中しています。

これは、生産緑地三大都市圏を中心とした市街化区域を念頭に置いた制度であることの現れです。

 

 

2 生産緑地の利益

 1.農地の区分による評価・課税の違い

f:id:OSSAN358:20210927184759p:plain

固定資産税において農地は、一般農地 市街化区域農地 に区分され、評価及び課税されます。

一般農地は、いわゆる農村部の農地を指し、生産緑地は、宅地への転用を防止し保全する目的で指定される農地を指します。

これらの農地は、食糧自給の面や環境面から、保護すべき対象として様々な制約を受ける代わりに、一般の宅地と比べ非常に安い、農地と同様の評価基準とされます。

一般市街化区域農地は、すでに市街化されているか、概ね10年以内に市街化が図られる地域を指し、従って農地ではあっても、将来の宅地化を前提とした宅地並評価がされます。

特定市街化区域農地の「特定」とは、三大都市圏(首都圏・中部圏・近畿圏)の特定の市を意味し、東京都・愛知県・大阪府とその近郊府県が該当します。

これらの地域は、すでに市街化が進んで、全般的に土地の価格が高いため、不均衡を招かないよう、農地であっても宅地並評価されています。

では、次に生産緑地の評価と課税について、詳細を見ていきましょう。

 

 2.生産緑地の固定資産税の減額

市街化区域農地のうち、「生産緑地地区の農地」については、生産緑地法により転用規制がされているため、評価及び課税に当たっては、一般農地と同様の取扱いになります。

通常、特定市街化区域農地(三大都市圏の市街化区域農地)は宅地並課税となりますが、生産緑地に指定されることで、大都市部においても固定資産税や都市計画税が一般農地並みの扱いになり、税金が少なくなります。

具体的には、

一般市街化区域農地の50~100分の1、

特定市街化区域農地の200~300分の1、

さらに宅地と比較すると数百分の1程度と、大幅に軽減されます。

生産緑地は宅地への転用を防止し、農地として保全する目的で指定され、様々な制約を受けることで、一般の宅地と比べ非常に安い、農地と同様の評価・課税がされるのです。

 

3.相続税の納税猶予

相続や遺贈により取得した生産緑地を、引き続き農業のために使用する場合、一定の要件の下に、相続税の一定額の納税猶予を申請することができます。

相続税については、通常の評価額 と 農業投資価格 の差額に対する税額の納税が猶予されます。

 

 (計算式)

 通常の評価額 ー 農業投資価格 = 納税猶予額

 

「農業投資価格」とは、

課税するときの財産を評価する基準である「財産評価基準」の一つであり、農業にしか使用することが出来ないとした場合に成立する価格のことで、半永久的な営農を条件に、公示されます。

これにより、生産緑地の評価は、通常の宅地評価額の数十~数百分の1程度の水準となり、多額の相続税の猶予が受けられるのです。

ただし、この猶予はあくまで猶予であって免除ではなく、また非課税でもありません

さらに納税猶予が打ち切られる場合もあり、注意が必要です。

この点については、次項で!

 

 4.相続税の納税猶予の免除と打ち切り

相続税の納税が猶予された税額は、以下の場合には免除となります。

  1. 農業相続人の死亡
  2. 後継者への生前一括贈与
  3. 市街化区域内農地で、20年以上営農を継続した場合

(※農林水産省「農地を相続した場合の課税の特例」資料より引用)

ただし、三大都市圏の特定市の生産緑地にいては、

営農条件が20年間ではなく終身となるので注意が必要です。

また、以下のような場合には、納税猶予が打ち切られることもあります。

  1. 農地を譲渡したり、貸したり、転用した場合
  2. 3年ごとの「継続届出書」を提出しなかった場合
  3. 納税猶予を受けた相続税が免除になる前に、相続人が農業経営を廃止した場合納税猶予が打ち切られた場合

1~2に該当する場合は、納税猶予は免除されず、相続時までさかのぼって課税されます。

これは「さかのぼり課税」といい、猶予されていた本来の相続税と、猶予期間に応じた利子税を合わせて納付しなければならず、多額の税金が課せられることになります。

その他、生産緑地の指定解除によっても、納税猶予は打ち切りになります。

この際、納税猶予された相続税が免除されるのは「営農相続人の死亡」のみで、「30年経過時」や「農業従事ができなくなる故障」で、自動的に納税猶予が免除される訳ではないので注意が必要です。

 

 5.贈与税の納税猶予

贈与税についても相続税と同じく一定の要件の下に、一定額の納税猶予を申請することができます

3年以上農業を営んでいる人が、生前に農業を引き継ぐ相続人(推定相続人)に農地等を一括して贈与し、その農地等を農業の用に供する場合、贈与者死亡の日まで贈与税の納税が猶予されます。

贈与税の納税猶予を受けるためには、農地を贈与する際に農地の様々な権利について定める農地法第3条の許可が必要です。

また、贈与者、受贈者ともに、要件を満たさなければ適用を受けられないので、農地の贈与前には農業委員会に相談する必要があります。

贈与税の納税猶予の適用要件は以下の通りです。

f:id:OSSAN358:20210927185408p:plain

なお、納税猶予を受けた贈与税額は、贈与者が死亡した場合、又は贈与者よりも先に受贈者が死亡した場合、免除されます。

 

