OSANNです。
久しぶりの投稿ですが、8月の季節外れの大雨。
水災害の知識を自分なりに整理しました。
少しでもみなさんの役にたてば幸いです。
日本は国土面積の約35%が何らかの自然災害リスクを抱える地域であり、その中に日本の総人口の約74%が居住しています。
近年、頻発・激甚化している水災害。いつ自分が被災してもおかしくないのです。
被災後は頭がまっしろになって、なにから手を付けたらいいかわからなくなってしまいます。
特にいま被災した方、もしもの事態に遭ってしまったときに、この記事を活用してくれたらとても嬉しい。
内容は、令和3年8月豪雨で特に被害の大きかった、福岡県久留米市の住民のイメージで作成してみた。
◆とにかくまず被災写真を撮る
被害にあった場合、まずはとにかく写真を撮る。撮りまくる!
可能なら水深が一番あるときの室内の写真も欲しいところだ。
また、床下浸水であったとしても写真をとっておこう。床下浸水でも中規模半壊に認定されて保障がもらえる可能性はあるし、家の補修(消毒作業)は必要。
- 建物の全景を撮る
- 浸水した深さを撮る(メジャーがあると良い)
- 被害場所を撮る
写真を撮るポイントはウェザーニュースのサイトがわかりやすい。
これもわかりやすい
この写真が、これから申請するあらゆる支援金や保険の生命線になります。
この客観的な情報で罹災証明書の内容が決まるからです。
罹災証明というのは災害被害にあったこと、その被害の程度を証明する書類で、保険適用するとき、支援金の受給対象かどうか、支援金の額、税金の免除、会社に特別休暇を申請するとき、ありとあらゆる後処理にこの書類が関わってきます。
被災するとひどい有様になり一刻も早く掃除したいところですが、やけにならず、落ち着いて、写真を撮ってほしいものです。
■写真撮影後の各種作業(リスト)
- 電気・ガス・水道のチェック
- 泥(ヘドロ)の掻き出し
- だめになった車を回収してもらい、代車を手配する
- ダメになった家財道具を運び出してゴミ捨て場に持っていく
- 大工さんに相談して修理に入ってもらう
- 市町村の受付が始まったら罹災証明書を申請する
- 各種保険を申請する
これらがすべてうまくいけば、1階床上浸水でも大体1カ月程度で元の生活に戻ることができます。ただ自治体の機動力や、個人の情報収集能力の差がでてくるのも事実です。
自治体の被災者支援も必ずチェックします。
久留米市の支援(令和3年8月豪雨)
https://www.city.kurume.fukuoka.jp/1050kurashi/2040bousaianzen/3405r3saigai/files/sien20210820-2.pdf
それでも、完全に生活再建するには数か月は必要です。
全壊の場合は元の家には戻れなく、仮設住宅に住んでいる人がたくさんいるのも現実です。
■電気・ガス・水道のチェック
洪水中に避難所に行っていて、片付けのために帰宅した人向け。
ガス漏れしていないか、ブレーカーは落ちているかを確認する。
火花が散っているとか、ガスの臭いがするとかあれば、近づかずに最寄りの消防署とか役所とかに相談。
断水状況も確認。
水と電気が使えると片付け作業が楽になるので、つながっていたら天に感謝したいところ。
■泥(ヘドロ)の掻き出し
増水して家が沈んでいく速度に比べて水が引いていく速度は遅いです。
増水していくときは、家が河川に飲まれていく感じなので流れも早いが、水が引いていくときは次第に流れがゆるやかになり徐々に水かさが減っていく。
すると押し流されてきた漂流物や泥が様々な場所に堆積していく。
室内ももちろん例外ではありません。
めちゃくちゃ粒子の細かい泥がヘドロになって室内にも積もる可能性があります。
最大の敵が泥。
臭い。とにかく臭い。これを吸うと病気になりそう。
実際洪水の後は感染症のリスクが高まる。
サンダルで作業して落ちているガラスを踏みケガして破傷風や、土埃と一緒にレジオネラ菌を吸引して肺炎になるリスクが。
当然、素手で作業するなんかもってのほかです。
可能なら片付けを本格的に始める前に、衛生面で気を付けるべきポイントをまとめているサイトを一読して欲しい。
日本環境感染学会の記事
https://www.city.kurume.fukuoka.jp/1050kurashi/2040bousaianzen/3405r3saigai/files/sien20210820-2.pdf
厚労省の記事