3 生産緑地の義務

生産緑地について使用又は収益をする権利を有する者は、以下のことを守る必要があります。

生産緑地を、農地等として管理しなければならない(生産緑地法第7条)

生産緑地である旨を掲示しなければならない(生産緑地法第6条)

生産緑地地区において、建築物その他工作物の造成、土地に手を加える行為は原則としてできない。ただし、農林漁業を営むために必要となる施設又は、農林漁業の安定的な継続に資する施設に限り、市町村長の許可を得て設置・管理することができる(生産緑地法第8条)

このような制限により、生産緑地の指定申請をした所有者は、基本的に自らが農業を継続することになります。

生産緑地に指定されると税制の面で大幅に優遇される一方、多くの制約が課されることになるのです。

 

4 生産緑地の指定解除

生産緑地には税制上の優遇がある反面、制約も多く、維持するためには相応の労力がかかるため、中には指定を解除したいと考える方も少なくありません。

しかし、生産緑地の指定解除は条件が厳しく、様々な問題やデメリットが生じることがあります。

 

生産緑地指定解除の要件は以下の通りです。

  1. 農林漁業の主たる従事者が死亡等の理由により、従事することができなくなった場合
  2. 生産緑地として告示された日から30年が経過した場合

 

死亡や病気その他で農業の継続が困難になったにことによる指定解除の場合、生産緑地の納税猶予額は免除になりますが、30年経過して指定解除する場合は納税猶予額は免除されません。

また、一般的には生産緑地の指定が解除されると、土地にかかる行為制限も解除されるため、自由な土地活用が可能となりますが、中には市町村等に買い取られてしまいます。

なぜなら、指定解除ができるということは、正しくは「市町村長に対して買取りを申し出ることができる」ということだからです。

上記の1・2の場合、生産緑地の指定解除のため、市町村長に当該農地の買取りを申し出ることができます。(生産緑地法第10条)

買取りの申し出があった場合、市町村長は時価で買い取らなければならないと規定していますが(生産緑地法第11条)、この買取りは義務ではないので、特別な事情があれば市町村長はその買取りをしない旨の通知をすることもできます。

ちなみに全国でも買取された事例はないようです。

 

ただし、“市町村長は買取りの申し出がなされた生産緑地について、買い取らない旨の通知をしたときには、当該生産緑地において農林漁業に従事することを希望する者が取得できるようにあっせんすることに努めなければならない”(生産緑地法第13条)と定められています。(※国土交通省 公園とみどり「生産緑地制度」より引用)

 

さらに、買取りの申し出から3か月以内に当該生産緑地の所有権の移転が行われなかったときは、行為の制限が解除されます。(生産緑地法第14条)

 

つまり、買取りの申し出をしたが市町村長も買わない、その他の農家等からも買い手がつかないとなった時にようやく、土地を自由に利用することができるようになるのです。

 

 

5 生産緑地の課題点

これまで説明したように、生産緑地制度の問題点として、制約の多さによる困難があるといわれています。

生産緑地法による

「農地として管理する義務」

「様々な行為の制限」

「指定解除の困難」

納税猶予による「譲渡制限」「さかのぼり課税問題」などです。

反面、税額の減免などのメリットも決して小さくはありません。

 

産緑地以外の市街化区域内農地は1992年度の30,638ヘクタールから2013年度の12,916ヘクタールまでほぼ一貫して減り続け、20年ほどの期間をかけて約6割減少してきた経緯などがあります。

f:id:OSSAN358:20210927185940p:plain

 

これは、もともと都市における「市街化区域」は市街化を推し進めることが原則であり、本来の目的だった「宅地化」が進んだ結果であると言えますが、半減するまでに約15年かかっていることからも、「生産緑地」の場合も今後、10年20年といった期間をかけて少しずつ問題が大きくなっていくのではないかとの予想もされているのです。

 

2015年に制定された「都市農業振興基本法」では、都市農業を重要な産業として位置付け、都市にあるべきものとして計画的に保全を図ろうとする姿勢を表明しています。

また、国土交通省は「市民農園等整備事業」で生産緑地の買取を積極的に後押ししており、2016年度には「生産緑地法」を改正し、面積要件を緩和してすべての生産緑地に対応できるようにしたり、設置可能施設についても農作物の加工・販売施設やレストランを可能としたり、10年間の買取申し出延長の制度を設けたりと、生産緑地の減少を食い止める対策が進められています

ただ、根本的に生産緑地の存続が危機にさらされている原因は、営農者の高齢化と後継者の不足によるところも大きく、生産緑地に対する要件の緩和など制度面のバックアップを活かして、具体的な成果を出す知恵が求められています。

 

6 まとめ

  • 生産緑地」の指定を受けると、農地として管理する義務、様々な行為の制限、譲渡制限など、数多くの制約がある。
  • 固定資産税の減額、一定の要件の下での相続税の納税猶予が可能。
  • 指定解除の条件が厳しく、生産緑地の処分に悩むケースが非常に多い。
  • 都市農業は他の土地活用に比べて収益性が低い。

と以上のような感じですが市街化区域内の農地をお持ちで、相続の関係で当面は営農を続けないければならない方、接道がなく宅地化できない方、趣味の営農を頑張りながら産直販売で小遣いを稼ぎたい方 などにとっては、十分に利活用できる制度です。

一度、お住まいの自治体に確認されても損はありません。