https://www.city.kurume.fukuoka.jp/1050kurashi/2040bousaianzen/3405r3saigai/files/sien20210820-2.pdf
話は戻るが、流れてきたそのへんの板でいいのでとにかく泥を屋内から掻き出す。ある程度掻き出せたら、ホースまたはバケツリレーで水を流す。
個人で無理をせず、ボランティアに作業をお願いすることもできます。
高圧洗浄機があると非常にはかどる。これがあるとないとでは天と地ほどの差がある。思い切って購入するか、借りてなんとしてでも確保したいものです。
掻き出したら消毒。自治体では床下消毒をしてくれる自治体も多いです。
自治体が消毒をしてくれるまでは、気安めにアルコールスプレーを利用するのもおすすめ。なければハイターを薄めたものでも代用可。
どれだけ水を流しても壁紙や床にこびりついているので、家の補修をするまで根本的な解決はありません。
なお当然ながら庭や道路、屋外にもヘドロが堆積。洪水が起こる時期は大抵夏なので、晴れるとそのヘドロは一気に乾燥する。そして風に巻き上げられる。外にでるときはメガネやマスクを推奨します。
この掻き出した泥だが、そのまま捨てることはできません。いったん敷地周辺に集積。被災後数週間後には、自治体の手筈が整い回収にきてくれるようになるはず。
■車の回収と代車の確保
床上浸水した家では車も浸水してしまいます。エンジンもかからないので動かすこともできません。室内のゴミと化した畳や家財道具を運ぶにあたり非常に邪魔なので早めに対応をします。
販売店や保険会社に連絡がついて、車の回収と代車を早めにできるとよいですが、考えることは皆同じです。早いもの勝ちになるし、なにより通信が確保できない。
そんなときはJAFに連絡するという手段が。事前にアプリをDLしておけばすればアプリから呼べます。JAFは水害で動かなくなった車も対応していて、代車の手配こそできないが、回収には来てくれます。
車が回収される前に、免許証・めがね・保証書系・ETCカードの置き忘れがないかチェックしましょう。
■家財道具の運び出し
浸水にあった家財道具は基本すべて災害ゴミとして対応できます。丁寧に消毒して使い続けることもできるものもありますが、タンスや机などの木製のものや、畳などはどうしようもありません。
捨てるものは全部いったん室内から出し仮置き。自治体が被災ゴミ捨て場を用意してくれるので、捨てに行きます。
このとき、謎のゴミ収集屋や業者が出現し、親切な言葉をかけてきますがまず詐欺か悪徳業者です。あとで高額請求をふっかけられる恐れがあるので行政のゴミ捨て場に運ぶのが確実です。
ここでもボランティアにお願いすると楽になります。
■家の補修(大工の手配、最低でも見積)
床上浸水した場合は、浸水した箇所はすべていったん撤去します。床はもちろん壁も。いったん家の柱のみの状態にしてしっかり乾燥させる必要があります。
洪水によって持ち込まれた大量の雑菌がすでに家じゅうに浸透しており、カビだらけになるからです。面倒なことはしたくないし、家は壊したくないかもしれませんが、その家にこの先も長く住むつもりなら、これを避けては通れません。
アルコールやハイターで表面を拭いた程度ではカビが繁殖します。すごい速度で!!ちょっと雨が降って湿度があがると一日と経たずに室内に腐海が形成。
もし大工さんが確保できるなら、それがベスト。大工さんと併せてシロアリ対応業者も手配できると最高。壁と床をぶちぬいて専用の熱風おくる器具で一気に完全乾燥させるので1日で乾燥が完了します。
大工さんいない場合は、自分たちでやる必要がある。壁と床をぶち抜いて、柱用の消毒剤を塗ったり、地面用の消毒剤を撒きます。
自然乾燥の場合、DIY店員曰く、可能なら2カ月くらいは乾燥させたいところらしい。
ここで湿ったまま進むと、カビはもちろんシロアリの格好の餌にもなる。あくまでも自己責任で。
ここでもボランティアが活躍します。
大工さん数は限られているので、すぐ確保するのは現実問題として厳しいことも。見積はとったものの2-3カ月たっても来てくれないから結局自前でやったという人も結構多いです。
自前でやることに決めた場合でも、見積だけはお願いしましょう。
大工さんの見積があれば、自治体によるが見積分のお金を自治体が負担してくれるケースがあるからだ。
■罹災証明書の取得と支援制度
罹災証明書の取得は自治体によって違いますが大体こんな感じです。
被害状況の申し出をする
自治体の担当者が家を訪ねてきて実際の被害状況を確認する
被害状況が判定されその内容が記載された紙(罹災証明書)が渡される。
罹災証明書の記事
http://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/pdf/risaisyoumeisyo_gaiyou.pdf
行政から支給されるメインの支援金は、「被災者生活再建支援制度」になります。
全壊・大規模半壊・中規模半壊など被害の程度によって額がきまります。
基礎支援金と加算支援金の2段構えになっているが、合計すると全壊なら150-300万、大規模半壊なら100-250万、中規模半壊なら25-100万支援があります。
当然これだけでは全然たりません。
大規模半壊と中規模半壊の差が非常に大きい。大規模半壊以上じゃないと保険の対象にならない、等。床上浸水なら大抵の場合大規模半壊がとれるはずなので、しっかり写真をとって、大規模半壊の判定をもらいたいところです。
工事不要のため一般住宅やマンション、店舗、かかりつけ病院など場所を選ばない
被災者生活再建支援制度の記事
http://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/pdf/risaisyoumeisyo_gaiyou.pdf
全国からのあたたかい支援により、自治体に集まった寄付金を住民に分配してくれる場合もあります。このときの分配額も罹災証明書の被害状況に応じて判断されるのです。
ただしく罹災証明書を発行してもらえるよう、繰り返しになるが被害後の写真はしっかり撮っておきましょう。
■使える保険は全部使え
申請できるものはすべて申請する。もらえるお金は1円でも多くもらいましょう。これは鉄則。
火災保険(住宅と家財)
古い持ち家の場合、火災保険に入っていないこともあると思う。もしくは期限が切れたまま放置してしまっているとか。
ハザードマップなどを確認してもう一度検討してほしい。保険料は必要だが被災したときに受け取れるお金は1円でも多いほうがいい。
多くの場合、火災保険に水災も含まれています。
家財保険もセットでついていたりする。
ただし、保障しない場合もあるため、確認しておくのが鉄則。
水害と保険の記事
http://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/pdf/risaisyoumeisyo_gaiyou.pdf
車の保険
任意保険とか共済とかなにかしら入っているはずです。書類を準備して申請します。
店舗の保険
自営業で店舗をもっている場合、店舗に対しても保険がかかっている可能性が。水災も保障対象になっているか、どこまで保障対象になっているか(建物も含むか、商材のみか、など)も確認しておきましょう。
そのほか、自営業用とか特定の業種向けとかいろいろ自治体によって支援金がでる可能性があるので、情報はしっかり収集する必要があります。
個人の情報収集能力がとわれます。
■避難所に行くかどうかの判断
もし洪水を自宅避難で乗り切っていた場合、1階の被害状況によっては避難所に行くことを進めます。
浸水によりエアコンの室外機が故障するので、エアコンがつかえません。
浄水場が浸水した場合、きれいな水は出ないし地域によっては断水します。
ガスもつかない。1階に台所や風呂、トイレなどの水回りがある場合、床上浸水後は使えない。防犯上、侵入者の可能性もある。食料がないかもしれない。
熱中症のリスクや衛生面の問題、安全性、食料確保の観点から、貴重品をもちこんで避難所で寝泊まりするのは良い選択になります。
避難所には、無料インターネットが解放され、自衛隊が避難所に風呂を設置してくれます。場合によっては、コインランドリー車も来てくれます。
また、食料については支給があるため心配の必要はないし、衣服についても支援いただいたものをいただける。
加えて、避難所にいると自治体の支援情報がすぐ入ってくる。
マスコミは、災害から1週間もたてば全く取り上げてくれなくなるので、自治体の情報は自分でなんとかして取りに行かなければいけない。その点避難所は掲示板などで支援情報がまとまっているので便利です。
そして家の片付け・補修が終わるまでは、昼間は家に帰って泥の処理、夜は避難所で休む、という生活がしばらく続きます。
被災された方々には、お見舞い申し上げます。
水災害は、暑い時期に起きるものです。くれぐれも健康に気を付けてください。
時には、ボランティアや近隣の方に甘えるのも必要ですよ。